第12話 In the Air Tonight
「起きてる? 想子」
夜眠ってると、ベッドの下の段からお姉ちゃんの声が聞こえてきた。
「なあに創子、いま起きたよ」
わたしは返事をする。
「なんか、寒くない?」
そうそう、わたしもいまそう思って、寒さで目を覚ましたところだった。夏も真っ盛り。寝苦しい熱帯夜がここ数日は続いて、わたしもお姉ちゃんもほとんど裸にタオル一枚だけお腹にかけて寝てたところだったのに、この寒さはどうだろう。身体の芯から冷えきるこのかんじ。冬みたい。
「想子、ちょっと下に降りてきてよ。一緒の布団に入ろうよ」
お姉ちゃんが言うがはやいか、わたしは震える身体に力をいれて急いで梯子をくだり、お姉ちゃんが潜る布団へ飛び込んだ。
「さっむ~!」
わたしとお姉ちゃんはかたく抱き合って同時に悲鳴をあげる。ふたりとも揃ってシャツ一枚しか着てなかった。肌を合わせるとわかるくらい、お姉ちゃんの鳥肌がびんびんに立ってる。きっとお姉ちゃんにもわたしの鳥肌が伝わってるだろう。
「ちょっと想子、もっと身体よせてよ、布団のなかに風が入ってきて寒いよ」
「よせてるよせてる。もうこれ以上よせらんないよ」
「うう……さむっ。つーか想子、体温低くない?」
「創子だって低いよ。てか姉妹だから、体温ほとんど一緒なんじゃないの」
「血のつながりが悲しいなあ。これじゃひとりでいるみたいだ……うう」
「でもふたりとも胸がちいさくて凹凸ないから、ちょうど身体が密着していいよ」
「うわ、悲しいこと言うなよ」
身体を合わせてふざけあってるうちにだんだんあったかくなって、いつの間にかわたしもお姉ちゃんも眠ってしまってた。
朝になっても、その異常な寒さは変わんなかった。江泊は温泉と暖流の関係で一年を通じて温暖らしく、お姉ちゃんは冬用の服をもってなかった。しかたなくあるだけのシャツやらスカートやらパンティやらを何重にも着て、あまったズボンを首のまわりに巻いてマフラー代わりにして、わたしたちは外へ出た。
「なにこれ、ははは」
あんまり物事に動じないお姉ちゃんが珍しく歓声をあげ、笑った。いつもの乾いた笑いじゃない、もっと心から楽しそうな笑い声。たしかに笑っちゃうくらい、笑うしかないくらい、目の前にある景色はおかしかった。
海が白いんだ。白いというか、つまり、凍っちゃってるんだ。
「すごい、あたし、こんな凍った海はじめて見た」
お姉ちゃんが桟橋から飛び降りようとしたので、わたしは慌てて止めた。
「ちょ、創子。だめだって、割れて海に落ちちゃうって」
「えっ、この凍ってるやつ割れんの? 割れるとどうなるの?」
「氷が薄いと割れるよ。割れると、そのした海になってて、落ちちゃうよ。すごく冷たくて、死ぬよ」
「あははは、死ぬ! 海で死ぬ! おかしい!」
「おかしくない! ていうか創子の笑うところがおかしい!」
わたしたちが騒いでると、ほかの女性も桟橋のうえに姿を見せ、口々に戸惑いの声を漏らした。凍った海を見るのはみんな初めてなんだろう。若い子のなかには、お姉ちゃんみたいにはしゃいでる人もいた。なんにんか、おそるおそる桟橋を支える柱をつたって氷のうえに降りた。氷を何度か踏みつけ、ジャンプをして、どうやら割れないらしいことを知ると、それに続いて他の子たちもつぎつぎ氷のうえに降りていった。
「あ、ほら、氷の上歩けるじゃん!」
お姉ちゃんはわたしの身体を跳ね飛ばし、奇声をあげながら氷のうえに飛び降りた。思ったよりずっと厚いらしい氷はお姉ちゃんの身体を受け止めてくれたけれど、勢いあまり滑って尻もちをついてしまった。
「あはははは、いったーい、ケツが四つに割れた!」
