Artesia_Online(アルテシア・オンライン)
天下原なばら
プロローグ
VR技術が確たるものとなり、さまざまなところで利用されるようになった時代。ゲームもまた、VR産業へと乗り出していた。VRMMOのタイトルが次々と打ち出され、初めはぎこちなかった動作も徐々に洗練され、今では違和感なくプレイできるようになっていた。
しかし、そうは言っても、今のところ再現できているのは視覚と聴覚、それと若干の触覚だけ。味覚や嗅覚に至っては、まだまだこれからという有り様だった。
そんな中、ネット上では、とあるゲームのレビューが注目を集めていた。そのゲームの名は<アルテシア・オンライン>。まだ、試作の段階にありながら、五感の完全再現に成功し、グラフィックも精巧で、リアルと区別がつかなくなりそうだという。
ここまででも十分驚くべき内容だったのだが、文章はこれだけでは終わらなかった。続きには、時間加速の実用化に成功した、と書かれていたのだ。これは体感時間を操作する技術であり、レビューでは二倍――つまりゲーム内で二時間過ごしても現実では一時間しか経過しないという。
もちろん、どちらもスゴイ技術なのだが、しかしながら、レビューに対するネット上の反応は芳しくない。実際のところ、皆、半信半疑だったのだ。実用化の噂すらなかった五感を再現する技術と時間加速を、いの一番にゲームに持ってきた。不審に思うのは当然のことと言えた。
けれど、これは、クローズドベータテストの参加者が一般に募集されたことでかなり払拭されることとなった。参加者が積極的に感想を発信したことで、信憑性が増したのだ。ベータテストでの時間加速は正式版と同じ二十四倍。ゲーム内で一日過ごしても現実では一時間しか経っていないという。この情報にネットは大いに沸いた。
また、参加者が次々に情報を発信していくことで、ゲームの内容が徐々に明らかになっていった。世界観は
そんな盛り上がりをみせた<アルテシア・オンライン>は、一週間の専用ハードの先行販売のあと、七月の最後の土日に合わせて正式に配信が開始される運びとなった。明らかに夏休みに入るだろう学生を狙ったものと思われる。完全スキル制で好みが割れたところではあるが、それを差し引いてもなお有り余る<アルテシア界>の精彩さに魅了されていた。
これが混乱の始まりと知らずに――。
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