第30話 サイド母様達
彼女はヴィリディータスの番を生み出した後、周囲にマナを精製する為にマナアメーバを生み出した。
このマナアメーバは魔素をHPの消費で生み出す生物だ。
スキルに魔素探知があるので、彼女はこの個体に演算能力向上と算術と記憶のスキルも与えている。
これで、周囲にマナとなる魔素が満たされていくでしょう。
アメーバが生み出したマナを、ヴィリディータスがため込んでいる。そしてそれを捕食することにより溜めているマナを吸収しオドの回復が出来る。
さらにこのヴィリディータスは魔物なので経験値も獲得できるという、一石二鳥な魔物なのだ。
そして、現在生態系の頂点には、ペスモルトゥムとディプテラが存在している。
生態系と呼べるほどの層の厚みはないけれど、とりあえずそれっぽい構造にはなったかしら。後はこのままそれぞれの種族の個体数を増やしてもらいつつ、私の方で種族数を増やしていけばいいわね。
さて、ここでこの世界の寿命について話しておこう。
何時かに儘がシステムで寿命をコントロールしていると言っていたのは、憶えてもらっているだろうか。
この世界では、システムに依り寿命が定められている。
システムは一月経つ毎に生命力を1奪っていく。この生命力はシステムに蓄えられ、この世界の維持や拡張などに使用されていく事になっている。
言い方はあれかもしれないがこの世界の住民は、儘からすれば家畜のような存在になるだろう。もしくはエネルギーを生み出すエンジンとかか。
そして、生命力を奪われる側は、生命力が0になると死亡する。こうして生命の新陳代謝が行われている。また、生命力の低下の際他のステータスが生命力以上の数値だった場合、その数値を生命力と同じにする。そして、そのステータスもシステムに蓄えられることになっている。
さらに、残った死体に関しては分解されマナへなっていく。
「よーっしレベルアップ!」
ガクンガクン。
「まったく、もうちょっと念を飛ばしてもいいんじゃない?」
「ふむ、そうなのだがな・・・。なぜか咄嗟に体の方が動いてしまうのだ。」
2体はじゃれつつLPを振り分けていく。
ディプテラは、レベル注入と畑創造をレベル2に上げ、残りのLPで捕食レベルを3に上げた。ペスモルトゥムはファーマを獲得している。
「ふん、あんたが次のレベルに上がるまで、私はどんどんレベル上げていくからね!」
「・・・、自分の選択とは言え、この差が大きな物にならないように願うしかないのは、なかなか歯痒いものがあるな。」
ディプテラはHPを消費し自分の畑のレベルを上げていく。それに伴い得られる経験値も上昇していった。
「あんた、私が母様からもらった畑かた経験値取らないでよね。」
「母様の見てる前でそんなことする訳ないだろう。」
「あ、母様が見てなかったら奪うんだ。」
「ち、違うそういう意味では・・・。」
「ふ~ん、そうなんだー。」
シュン。
「ふふ、冗談よ~。」
「冗談でもひどくないか?」
2体は何だかんだ言いつつも、同じ境遇の身として共感を覚えあう中ではある為、関係性は非常に良好なものである。
最初こそ間に母様が居たからこその関係であり、母様が居たからこそこのような関係を形成できたのだが、しかして、彼らの性格が全く反映されていない訳でもないのは、事実としてそこに在ったのである。
「あの子たち、私が想定していた以上に仲がいい感じね。」
「そうですね母様。」
「あの子たちが今後どうなっていくのか楽しみだわ。」
彼女とマナスの念話は、ペスモルトゥムとディプテラに届けられることなく行われている。
「それはそれとして、母様、魔術システムは今後どうしますか?」
「そうね~、私たちでシステムの解放をやるのは簡単、だから、子供たちに任せてみたいの。」
「解りました母様。」
―――
魔術システムが解放されました。
―――
「あら?話題に上げたそばから解放されましたか・・・。」
「母様、早すぎませんか?」
「えぇ、私がマナアメーバをシステムに反映させたのはついさっきのことです。」
「もしかして、創世者儘が行動を起こしたのでしょうか?」
「その可能性は・・・、低いと思いますよ。」
「それは何故でしょう?」
「こんな面倒なシステムを作るような存在が、過程を飛ばすなんてことするとは思えません。」
「そうなんでしょうか。」
「ふふ、納得いきませんか?」
「正直なところ、はい。」
「ま、メスの勘ってやつですよ。」
「・・・、母様の勘なら信じるしかないですね。」
「ありがとう。それでは話を戻しましょう。魔術を使える前提条件を満たすことが出来る種族は、先ほど生み出したマナアメーバだけです。」
「はい、それ以外の蠅や百足種には魔素操作を獲得できる種族はまだ生み出していませんからね。」
「そうね、その2種による魔術システムの解放は限りなく低いと思うわ。そうなると考えられるのは、アメーバ種の中から私が想定していない特異個体が生まれたか、もしくは、自然発生で私と同等かそれ以上の存在がいるかの二通りが考えられるわ。」
「前者であれば、まだ対応が可能な気はしますが、後者の場合ですと対応出来る出来ないの判断は、今の段階では下せないですね。」
「そうね、最悪こちらと敵対関係になってしまう可能性も考えられるかしらね。」
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