お姉ちゃんは氷のうえに座り込んだまま、大きな声で笑った。危なっかしいなあ。
わたしもお姉ちゃんを追って氷のうえに降りた。うわ、けっこう滑る。札幌にいたときのスケート教室を思い出すな。あれももう十年近く前だけど。
見渡すかぎり氷が広がってて、とてもきれいだった。どこまでも歩いていけそうな気がして、どこまでいっても世界はここしかない気がして、わたしはうれしかった。なんか、いろんなことを忘れた気がする。ここにはわたしとお姉ちゃんしかいない。それだけで成立する世界が、うれしかった。
ほんとうなら、朝も早くからわたしたちはコンビニ船を動かさないといけない。でもこんなに凍った海で船が出せるはずもないし、まわりのひとたちも風俗とか仕事はどうでもいいって感じだったので、わたしとお姉ちゃんは思うぞんぶん遊ぶことにした。どっちが速く滑れるか競争して、アイスダンスの真似っこして、氷を投げてぶつけあって、食べてみたりもして。ほんとうにくだらないことしかしてなかった気がするけど、時間が経つのはあっという間だった。こんなに笑うお姉ちゃんを初めて見たから、そのこともすごくうれしかった。
温泉区はちゃんと湯がわいてて氷が溶けてたので、夜はふたりで温泉にはいった。どこまでも広がる銀色の世界を見ながら湯につかると、昼間に遊びたおした疲れも手伝って、なんだかしんみりした。話すことがないとき、わたしたちは唇を合わせる。話すことがないと、恥ずかしくなるから。照れくささをごまかすため、お互いの言葉を唇で封じ、好きという気持ちを身体に閉じ込めておく。
夜、「寒いから」と理由をつけて、わたしたちは同じ布団で寝た。
「起きてる? 想子」
夜眠ってると、となりからお姉ちゃんの声が聞こえてきた。
「なあに創子、いま起きたよ」
わたしは返事をする。
「なんか、うるさくない?」
そうそう、そーなんだよ。わたしもいまそう思って、目を覚ましたところだった。外からすごい轟音が聞こえる。低くうなるような風の音と、キイキイ軋む木の音。はげしく打ち寄せる波の音、って、この船もめっちゃ揺れてんじゃん。
「やばくない? 想子、ちょっと外見てきてよ」
お姉ちゃんが言うがはやいか、わたしは眠気のまだ残る身体に力をいれてベッドから飛び降り、外を覗いてみた。
「うわ……やっば」
外は大嵐が吹き荒れてた。猛烈な風にあおられた雨が地面をつよく叩きつけ、雷鳴が何度も轟いて黒い海を金色に輝かせる。
「創子、こわいよう」
わたしは布団に戻るなり、お姉ちゃんに抱きついた。お姉ちゃんの汗ばんだ肌がわたしに付着する。昨日みたいな、冷たい肌も好きだったけど、やっぱりこっちのほうが、なんか、えろい。お姉ちゃんがわたしの頭を片手で抱きかかえ、撫で撫でしてくれた。
「よしよし、怖くないよ、想子」
「なんか創子、へんなとこ触ってない?」
「だいじょうぶだいじょうぶ」
「いやいや、嵐より創子のが怖いんですけど。変態」
「ほら、嵐の日って興奮すんじゃん? 他にすることもないしさあ」
「もー、創子、息荒いって」
「一日で何回いけるか挑戦しようよ」
なんというか、不可抗力だったのだ。外に出られない以上、仕方なかった。キスと手マンとシックスナインだけというけっこうお決まりで退屈なプレイばっかのわりに、よく一日もしてたと思う。そのわりに、すごくよかった。いった回数は途中まで数えてたけど、いつのまにか忘れてしまった。というかもし覚えてて、わたしの回数がお姉ちゃんより多かったら恥ずかしいし。
凍りついた日と、嵐の日と。思えば不思議な二日間だった。でもわたしもお姉ちゃんもその異常さをあまり気に留めてなくて、むしろ楽しんでた。楽しい、というわりには、特別なことをしたわけでもない、どっちかというと怠惰な、空気のような二日間だった。
