第4話
異世界で初めて食べた夕飯は思ってたよりずっと美味しかった。何の肉かわからないけど鶏肉のような食感の肉はニンニクのような味付焼いてあり付け合せの野菜もドレッシングのようなものがかかってあって、これがまた実に美味いのだ。パンはこんがりトーストされて上にチーズがのせてある。これが溶けて絶妙な味になる。
「まさかこんなに美味しいものが食べれるなんて思ってなかったな。これなら暮らせて行けそうだ」
理玖は人間に一番大事な物は食事だと思っている。食欲のない世界なんて考えられない。人間は食事を美味しく食べるために働いているのだと思っているくらいだ。。
「どう、うちのご飯美味しいでしょ?」
リューリに声をかけられた。どうやらお手伝いをしているようだ。
「これサービスだよ」
リューリはコップを差し出してきた。コップの中身は白く濁っていて、カルピスのような色だ。
「ちょうど飲み物が飲みたかったんだ。ありがとう」
お茶のようなサービスがなかったので有難かった。リューリは一気に飲もうとして、口に入れた途端に喉が焼け付くような感覚に驚き一口しか飲み込めなかった。吹き出さなかった自分を褒めたいくらいだ。
「リューリ、これ酒じゃないか」
「うん、そうだよ。この国では夕飯食べるときはアルコールって決まってるでしょ」
お茶が出なかったのはアルコールを飲むのが当たり前の国だからだそうだ。飲み物を何も頼まないからリューリがサービスしてくれたようだ。それにしてもこの酒はアルコール度が強すぎる。ビール位なら飲めるのに。
「ビールはないのか?」
「ビール?」
「上に白い泡が出る.....」
「ああ、エールのことか。エールならあるよ。持ってこようか?」
「いや、今日はこれを飲むからいいよ。明日から頼む」
「はーい」
一気に飲まなければ大丈夫そうだ。理玖はチビチビと飲みながら周りを見る。冒険者風の男が多い。明日から冒険者になろうと思っているが、女でもなれるのだろうか? 本の世界とは違って現実なんだから、下手をすればまた命を亡くすことになる。問題はどのくらい強いかだよな。神様の話では魔法もスキルもくれると言っていたから安心していたが、筋肉隆々の冒険者達を見ていると不安に思う。この身体は手も足も細く、一応剣を腰に差しているが本当に戦えるのか。
「おい、ネーチャン、見たことない顔だな」
うだうだと悩んでいると声をかけられた。如何にもな感じの筋肉隆々の男の集団だ。ネーチャンと言われて振り向きたくないがどう見ても周りにネーチャンらしき者は存在しない。
「俺のことか?」
「ほかにネーチャンなんていないだろう」
男がキヒヒ下品に笑うとお仲間らしい男達もキヒヒと笑う。
自分が強いのかどうかもわからないのに相手にしたく無いが逃げれそうに無い。どうしたものかと思っていると
「待たせたな」
と言って普通の男が目の前の椅子に座ってきた。待たせた覚えはないがここは頷いたほうが良さそうだ。
「お前が遅いから変なのに絡まれただろ」
「悪い悪い。で、こいつらなんなの?」
「知らない」
「ふーん。君達用がないんならあっちに行ってくれる? 俺たち今から大事に話をするんだ」
どう見ても強そうにない男が雑魚でも見るような目で筋肉隆々の下品な連中に冷たい声で言う。理玖は大丈夫なのか心配になった。助けてくれてるようだがもっと強そうな男が良かった。
「なんだと~!」
案の定男は馬鹿にされたと激昂する。だが仲間の一人が慌ててその男を止めた。
「馬鹿、よく見ろよ。ギルドのヨルダンさんだよ」
「ヨルダン...さん、し、し、失礼します」
先ほどまでとはまるで違う人間になった子羊のような男たちは蜘蛛の子を散らすようにいなくなった。
「ふふふ、助けてあげたんだからしばらく付き合ってもらおうか」
誰も助けてくれとは言ってないと言ってやりたいが、助かったのは事実だ。おまけにギルドに関係ありそうだし話くらいは聞いておこうと理玖は思った。
「そうですね。助けてくれたお礼にエール位ならおごりましょう」
リューリにエールを二杯頼んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます