スタートライン

蒼々輪

第1話 新しい舞台

 俺は相園 冬真(あいぞの とうま)、この春に引っ越しで東京に来た高校2年生、春休みが終わるまで残り1週間、転校をして初めての登校日まで同じである。

 引っ越しもして、何処かに出掛けるといった予定があるわけでもなく、家でのんびりと過ごしていた。そんな暇な時間を過ごしている日の夜に1本の電話がきた。その電話は引っ越す前の時に同じ高校に通っていた友達の杉岡 修(すぎおか しゅう)だった。

「冬真、久しぶり。そっちでは元気にやってるか?そろそろ新しい高校生活が始まる頃だろ。」

「久しぶりだね、修。元気にやってるよ、でも新しい環境だからか、基本的に家にいるよ。新しい高校生活まで残り1週間だから楽しみだよ」

「そっか、無理だけはしないように頑張れよ。何事も第一印象が大事だからな」

 最後にそう言うと電話は切れた。冬真は、久しぶりに友達と話せた嬉しさと新しい高校生活が始まるという不安の気持ちでいた。冬真はそのまま寝た。翌日も同様に家でのんびりと過ごしているだけだった。そして、1日と...。また1日と...。時は流れていった。春休みも残り2日となると、冬真の心の中は不安で満たされていた。すると部屋に母親が来た。

「もう学校の準備は終わったの?あと2日なんだから、自分の通う高校でも見てくれば?一応、道確認のためにもさ。」

 冬真は面倒くさそうにしていたが、暇だったので、言われた通りに高校へ向かった。冬真は無事に高校に着き、道を確認して帰った。家につくとすぐに寝てしまった。春休みも最終日となり、冬真の中も不安で一杯になっていた。冬真は少しでも安心するように高校を見に行った。すると、高校に向かっている途中で通っていた道が工事中になっていて、冬真は急いで違う道を探した。高校までの道を無事に見つけて、家に帰り、春休みの最終日を終えた。

 そして、迎えた転校初日の登校日、冬真は遅刻をしないように早く身支度をして、家を出た。高校に向かっている途中に昨日確認した時に工事中だった道は通れそうな様子はなく、冬真は一安心した。冬真は高校に着くと正門で止まった。

(ここが俺が新しく通っていく高校[茶那河高校])

冬真は校舎を見て、心の中でそう呟いた。冬真は職員玄関に行き、職員室へと行った。

(コンッ、コンッ)

「失礼します、今日から茶那河高校に転校をして来た。2年の相園 冬真です。」

そういうと1人の先生が冬真のことを呼んでいた。

「冬真くん、私が2学年の学年主任です。よろしくお願いします。そして、こちらが冬真くんのクラスの担任の藤蒔 佳奈(ふじまき かな)先生です」

「よろしくお願いします。」

「よろしくね。」

ぎこちない挨拶をして、その場で軽く高校の説明を聞き、教室へと向かった。教室までの廊下では、先生と一緒に歩いているということもあってか、すれ違う生徒たちから沢山の視線を感じていた。冬真は周りからの視線を気にしながら歩いていると先生が突然止まった。

「冬真君、ここがあなたがこれから過ごしていく新しいクラスですので、場所は間違えぬように早く覚えてくださいね」

「はい、わかりました」

そういうと先生は扉を開けた。扉を開けると教室の中からは賑やかな声が聞こえてきた。

「はい。みんな静かにして、今日から私たちのクラスに転校してきた人がいます。紹介したいと思うので、みんな静かにして聞いてね」

先生がそういうとクラスが騒めき始めた。

冬真は先生に入ってくるように言われた。緊張はしていたものの心の中では、そこまで不安ではなかった。なぜなら、冬真はこの日の自己紹介での第一印象を良くしようと、春休みの期間中に色々と考えていたからだ。冬真は深く深呼吸をして教室の中に入った。みんなの前に立つとやはり緊張してきた。冬真は深呼吸をしてから挨拶を始めた。

「長野の滝ヶ丘高校(たきがおかこうこう)から来ました。相園冬真です。前の高校では陸上部でした。あまり茶那河高校のことはわからなくて迷惑をかけてしまうかもしれませんが、これからよろしくお願いします」

冬真は挨拶を終えたが、言ったことは誰もが言うような至って普通の挨拶だった。先生は冬真に一番後ろの左端の空いてる席に着くように言った。冬真は席に着くと鞄の中から本を取り出して、机の上に置いたものの外の景色ばかり見ていた。朝のホームルームを終えると、クラスメイトが挨拶をしに来た。

休み時間も終わり、転入後最初の授業が始まった。特に何もなく普通の授業だった。授業が終わり、休み時間になると本を読むということを繰り返していた。そして、何もしないで時は流れ、登校初日が終わった。

2日目も、友達が出来たわけでもなく初日と同じように授業と読書だけの日を過ごした。

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