あなたへ

 もう戻れません、あなたを知らない私には。


 一体どれくらいなのでしょう。本を読まないあなたが読書に目覚め、この広大な文章の森の中から、私を見つけ出してくれる可能性は。それは気の遠くなるような、天文学的確率かもしれません。

 それでも書かなければ、ほんのわずかな可能性すらゼロになってしまうから。


 私はたいした人間ではありません。自分の感情のままに自由に、流れるように生きているところが好きだとあなたは私に言ってくれました。しかし本当の私はあなたが思う私とは全く違うのかもしれません。いや、違うのです。

 あなたがこれまでに出会ったたくさんの人の中に埋もれたくなくて、大勢の中の1人になるのが嫌で、少しでもあなたの記憶に残るように振る舞っていただけなのです。


 本当の私は、自由が怖くてたまらない。自由に憧れているのに、自由なふりをするのに、1人だけどこか違う場所に行ってしまうのが、とても恐ろしくてたまらない。

 つかまるものがない状態で、海を泳いだら流されてしまう。目印がない山に登ったら迷い込んでしまう。私の自由はあくまでも、誰かに護ってもらった自由なのです。誰かの目の届く範囲で、失敗しそうになったら連れ戻してもらえる環境で。そんな窮屈で、ずるい自由なのです。

 あなたが言ってくれたような、自由に輝く人間ではないのです。


 私の語彙力では、私のこんなつまらない人生すら、うまく表現できないかもしれません。

 それでも私は書くことにしました。ありのままの私の言葉で、ありのままの私を知って欲しいと思ったから。ほんの少しでもあなたに知ってもらえればいいのです。何もいらない。ただ、知って欲しいだけなのです。見つけてもらえなくてもいい。可能性を残しておければそれでいい。


 あなたに出会えたから、それでいいのです。

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@nax1013

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