第12話 津倉佐々美、にゃんこのカフェに行ってもいいかな?


婦人会での議題はふるさと納税だった。

なんと、この異世界では、島の財政を安定させるためにふるさと納税に参加しているらしい。そして、お礼の品もちゃんと納付者に返しているらしい。


知らなかった。すごいわ。猫をあなどっていたわ。


だが、今まではどうやら家電製品をお礼の品にしていたらしいのだが、今年から規制が厳しくなったそうで、今後何を返礼品にするかということが議題となっていた。


会の最中、婦人会の猫たちは意見を交わすのにニャーゴニャーゴと白熱していたようではあったけれど、多くの猫たちは世間話ばかりしていて、あまり会に参加しているって感じじゃなかった。女ってやつはどこの世界も似たようなものなのかもね。


結局、婦人会だけでは結論が出せないので、また次回に持ち越しということになり、会議は終わった。


うーん、勉強になった。こういうことを異世界ではしていたんだね。


そのあと、子沢山ママ猫〈ミカン〉は急いで帰ったんだけれど、津倉佐々美はデブ猫の妻〈エクレア〉とお友達の美少女猫〈クウ〉とお茶をして帰ることになった。


異世界にもカフェがあるんだな。びっくり。


もちろん、カフェは奥さんのおごりで。だってわたしお金ないし、そんなの知らない。

猫におごられるわたしってサイテー。


猫のカフェはレトロな雰囲気の純喫茶というようなところだった。もともと家の人がカフェをしていて、それをそこの飼い猫が引き継いだらしい。


ダンディーないで立ちのエプロンをしたマスターの猫が注文を取りに来た。

津倉佐々美はアメリカン、デブ猫の妻〈エクレア〉はカフェオレ、美少女猫〈クウ〉はミルクティーを注文した。


「やっぱり猫はミルク系が好みなのよね」

デブ猫の妻〈エクレア〉は何も聞いてないのに言い訳をした。


オンナっていうのは言い訳好きだからね。


ほどなくドリンクが運ばれてきた。わーい。


「ぬる!」


津倉佐々美はアメリカンに口を付けるなり、思わずそう叫んだ。

ぬるい。


すると美少女猫〈クウ〉が「猫はみんな猫舌だから。仕方がないわよ」といった。


確かに。


美少女猫〈クウ〉は夢みる少女のようなキジ猫なんだけれど、ちょっと変わっていた。


ミルクティーが運ばれてくると、ポーチから何かを取り出してミルクティーにパラパラとかけはじめた。


なんだ?


津倉佐々美がよほどガン見していたせいか、美少女猫〈クウ〉はちょっと引いていた。いや、かなり引いていた。すみません。


もしや、またたびではあるまいか?


「それ、またたび?」

津倉佐々美が聞くと美少女猫〈クウ〉は、ああ、という顔をして、「これ、かつおぶしパックよ。私、なんにでもかつおぶしをかけないと食べられなくて」

そういって、恥ずかしそうにほほえんだ。


ミルクティーにかつおぶし…。あわなそう。


美少女猫〈クウ〉はかつおぶしミルクティーを優雅に飲んだ。


どうやら、美少女猫〈クウ〉はなんでもかつおぶしをかけないとだめらしい。それもヤマブシ印のかつおぶしとメーカーまで決まっているそうで。ちょっとしたかつおぶし中毒者?


そして、ミルクティーを飲み終わると毛づくろいを始めた。

あまりに真剣に毛づくろいをするので、よく見たら一部はげている気もした。


この人潔癖症かもなあ。だけど、さすがに婦人の前ではげてるとはいえないよなあ。


きれいな猫なのに、なんだかかわいそう。


みんなはどうでもいい話をして帰った。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る