第12話 タコパ②
いい感じにたこ焼きが出来上がったので、お皿に山になるように積み上げて僕は言う。
「それじゃあ、記念すべき第一回タコパ! 手を合わせて~~」
手を叩いて皆に呼びかけるが。
「「いただきます~!」」「…………」「…………ます」
なんと言ってくれたのは花音のみ。楓はガン無視だし白鹿は全然声聞こえねぇ上に照れてるし。
しかも――加々爪に至っては。
「ふぁごはがふぁふぁふあこ!」
「もう食べてるし……」
「ふあごふぁはぁふあぁふはふはう!」
「暑いのは分かったから飲み込みなさい」
加々爪がたこ焼きの熱さにもがき苦しんでいたら、隣に座っていた白鹿がサッとお茶を出していた。そりゃ丸々食べるとそうなるよ。
ちなみに席順は、右回りで僕、加々爪、白鹿、楓、花音の順となっています。
よくよく考えなくても、今僕の家には美少女と間違いなく断言できる女子が三人もいるのんだよなぁ。あ、花音は身近過ぎて可愛いか分からないので除外しております。
僕の家なのに僕の場違い間が凄い! 白鹿を家に呼んだことは初めてだし、加々爪に完全にイレギュラーな存在だからな。
見渡す限り美少女!(花音は除く)これって人生初のモテキ来たんじゃね? と錯覚するレベル。
……なのに、素直に喜べないのは彼女がいるからだろうなぁ。さっきから露骨に不機嫌だし。ぶすぅが彼女のデフォルトだとしたら、今ぶすぶすぶすぅぐらいだし。でも、そんな顔をしながらハフハフしながらたこ焼き食べる楓マジ可愛い。
「そんじゃあ、次のたこ焼き焼くよー」
花音がたこ焼きの粉にい卵とかキャベツとか混ぜ込んで液状にしたものを、空になったタコ焼き機に注ぐ。
「わ、私も……て、手伝い……すみません」
「じゃあ白鹿ちゃん、半分手伝ってー。どっちが奇麗に出来るか勝負しようぜ!」
「は、はいっ」白鹿の優しい笑顔。守りたい。
……なんか、合流したときはあまりの治安の悪さにどうなるかと思ったら、意外にも一周回っちゃって落ち着いた感。ドリンクバーでいろんな味を混ぜて飲んだら「あれ? うまくね?」感。
なんというか、統一感のひったくれもないメンバーだからか、逆にのびのびできる気がする。白鹿と花音は早くも仲良くなりかけているし。楓は不満そうだけど。
「ねぇねぇ。太一君太一君」
――と、僕の名を呼ぶ加々爪を見る。彼女はたこ焼きを箸で持ち上げて悪魔のような笑みで言う。
「ハイ太一君。あ~~~ん!」
いやいいやいやいやいやいやいやいやいや!!
同じ食卓に彼女いるんですけど! 貴方のメンタルはホントどうなってるの!?
バキィ! とどこかの席で何かが折れる音が聞こえ、嫌な汗がダラダラと流れる。それでもたこ焼きを引っ込めないどころか、唇に入れんばかりに近づける加々爪。
仕方がない――僕は勢いよくたこ焼きを頬張る。幸い、加々爪は食べさせる前にたこ焼きを割ってくれたらしく、悶絶するほどの熱さではない――――――――――――
「ぐぉほぁああッ!? 何これ!?」
後からツーンと来る強烈な刺激に、椅子から転げ落ちそうになる。何とか吐き出すことは堪えたけど、暫くジタバタともがき苦しむ。
お前コレ――――大量のワサビ入れただろ!!
