EstinzionE

冬桜

プロローグ -破滅へのカウントダウン-

 緑が生い茂る綺麗な土地に降り注ぐ黒の球体。摩訶不思議な物が空から落ちてくるものだ、と誰かが空を仰いだ。刹那、それは上空で激しい音を立てて破裂した。耳を劈く様な、脳味噌を直接揺さぶられるような、そんな音だった。

 屋内にいた私ですら、その音で平衡感覚を失う程だったのだ。外にいたみんなはどうなってしまったのだろう、と一歩足を踏み出すが、そのままパタリと倒れてしまう。


 平衡感覚がなくなった、と思っていたがどうやら違う。力が消えていくのだ。

 私の、いや私達、魔法使いの原動力はだ。人間とは違い、空腹でも自然が周りにあれば、動いていられるし生きていられる。

 その自然がいきなり消えているとでも、いうのだろうか?


 力の入らない身体を何とか動かそうと、匍匐前進をし窓の近くへと移動する。全身鎖で雁字搦めにされているかのように、身動きがほとんど取れない。

 上がる息を抑えつつ、私は壁を支えに立ちあがり窓の外を見る。



「どうして…」



 目を覆いたくなるような惨憺たる有様。花が咲き誇り、木々が靡き、鳥が羽ばたいていた筈の景色。一瞬で荒れ地に代わり、青空は消えどんよりとした重たい雲が空を覆っていた。

 窓に反射して映る青の瞳が呆然とどこかを見ている。灰を被ったような髪が小刻みに揺れている。


 つい数秒前までは、こんな光景ではなかった。

 美しい羽をした鳥は空から落ち、地面に転がる。仲間であった魔法使い達も私と同様力が出ないのか焦げたような地面に倒れている。



「一体、何が…」



 平和に暮らしていた世界が今、混沌とした世の中に変わろうとしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る