次の日の朝には、江泊は今までの世界に戻ってた。海は綺麗な青色で、晴れ渡った空に入道雲がそびえて、潮のやわらかい匂いを含む風がゆるく流れた。でも、空気のような日々は続いた。わたしとお姉ちゃんだけじゃなくて、江泊全体がなんだか怠惰だった。あの二日間で町全体がけっこうぼろぼろになってしまったし、漁師さんたちも去ってしまった。風俗の仕事もない。女性たちは結界を越えてあっちの世界にも行き、おいしいものを食べたり映画を観たりしてくつろぐようになった。わたしとお姉ちゃんもそうだ。いま、江泊の結界はその効力を失おうとしてた。そうさせたのはあの氷とあの嵐で、でもそれをもたらしたものが何であるかについては、誰もが無頓着だった。少なくとも、女性はそうだ。そして、結界を完全に壊すため、新たに訪れる災厄についても、女性たちは理解してなかった。結界は壊されるべきなのか残されるべきなのか、その判断については、女性を含めた誰もがその行く末を決めかねてた。
江泊まんなかにある映画区で、お姉ちゃんとふたりで映画を観た。タイタニック。これはママがいちばん好きな映画でもあった。タイタニックを観たあと、ママは今まででいちばん素直になった。それはもう気持ちわるいくらい。大好きって言いながらキスしてきたり、ありがとうって言いながら泣き出したり、若いころの恋愛の話を延々と始めたりもした。そういえばあの恋愛話、相手は幸太郎さんじゃなかったのか。お姉ちゃんがいることを初めて教えてくれたのも、タイタニックを観たあとだったと思う。わたしが過去をふりかえる重要な時にはいつも、あのタイタニックが氷山にぶつかって沈むうつくしいシーンがあった。いまお姉ちゃんも、そのシーンを観ながらしずかに泣いてた。お姉ちゃんは格好いい男の人が好きだから、デイカプリオが好きだから、きっとタイタニックも好きなんだろう。それはママと同じで、お姉ちゃんを見てるとママのことを思い出した。わたしはタイタニックを観ながら、ずっとママとお姉ちゃんのことを考えてた。この夏が終われば、わたしは江泊を離れないといけない、かもしれない。かもしれない、というのは、江泊に残りつづけることも少し、いやけっこう、真剣に考えはじめてた。江泊に残るか、東京に帰るか。その選択肢は、お姉ちゃんを選ぶのか、ママを選ぶのか、それとおんなじだ。
タイタニックのエンドロール。お姉ちゃんはママと同じように、それを最後まで観るみたいだった。わたしはそっと、お姉ちゃんのそばを離れた。タイタニックが終われば、わたしはママがそうしたように、なにか重要な決断を下さないといけないような気がしたから。ディカプリオとウィンスレットが最期の愛を誓いあうあのシーンみたいに。わたしはセリーヌ・ディオンの歌声がずっと終わらないよう耳に焼き付かせながら、ひとり桟橋を歩いた。
どれだけ歩いたのか、いつのまにか夜はすっかり更けてて、だいぶ冷たくなった夜風がわたしの身体を撫でた。もうすぐ、夏も終わるんだ。わたしは管理区に立ってた。大地くんが住んでる場所だ。わたしは大地くんに会って、何を言いたかったのか。それか、大地くんに何を言ってほしかったのか。でも間違いなく、わたしは大地くんに会いたかった。わたしは大地くんに連れられて江泊に来た。きっと帰るときにも、そこに大地くんはいるはずだ。わたしは大地くんと答え合わせがしたかった。だから、わたしのなかにはもう答えはあったんだ。それを、大地くんの答えとくらべたかった。