「あ、あの……お茶を」
心配そうな駆け寄る白鹿の手にはコップに注がれたお茶が。ペコリと頭を下げて、僕は一気に飲み干す。
あぁ……死ぬかと思った。涙目になった目を服で拭う。つーか加々爪、たこ焼きを割って親切だなと思ったけど、ワサビを仕込むためだったのかよ……。
「くそぉ……加々爪」
本人はというと、自分の太ももをバシバシ叩きながら涙が出るほど笑っていた。
「あっはははっははっはは! 私を振るからそーなんだよバーカ!!」
「うるせぇバーカ! ワサビぶち込むぞ!」
右手にはワサビ、左手にはマヨネーズを持って戦闘態勢に入る僕と相変わらずゲラゲラ笑う加々爪。そんな話を聞いて「え?」と驚きの声を上げる花音。
「ええッ!? 加々爪さん、太一に告白したの!?」
「うんっ! 実は私達付き合ってま~す!」
「付き合って無いからややこしくなるから!」
やべぇ楓に始末される――と僕は冷や汗をかきながら楓を見るが、意外にも彼女は落ち着いた様子だった。……ん? いやよく見るとほんのりと顔が赤くなっている。恥ずかしさを我慢してる? 何故だ。
楓の表情は大体理解できるつもりだったけどだったけど、今回ばっかりはサッパリ分からない。まだまだ楓検定一級の道は険しい。
「でも、何で太一なんかに? 幼馴染だから分かりますけど、本当にコイツ冴えないですよ? イケメンじゃないし」おい。あと、楓も頷くんじゃねぇよ。
「まぁ私も冴えない奴と思うけど。……アレよ。いつも国産のA5ステーキばっかり食べてたらなんか飽きてくるでしょ? たまには顎が外れそうな駄肉もいいかなって」
照れながら言ってるけど、ひっどい理由! つーか、花音も「あ~~」とか納得したような声出すなよ! 誰か助けろよ!!
「あ、あの……あ、……安達先輩は……駄目、じゃないです……! ……か、かっこいいです、し。…………す、……す、……ごにょごにょ」
僕のピンチに気付いたのか、白鹿は震える声で意義を唱えた。最後の方は聞こえなかったけどいいぞ! ナイス援護! やっぱ持つべきは信頼できる後輩だな!
「聞こえないんだけど? もっとちゃんと喋ってくれないかしら?」
「すみませんッ! すみませんすみません! もう何も言わないので許して下さい」あ、味方撃沈した。
楓にとっては何気ないお願いなのだけど、いかんせん口調が強いため白鹿にとっては怒られていると認識してしまうらしい。う~む……二人の溝が縮まらない……。
「ところで呑気そうだけど群青ちゃん大丈夫なの? 私、今まで狙った男を落とせなかったことが無いの。駄肉なんてあっという間に奪っちゃうよ?」
「……ふん。どうでもいいわ」
「あれれれれれえ? いいのいいの? やったぁ。ねぇねぇ太一君、彼女さんは別に君のことをそれほど好きじゃないみたいよ? 私と付き合った方がよくない?」
「煽ることしか出来ない負け犬なんてどうでもいいって言ったの。振られたのに食い下がるなんて、往生際が悪いわよ」
「…………へ、へぇ…………」
「…………ふん」
おい誰だよ一周回ったって言った奴! 一周半回ってとんでもなくなってるぞ! 殺意の波動がぶつかり合ってバチバチと音を鳴らしている。間に挟まれるたこ焼きさん可哀そうだろ!
「だったら、太一君と群青楓が付き合ってるって証明しなさいよ! 正直に言うけど、絶対アンタよりも私の方が太一君と上手く付き合えるから」
「……いいわ。証明してあげる」
楓はハッキリとそう言うと、山になったたこ焼きを一つ取って箸で割った。そして、えげつない量のワサビをたこ焼きに詰め込んで……。
「はい。あ~~~ん」
できるねぇだろッ!! ワサビあふれ出てるぞコラ! 何だ、君は何を証明する気だ? 人体はどれだけワサビに耐えられるかの人体実験か?
おかしいだろこのタコパ!!
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