2.忍ばないシノビと精の者
「これはまずいな・・・」
入学からしばらくして新田神二は気がついてしまった。ボッチである事に・・・
クラス分けをされてから三々五々と友人を形成していくなか、たまたまクラスメイトと話す機会がなかったのが続いたのか、段々と孤立してしまった。
少し見回してみたが、人間の種族が多いようだ。
何とかしなければと思い、昼休憩時間に近くのグループの会話を盗み聞いてみた。
「これは由々しき事態だと思わぬか、同志よ」
っと、そのグループのリーダーらしき男子が言い出した。
続いて猿の様なやつは握り拳を作りながら
「そうですぞ!これは異な事、何故・・・」
さらにゴリラの様なやつは叫んだ。
「何故、女子はミニスカートばかりなのに、下着が見えそうな時に暗黒のモヤのような物が邪魔をして見えないのか!」
そんな男達のアホな会話聞こえてきた。
以後三馬鹿と呼ぼう。
「いやーそうっすね、私もロマンにかけるとは思うんっすよね!にゃはは」
しかし、そこには紅一点の女子も混じって談笑しているようだ。
「あやめ殿は何かご存じかな?」
リーダー格のように見える男が興奮気味に聞くとあやめは
「んにゃ、いくら同志でも仲間は売れないっす。それにロマンは夢であって、欲望の赴くまま現実の乙女の秘密を知ろうとするやつは生かして置けないっす」
笑顔だが目が笑っていなく、それを見た男子達は肝を冷やしてぞっとなっていた。
その事でかなり圧力を感じたのでリーダー格の男子が空気を変えるために咳を入れた。
「すまない、無粋な事を聞いてしまったようだ」
そうやって素直に謝った途端に仲間が騒ぎだす。
「やはり見えないぎりぎりが正義なのだ!」
「うおおおお!」
立ち直りが早く、それぞれ立ち上がって手を握り合って燃えているようであった。
「まぁ、ぶっちゃけあれは魔法なんすけどね」
秘密だと言ったあやめが即バラしたのである。
秘密じゃねぇのかよ!っと、新田神二は心の中でツッコんでおいた。
それを聞いたバカ3人はピタッと止まった。そしてスッと座り意見を出し合った。
「魔法ならまだ対処があるやも・・・そう言えば資料室で魔法を消すような物があると資料で読んだような記憶があるな」
「あれですぞ!確かブル・・・ブル」
猿の様なやつがブルブル言ってると
「ブルマ大特集か!あれは確かによかったな!うん!」
ゴリラの様なやつが叫びながら頷いた。
「それは私の趣味の資料だ!」
それに対してリーダー格が即ツッコミを入れていた。
そのアホさ加減に笑いも出ないが、あやめは違った様だ
「あははは、ブルマも悪くないっすけど、ブルーローズレインボーって呼ばれる花っすよ」
三馬鹿は
「「「SO・RE・DA」」」
っと声を揃えて言った。
「しかしブルーローズレインボー、通称ブルーレイ・・・入手は円盤のそれとは違って容易ではなく不可能だと言われてる幻の花か」
一同は天を見上げた。
「あれは確か、蕾が大量の魔力を吸って、花が開花時には虹色になってその大量の魔力吐き出して一定の魔法を無効化する・・・だったか」
それを盗み聞いていた新田神二はガタッと立ち上がったが座り直す。
一同はこちらを一瞬見たが、すぐ会話に戻ったようだ。
「ふぅ・・・」
危うく変態の仲間入りするところだったと新田神二は安堵した。
本来女の子が男と仲良くしてたら、それをよく思わない女子も多少なりといるだろう
しかし、あやめと言う女の子はニンジャらしく、特技が変装であり、小顔にする針治療、香水のブレンド、珍しい映えるネイルを教えたり、アクセ制作、裁縫など、様々な女子のテンションが上がる事を女子同士で共有したり、物を贈ったりと仲が良いため、敵に回す人はいなく、見てみぬふりをしてるようだ。
入学から短期間でクラスメイトのほぼ全員と仲良くなるコミュニケーション能力は驚嘆に値する。
見た目は、背が160あたりで、程よい肉つきのある太もも、くびれがあるお腹、小さなメロンサイズはあるであろう立派な物、肩より少し長く天使の輪と呼ばれる光の反射がある綺麗な黒髪、切長のまつ毛、瞳は黒く吸い込まれそうな黒曜石のようで、整った美しい容姿だとわかる。種族は人間であろう。
そんな事を考えていたら、いつの間にかあやめが近づいてきた。
「新田くんも女子の下着に興味あるっすか?」
さっきまであやめの容姿について妙な事を考えていたせいで、素直に答えてしまった。
「・・・正直興味はある」
女子相手に愚かな答えである事をすぐに理解したが、言葉に出てしまってからでは遅いのである。
それを聞いたあやめは苦笑いをしながら
「しかたないなぁ・・・これあげるっす」
そう言って生暖かい布生地の物を、こちらの手が開かないように握り込ませてから、ぎゅっと両手で包み込む様に握ってきたので、ちょっとドキッと感じてしまった。
そこに追い討ちをかけるように耳元で
「実は、脱・ぎ・た・てっすよ」
そう耳元で囁かれれば否応がなしにあやめのスカートの裾の太ももあたりに目がいってしまう。
その目線を見透かしてるようで、あやめはわざと一回転してスカートをふんわりさせてから、あやめの後ろにある机に飛び乗った。
しかし、スカートの回転の初速で犬の伏せより早く、机を舐める様に勢いよく体勢を崩したが、当然ぎりぎり見えないラインを攻めていた。
嬉しくもあり、残念そうに机に這う不自然な体勢からの上を見るようにあやめの顔をみると、すっごいニマニマしていた。