わたしが大地くんを呼ぼうと首からかけた笛を取り出すと、吹くよりも前に大地くんが向こうからやってきた。大地くんは、まっすぐわたしに向かって歩いてきた。大地くんも、わたしを探してたんだ。その用事はきっとわたしのそれとは違うだろうから、わたしはまず、大地くんが何を言うのかうかがうことにした。
大地くんは、わたしの正面に立つなり、わたしの肩を両手で強くつかみ、ゆするようにして大声で言った。
「お前、なにかおかしいと思わなかったのかよ!!!」
あんまりの声に耳がキーンとした。
「は、なにが?」
ようやく耳の痛みが治まったころ、わたしはちいさな声で尋ねた。
おかしい、って、なにがだ。おかしいというなら、ぜんぶおかしいよ。江泊はおかしいよ。大地くんもおかしいよ。お姉ちゃんもおかしいよ。幸太郎さんもおかしいよ。ママもおかしいよ。わたしも、ぜんぶおかしいよ。ひとつも、正常なことなんてなかった。わたしの人生に。でもそれのなにがわるい? 心臓がばくばく唸るかわり、頭はみょうに冷静だった。
「わたしは、この江泊が好き」
わたしは大地くんに言った。わたしなりの答えを言った。
「わたしは、この江泊に残りたいの!」
告白するのには、いつだって勇気がいる。未来を信じさせてくれるのは、いつだって勇気だ。世界はおかしいことだらけだ。そんな世の中を好きでいるために、もっと頭のおかしい勇気が必要なんだ。
「……これを見ても、まだ江泊が好きか?」
そう言って、大地くんは後ろを振り返った。
管理区には、いつもより船が多く浮かんでて、そのどれもが明るい光を灯してた。いくつかの光は海に向けられ、泳いでるみたいにせわしなく動く。なにか探してるんだろうか。
「見つけたぞー!」
拡声器を通したひび割れた声がひんやりとした空気のなかに響き、光がある一か所の海面に集められた。
その光に映し出された海は、赤かった。まんなかには、ゴミ袋みたいなものが浮かんでた。ああ、死体だ、ととても冷静に考えた。わたしはお姉ちゃんとふたりで、水竜に喰われた男の子の身体を海に流したことがある。あのときの気持ちいいくらいの恐怖に比べたら、なんてことなかった。光は他にも海面に浮かんでる死体を次々と見つけ出した。とても多くの死体が海に浮かんでることを知っても、わたしはぜんぜんなんとも思わなかった。どうでもよかった。
ひときわ大きな船に搭載されたクレーンが軋んだ音をたてながら稼働をはじめた。クレーン頂上部の赤色灯がその長い首を暗闇に照らし出す。なんだろあのクレーン。死体を拾うのかな。でもそのわりには、大げさすぎるような。もっと何か、危険なものを拾うようなあのかたち。
わたしはクレーンを見て、すこしずつ何かを恐れ始めた。この江泊で、危険なもの。周りに浮かぶ死体。殺された。と、すれば、あのクレーンが釣り上げるものは。
半ば予期されたとおり、海中に潜ったクレーンは、人間よりもずっと白く美しく身体を引き上げた。
「水竜ー!」
わたしは叫んだ。
クレーンによって、二匹の水竜の死体が引き上げられた。二匹ともハイドラではなくて安心したけれど、わたしはハイドラを思い出した。わたしに懐き、悪戯をし、楽しそうに笑う姿を思い出した。お姉ちゃんが愛おしそうにハイドラを抱きしめる姿を思い出した。桟橋に横たえられた血まみれの身体を見つめるわたしの感傷は、そのままお姉ちゃんのそれだった。
わたしは、大地くんの身体を掴んで強くゆさぶった。
「なんで! 殺されないといけないの! ひどいよ!」
大地くんはわたしのその反応が分かっていたかのように、ぶすっとしてそっぽを向き、
「女はみんなそう言うんだ。水竜を守ろうとするんだ。でも、男は水竜と戦い、殺さないといけない」
と強い口調で言った。
「水竜が男を食べるから? 生きようとすると殺されないといけないの?」
