第4話 部活動結成 後編

 ──家の近くの喫茶店にて


 四人席で、俺と陽葵が隣で俺の前に唯衣、その隣に成海という並び順で。


「先生からの条件は二点。一つ目は部活の名前を決めること、二つ目は活動内容を決めることです。さ、考えていきましょう」

「陽葵、ちょっと待ってくれないか? 唯……ダークネスと成海よ、昔会ってたってどういう意味なんだ?」


 唯衣と成海は顔を見合わせて困っている。

 そんなにも言い難い事なのか……?

 十秒くらい見つめあった後に、言いにくそうに成海が。


「三年後、つまり竜希さんが卒業してからなら教えてもいいっスけど、今は無理っスね」

「そんな時間経たせるもんじゃないだろ。こういうことはさっと解決すべきなんだよ」

「そうなんスけど……、やっぱり僕から言うのは無理っス。聞くなら明日葉ちゃんからにしてほしいっス」

「我も無理!」


 即拒否かよ。

 この件は大事なのかもしれない、ここは引くべきか?

 でも、今すぐ知った方が……。


「その話終了です! 部活を決めましょうよ、でないと退学なんですよ?」

「あっ、そうっスね! 明日葉ちゃんはなんか意見あるんスか?」

「我は『中二病部』がいいと思う! 賛成の人手を挙げて!」


 もちろん誰も手を挙げないし、顔を合わせようともしない。

 なんなら笑いかけてるよ。

 なんか部活より俺の過去が知りたいんだけどな。

 言われてみれば俺は小学生までの記憶が無い。

 ただただ、唯衣の家が近いから幼馴染だなと思っていただけで。

 真剣に悩んでいると陽葵が。


「なんかアイデア浮かんだんですか? なら何か発表してください。まさか、この状況で違う事考えてた、なんてことないですよね?」

「っ……! じゃあそうだな……、オタ部って言うのはどうだ?」


 ものすごく適当に言ったつもりだったが、陽葵はめっちゃウキウキした顔をしていた。

 こいつオタクなのか?

 ……よく考えろ俺、そんなはずないだろ、こいつはお嬢様なんだから。

 周りの連中を見てみろ、めっちゃ引いてるじゃないか。

 ……引いてるじゃないか……、泣きそうだよ。


「どうしたんスか竜希さん! 何で涙を流してるんスか、僕達なんかしました?」

「え? いや、ちょっと色々あってな」


 何もないよ? ないけど、虚しさが残ったんだよ。


「じゃ、じゃあこうするのはどうっスか? 中二病部とオタ部を合わせて『中二病オタ部』にするっス」


 ふっ、こいつにも虚しさというものを植え付けて……、


「いいじゃない! 我がアイデアも入っているので、賛成ー!」

「ま、まぁいいんじゃないですか? ではそれにしましょう」


 やれませんでした。

 何こいつら、俺の意見の時は白い目で見てきたくせに、成海の意見は賛成っていうのかよ。


 その後、活動内容を決め、店を出て、家に着いた……ら。


「なんで唯衣さんと竜希さんが私の家の前なんですか!?」

「それ、俺達にいう? 後に来たの陽葵なんだが」

「わ、私が貴方達を追ってきたみたいな言い方しないでください! そんなのは誤解です!」

「誤解なんてしてないわ! それより俺が驚いたのは……」


 そう言いながら俺は、成海の方を向き。


「何でお前はダークネスの家の隣のアパートなんだよ! 何これ、偶然? 偶然俺の隣にダークネスの家、その隣に成海の家があるって言うのか?」

「そうみたいっスね。竜希さん、気になったんスけど、ダークネスっていうのは何なんスか?」

「我が愛称だ!」


 愛称だったのか……。

 偶然って恐ろしいなあ。


「ライトニングマンっていうのはあいつの愛称よ!」

「愛称じゃないし! てか、そんな話してなかったんだから、わざわざ掘り返すなよ!」

「我が愛称を付けてやったのに、言い返すのか!?」


 まずい……このままではこいつを泣かせてしまうかも……。


「お兄ちゃん何してるの? 部屋に入らないの? その人達は遊び仲間かな、入ります?」

「「「いえ、家近いので大丈夫です」」」


 和葉マジナイス!

 それにしても、何故こいつらは一歩引いたんだろう。


 そのまま俺たちは分かれた。


「お兄ちゃんもちゃんと友達がいてよかった。安心したよ、後は彼女だね」

「いや、彼女も出来たんだ。さっきいた清楚っぽい女子がそうなんだよ」

「え……、ほ、本当に出来たんだ。おめでとうお兄ちゃん」


 なんか元気ないな。

 原因がわからない以上、俺にはなす術はない。

 心配ではあるが、明日は部活に入るための日、寝不足にならんよう早く寝るか。


 次の日の朝、学校行くため家を出ると。


「「「「あ……」」」」


 四人同時に家を出て、同じ言葉を発した。

 家が近いというか隣等なので、出会うことはあると思ってたが、こんなことが起こるなんてな。


「そんな固まってないでさ、学校行こうぜ?」

「そうっスね、行きましょう行きましょう!」


 なんかぎこちない感じのまま、学校に着き教室で先生に部活申請書を出した。


「内容は……ラノベを読んだり、中二病なる……か。まあいいんだけどさ、顧問はどうするの?」


 先生がそう言うことはもちろん想定内。

 なので俺達揃って……。


「「「「中野先生、お願いします」」」」

「嫌よこんな部活! 先生の恥だわ!」

「恥とは酷いじゃないか! 我が部は神聖な部だ!」


 神聖ではないな。


「先生……お願いします」


 陽葵が両手を合わせ、下から先生の顔を伺うように見ながら言った。

 女子のこの仕草、めっちゃ可愛いです!


「先生やってやれよ! 陽葵様の意見だぞ!」

「そうだ、やってやれ! 容易いことだろ!」


 みんなが背中を押してくれるが、俺の背中は押してないんだろうなあ。

 そろそろクラスに友達を作りたいんだけど……。


「出来ることならこの中二病男外さない?」


 まぁ無理だよねー。

 分かってたよ? 分かってたけど作りたいじゃんか!

 そんな風に思う俺を、何か勘違いしてか、唯衣が。


「何言ってるの! 我が『暗黒物質ダークマター』を受けれるのはこの、ライトニングマンだけなんだから、外す訳ないじゃないか!」

「助けてくれるのかと思ったけど、やっぱり唯衣には無理だよな!」


 半泣きしながらいう俺に、唯衣はダークネスと呼べと言ってくるが、もう放置だこんなヤツ!

 そろそろ見かねたのか、先生が終止符を打つ。


「もうそのへんにして終わり! 顧問は先生が引き受けたし、部活動はこの教室で行う。それでいい?」

「「「「はい!」」」」


 なんだかんだで俺たち四人仲いいんだよなあ。

 その放課後、初めての部活動が行われようとしていた──





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