第32話 水島信也、にゃんこにいいように使われている気がするパート4。以上。
「はいはい、みんなちゃんと前を見てね」
この異世界には子猫がこんなにいたのか…
水島信也が真面目猫〈チャー〉とやってきたのは猫の小学校。人間の小学校だったところを、そのまま猫がのっとったという感じらしい。
しかし…。どこの子供も落ち着きがないのは同じだなあ。
子猫はちょっと目を離すと隣りの猫をたたいてみたり、消しゴムをとばしてみたり。ちっとも静かにしていない。
猫の女先生はそれでもおおらかに子猫たちをまとめていた。
子猫たちが勉強していたのはパソコン操作だった。思った以上に猫の世界はIT化されていた。
「みんな、いい?ネットでキャットフードを買うことができないと、みんな死んじゃうのよ。生死がかかってるだからね」
先生はずいぶんと恐ろしいことを子供相手に言っていた。どうやら、パソコンでキャットフードを購入する方法を学んでいるようだった。
猫がパソコンなんてねえ…、せいぜいアプリで魚が泳いでいるの見て猫パンチするぐらいだろうと思っていたら、なんと猫たちは小さな肉球で器用にパソコンを入力していた。
すごい…。俺負けちゃいそう。
教室の隅で見学をしていたら、おしゃまなメス猫が俺のことを見て声をかけてきた。
「この世界ではキャットフードは作ってないから、ネットで購入しないとエサは手に入らないのよ。いろんな味があるから自分の好きなやつを選んで買うの」
「へ、へえ、なんだかすごいね。でも、生死にかかわるって、先生も大げさだよね。魚とかネズミとか食べればいいんじゃないかな?」
すると、その子はキッとこちらをにらんで「野蛮人!」って言った。
こ、こわ!何これ?
俺がおたおたしていると、真面目猫〈チャー〉が横から解説をしてくれた。
「最近の若い子猫たちはみんなキャットフードを食べているんですよ。キャットフードは総合栄養食なのでバランスがいいんです。年取った猫は魚中心の食生活というのも多いですけどね」
そうなんだ。猫も世代によってずいぶん違うんだ。
「ネズミちゃんは学校で飼育しているの。みんなのかわいいペットなのに食べるなんてありえない」女の子は真面目猫〈チャー〉の話を聞いてあとを続けた。
ネズミを飼育?なんだそりゃ?
すると先生が僕たちの会話を聞いていたのか、間から入ってきた。
「今はネズミも少なくなって、子供たちの中にはネズミを見たことがない子もいるんです。だから、ネズミを飼育しているんですよ。子供たちはみんなネズミに名前を付けてかわいがっているんですよ」
えええ!そんなことがあるなんて。猫がエサを飼うなんて…。え、でも、人間もそうか?魚を飼ったり鳥を飼ったりするものなあ。牛や豚を飼う人もいるし。ああ、そういうこと。え、そういうこと?
俺はかなり混乱していた。ただ、いまどきの猫はそういうことらしい。
そして、いまどきなことは給食の時間にもあった。
給食当番が給食を運んでくる風景はおなじみの風景だったんだけれど、さっきの女の子がみんなとは違う列に並び、女先生から直接給食をもらっていた。
「わー、順番ぬかししてるんだ」
俺はさっきの仕返しにそんなふうに揶揄したら、その子はまたキッと僕をにらんだ。
「子供」
わー、冷ややか。冷ややかですから。俺傷ついちゃうよ。
「これはアレルギー除去食。そんなのも知らないの?」
はい、知りませんでした。すみませんでした。
どうやら猫の世界にもアレルギー児童が問題となっているらしい。先生も大変だなあ。
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