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二限目の授業を唐突に切り裂いたのは、すぐ傍で轟いた張り裂けるような破裂音にも似た凄まじい音だった。
明らかに、学園の敷地内で起こった音だった。その破裂音が起きた瞬間、和葉の周りで数学の授業を受けていたクラスメイトたちが、一様にざわめき始める。
「静かに、静かに!」
それを、教壇の上に立つ年老いた数学教師が険しい顔で宥める。
「どうせ、誰かの自転車のタイヤがパンクしたか何かだろう。ほら、気にせず授業の続き進めるぞー」
適当な憶測を付け加えて無理矢理にざわめく生徒たちを鎮めれば、教壇の数学教師はそのまま授業を進めていく。そうすれば、クラスメイトたちもまた、何事も無かったかのように元の呑気な雰囲気を漂わせ始めた。
「…………」
――――しかし、そんな呑気な空気が漂う中でただひとり。和葉だけは顔を蒼くし、ひどく震えていた。
(やっぱり……! やっぱり、朝のアレって……!!)
脳裏に過ぎるのは、朝に背中を
『――――真面目な話、本当に君の身が危なくなってきた』
和葉の脳裏でフラッシュバックするのは今朝、ハリー・ムラサメが神妙な顔で告げてきたその言葉だ。
それと同時に、和葉は半ば確信していた。今さっき聞こえてきたあの破裂音は、紛れもなく銃声だと。タイヤがパンクしただとか、そんな呑気なモノじゃないことを、和葉は確信していた。
確たる根拠があるのかと言われれば、正直言ってアリはしない。もしかしたら、自分の気にしすぎかもしれない。ただの考えすぎて、あの音は本当に駐輪場でタイヤが破裂した音なのかもしれない。
しかし――――同時に、アレが銃声でないと。自分の命を奪いに来た刺客の放った凶弾の音では無いとも、言い切れないのだ。
やっぱり、間違いなんかじゃなかった。今朝の怪しいあの車は、やはり自分を追い掛けていたのだ。
「っ……!!」
気付けば、和葉は自分でも知らず知らずの内に教室を飛び出していた。半ば無意識に、本能的に危険を察知して。
「ちょっ、和葉ぁっ!?」
「ま、待ちなさい園崎っ!」
背中の向こう側から朱音の驚く声と、廊下に顔を出してきた数学教師が呼び止める声が聞こえてくる。
しかし和葉はそれに構わず、制止も聞かず。ただ廊下を全速力で走り抜けていった。迫り来る確たる脅威から、ただ逃げ延びる為に。
「逃げなくちゃ、逃げなくちゃ……!」
――――でないと、殺される。
先程と同じような銃声が重なり響き、そして遂に悲鳴が学園に轟き始める中。和葉はただ、必死の形相で走り続けた。走って、走って、走り続けていた。
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