第6話 底辺
「よし!じゃあ、みんな自分が直感で属性はあんまり意識せずに魔力を手のひらに集めてみるさね!」
バーバラさんのデモンストレーションが行われた次の日、みんなが待ちに待った実習訓練が開始されたのだ。
「はい!」
みんなの元気がいい掛け声と一緒に様々な属性の魔力が手の上に集められた。
サラとカーリは火、スパナとアリアは水、イーサとバール、ビチルダは風、スコラとデフは雷の魔力が集まっていた。
「やったー!」「案外簡単じゃんか」
今まで意図的に魔力を扱ったことのないサラやもう一つの部屋にいるカーリなどが各々感想を言っている。
そして肝心の俺はというと……
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!なんで俺だけ魔力が集まってこねーんだよ!」
おい。どうなってんだバーバラさん!
一応みんなそれなりの才能はあるとか言ってたじゃん!そ、そうだ。自分のステータス見れば今の自分がどのくらいか分かるじゃん。じゃあさっそく……
ルクス
レベル 1
(総)6級(仮)
(個)火魔法 6級 水魔法 6級
風魔法 6級 雷魔法 6級
黒魔法 ¥♪☆級
なんだ黒魔法って?ていうかそんなこと言ってる場合じゃねぇ!四属性の階級が全部6級じゃねーか!俺弱過ぎじゃん。い、いやみんなだって最初なんだしこれくらいだろ。ちなみに6級は魔法適性としては最低の階級である。おかしいだろ。
オチはもう何となくわかるけど、試しに手に集めてある魔力が1番少ないスコラのステータスを見てみようか……
スコラ
レベル 1
(総)6級
(個)火魔法 6級 水魔法 5級
風魔法 6級 雷魔法 5級
まじか、俺とそんなにステータス変わんないのに、魔力集めれてるじゃん。うわぁ、心折れそう……
そして気が動転したのか、俺はよりによって1番心のダメージを与えてきそうな人のステータスをチェックしてしまった。
あ、そういえば、教わってもらってもないのに実際に魔法使ってるイーサ姉ちゃんのステータスってどうなってんだろー?
イーサ
レベル 9
(総)2級
(個)精霊魔法
(火魔法 3級 水魔法 3級
風魔法 2級 雷魔法 3級)
げっ!!2級とかバーバラさんの一個下じゃねえか、しかも精霊魔法ってなんだよ!
魔法使ってるからレベルも上がってるし……
バーバラさんの言ってた意味は分かったけど、これはあんまりだろ。
そう思いながらも恐る恐るみんなのステータスを全部見た結果、俺と同じどころかイーサ姉ちゃんの他にも2階級の属性を一つだけだが持っている人までいた。これは流石に辛い……
そう俺が心の中で落胆しているのが顔に出たのか、サラとイーサ姉ちゃん、そして以外にもスコラがフォローの言葉をくれた。
「だいじょーぶだって!ルクスだって訓練やってればできるようになってるわよ!」
「ルクス!落ち込んでちゃだめだよ。まだまだこれからなんだからね」
「イーサの言う通りですよ、まだまだ最初なんですから」
だけど、正直みんなのステータスを見た俺にはなんのフォローにもならないんだよな。
しかもイーサ姉ちゃん、自分のステータス知ってたらもう最初とか無いからね、最初から強いからね?まぁ、悪気がないのは分かってるつもりけどさ。あぁ悔しい!
「今日はそこまで!これから1週間は魔法は使わずに、四属性の魔力をそれぞれ集めてみて、自分の得意不得意を知るのと、魔力のコントロールをしっかりできるように魔力の限界の1歩手前まで魔力の一点集中をやってもらう。みんな努力するように!」
「はい!」
そうして俺にとって地獄になった実習訓練が開始された。
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「今日はそこまで!明日からも引き続き魔法の練習をする。自主練をしてもいいが、魔力切れを起こさないように気をつけるんだよ!」
1週間後の訓練の終了が告げられた後も俺は魔力を集めることすら出来ていなかった。
「ああああああああああああ!!なんで俺だけ魔力すら集められねーんだよ!」
俺が何故こんなに焦っているかと言うと、バーバラさんが与えた1週間のうちたった3日で俺を除く全員が四属性の魔力を手のひらに集められるようになっていて、1週間たった今ではもう実際に魔法の練習をしているのである。
「デハハ!ルクスは魔法使いなんか無理じゃねえの?」
「いやいや、魔法どころか魔力を集めることすら出来ねーんだからもう仕事もできないだろー。カヒヒ!」
「プッ、確かにそうだな。チヒヒ!」
そう小声だが、しっかりと俺に聞こえるように陰口を言っているのが最近魔法を使えるようになり始めたデフ、カーリ、ビチルダの3人組だった。
そしてそのやり方にムカついた俺は、言い返してやろうとザッとそいつらの前に出た。
「あぁ?俺だって……!」
「デフたちだって最近魔法使えるようになったばかりでしょ!ルクスだって頑張ってるんだから悪口言っちゃダメだよ!」
喧嘩を吹っかけようとした俺の言葉に被せて、イーサ姉ちゃんが俺を庇った。
だけれど、俺はいまや第4階級の魔法も使えるようになったイーサ姉ちゃんに庇ってなんて欲しくなかったわけで。
「もういいよ……」
「え?どうしたの?ルクス」
「もういいって言ってんだよ!イーサ姉ちゃんに慰められたってちっとも嬉しくないんだよ。だいたいちっとも魔力も集めれないなんてどうすりゃあいいんだよ!」
あぁ、勢いで言っちゃった。もうどうにでもなれ!
そう思って孤児院に戻ろうとしている俺にビチルダがニヤニヤしながらあることを持ち掛けてきた。
「そんなに悔しかったら戦ってやってもいいぜ。今日の夜12時に村から少し離れたとこで待っててやるから、バーバラさんにバレないように1人で来いよ。チヒヒ!」
コイツふざけやがって!その時カッとなっていた俺は二つ返事で了承してしまった。
「分かったよ。お前こそ逃げんなよ!」
そうして俺は訓練後の自主練をしているみんなを残して1人孤児院に戻って行こうとする。
「ごめんねルクス、でも、でも私は!……」
しかしイーサ姉ちゃんが何かを言おうとして俺を引き止めた。だが今はとにかく居心地が悪かったので止めた足をすぐに動かして無言でその場を去った。
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「チヒヒ!アイツ分かりやすいな!よし、じゃあ今から作戦を考えようか……」
「「おう……」」
「はぁ、もうどいつもこいつも。まぁ、大怪我だけしないように見守ってやるさね。」
当然、地獄耳によって全ての事の顛末を把握していたバーバラはそう愚痴をこぼしていた。
それぞれの思惑(と言っていいのか?)が混ざり合いながら、時間は矢のように過ぎていったのだった。
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