わたしが叫ぶと、大地くんはわたしの身体を抱きしめた。ぜんぜん性的じゃない、おびえる小動物をなだめてるような、とてもやさしい抱きしめ方だった。そのわりに苦しくて、わたしは泣きそうになるのをようやく堪えた。
「水竜は、謡うんだ」
大地くんはそう言った。
「水竜は、水竜言語で天変地異を起こすんだ。氷の日と、嵐の日があったろ。あれは、あの二匹の水竜が起こした天変地異なんだ」
大地くんは苦しそうに言い淀み、身体の奥につっかえてるものを吐き出すように言った。
「水竜は江泊を破壊して、女たちを海に還そうとしてる」
わたしは何もわかんなかった。わかんないというなら、わかんないことだらけだった。大地くんの言葉も、その苦しみも。わたしは、ママのことを思い出した。何についても飄々としてたママのことを思い出した。ママはもしかしたら、わかってたのかもしれない。わかんないということを、わかってたのかもしれない。そんなママの聡明さがさびしかった。
わたしはママにわかってほしかった。彼氏も、お姉ちゃんも、その代わりだった。
「どうして?」
いま、わたしはわかりたいと思った。ばかみたいに。大地くんのためではなく、他の誰のためでもなく、そうされたかった自分のために。あるいは、わたしにそうしてほしいと思うだろう、わたしの子どもみたいな存在のために。
「水竜は、海で生きることを選んだ人間なんだ」
大地くんは答えた。
「女たちは風俗でできた赤ん坊を海に流すだろ? そいつらが成長した姿が水竜なんだ。水竜は、母親が海に還ってきてほしいと望んでいる」
おどろかなかった。そうかもしれない、と思っていた。水竜の、あの手足みたいに長いひれとか、人間の背丈くらいの大きさとか、高い知性とか。水竜は、海で生きることを選んだ人間のもうひとつの可能性なんだ。じゃあ、男たちはどうして水竜を殺すんだろう。そうする男たちが傲慢に思えた。彼らは、陸を生きることは、そんなに素晴らしいことだろうか、そんなふうにも思った。海で生きることを選んだ水竜たちのほうが、進化の先端を進んでるんじゃないだろうか。
わたしは水竜に呼ばれてる。海に誘われてる。それは初めて知る母性だった。わたしがママを求めたように、わたしはママとして、水竜に求められてる。
家に戻ると、お姉ちゃんはすでに眠ってた。わたしは二段ベッドのうえの段に上がり、布団にもぐりこんだ。考えることはいろいろあった気がするけど、おおすぎて、おおきすぎて、疲れに任せているうちあっという間に眠りに落ちた。
「起きてる? 想子」
夜眠ってると、ベッドの下の段からお姉ちゃんの声が聞こえてきた。
「なあに創子、いま起きたよ」
わたしは返事をする。
「なんか、寒くない?」
こんなやりとりを前にもした気がする。でも、身体は汗ばんでるくらいだし、夏が最後の力をふりしぼってるようなけっこうきつい熱帯夜で、暑くはあっても寒いとはとても思えない。
「想子、ちょっと下に降りてきてよ。一緒の布団に入ろうよ」
お姉ちゃんに誘われるまま、わたしは梯子をおりて、お姉ちゃんのいる布団に潜り込んだ。
「うわ、あつ!」
お姉ちゃんに身体を寄せると、お姉ちゃんの身体が激しい熱をもってることに気づいた。風邪というより、これはもはや異常だ。なにか熱病の類なのか。
「ちょっとお姉ちゃん、しっかりしてよ」
お姉ちゃんは意識がもうろうとして、何も答えない。せめて汗だけでも拭いてやろうとシャツをたくし上げると、背中に竜のようなかたちをしたミミズ腫れがくっきり浮き出てることに気づいた。
「……水竜が呼んでる」
わたしは呟いた。
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