図られた!っと感じて手のひらにある物を見ると、その布生地はシュシュであった。
あっと、安堵すると、そのおちょくられている様子に堪えきれなかったのか、あやめは机を叩きながら腹を抱えて爆笑していた。
「あははははは、ひぃっひっひっ、ゴホッゴホッくっくっくっ」
笑いすぎな気もしなくはない。
「シュシュの脱ぎたてで騙されるなんて・・・君は美人局に気をつけた方がいいっすよ」
などと注意まで受けて悔しいが、だが、後悔はない。だから本能に従った戦利品として、そっとシュシュをポケットにしまった。
「あっ、もらうんっすね」そう言って、新しいシュシュを取り出し、ゴムで髪を束ね、ゴムと髪の間にカンザシを刺してシュシュを取り付けていた。
「それって、東の国のカンザシってやつなのか?」
珍しい物だったから気になって聞いてみた。
「そうなんっすよ、自分ニンジャなんで、ニンニン」
そう言って、ニンジャと聞いて誰もが想像するニンジャ特有のポーズをとっていた。
「ニンジャなのに顔がバレてもいいのか?」
ニンジャって大体は顔を隠して闇に潜むイメージなのに。
そんな事を考えていると
「私は顔を売る系ニンジャなんっすよ」
そう笑顔で答えた。
この時の笑顔はどうしてだろうか、寂しそうに見えて、まるで日陰に咲く向日葵の様だった。
その笑顔を見てると悲しい気分になりそうで、気になってる事を聞いた。
「そんな事よりブルーローズレインボーの事を知っていたらもう少し詳しく教えてくれないか?」
「やらしー」
「そうじゃない、どうしてもそのブルーローズレインボーから出る大量の魔力が必要なんだ。頼む!何か知ってたら教えてくれませんか?」
真剣にそう頼むと
「理由を聞いてもいいっすか?」
「人探しをしているんだ。昔、とある人に助けられて、手がかりになりそうなのに大量の魔力が必要なんだ」
あやめはつまらなさそうに「ふーん」っと言った。
「魔力の事ならマジョッコに聞くといいっすよ、繋いであげるっす」
そう言うとクラスの入り口付近の座席の女子に声をかけに行った。
が、すぐに戻ってきた。
「用があるなら自分で来いって言ってたっす。忙しいみたいっすよ」
確かに、それは道理である。
すぐにあやめを連れ立って、マジョッコと呼んでいた女子の席に向かった。
「やぁやぁマジョッコちゃん、これが新田くんっすよ」
あやめがそう言うとマジョッコはすごく不機嫌になっていた。
「はぁ・・・マジョッコはやめろと言っておるじゃろ」
「いいじゃないっすか、私とマジョッコちゃんの仲じゃないっすか」
それを聞いてマジョッコはさらにため息をついていた。
「マ・ジオ・コメットじゃ、一応初対面だから名乗っておくのじゃ、長いからコメットと呼んでくれても構わんのじゃ・・・間違ってもマジョッコと言うでないぞ!」
どう見ても小さな子供の容姿にしか見えないマジョッコに釘を刺されてしまった。
彼女は精霊族の一族らしく、精霊族はある一定で身体の成長で止まり、小さな身長、未発達な身体、尖ったエルフ耳が特徴のようだ。
耳の形からわかるように、精霊族はエルフ族と親密な関係のようで、耳だけはエルフが似たのか、精霊族が似たのかは定かではないが、両者では身体成長に開きがあるようだ。
さらに精霊族とエルフ族は容姿が優れており、彼女のように、透き通る白い肌、自然の木々と同じような新緑色の髪、エメラルドの宝石のような瞳といった特徴を持つようだ。
「それで、魔力についてじゃったか?」
そう言いながら鞄から包装されたパンを取り出していた。
「あーーーーー!」
パンを出した瞬間にあやめは叫んだ。
「っ!?、耳が痛いわ!」
あやめの大きく、耳をつんざくような声にコメットは耳を押さえながらキレていた。
「それ!町のパン屋で全然買えないやつじゃないっすか!」
「ん?あぁ、なんか助けた礼にもらってのう」
たまに見かけるが、彼女はいつも人を放っておけなくて助けてるようで、座席の横に置いてあった鞄の中から溢れるほどの量のプレゼントとお礼の手紙が入っていた。
「ちょっとでいいからちょうだいっす」
よほど珍しいパンなのか、あやめはおねだりしていた。
「マジョッコと言わなくなったら少しわけてやるのじゃ」
「断るっす!」
あやめは即答で答えていた。よほどマジョッコと言う呼び名が気に入ってるのか、珍しいパンより大事らしい。
コメットは諦めていたのか、もともとどうでもいいのか、あやめの答えに反応せずにパンを開けて食べ始めた。
それを見ていたあやめが
「手のひらサイズの四角いデニッシュ生地の中身がくり抜かれていて、くり抜かれた部分には季節ごとに変わるものが入っていて、これは底に敷き詰められたホイップクリームの上にサイコロカットされたコーヒーゼリーが乗っていて、さらに2つの白玉が入ってるやつじゃないっすか!」
熱弁し始めた。急にどうした。
そう思っていると、コメットが犬でも追い払うようにあやめに手を振っていた。
「少し分けてやるからおまえはあっちに行くのじゃ」
あやめは嬉しそうに受け取ると素早く離れた。
「うるさくてすまんのう・・・さて、本題に戻るとするかの」
あやめに紹介された手前、強く出れなかったから助かったと思いながら尋ねた。
「あぁ、魔力を必要とするアーティファクトに心当たりはないか?」
アーティファクトとはさまざまな種類があり、使用すると圧倒的な力を発揮するが、1人1つしか使用できず、2つ以上は性能を発揮できない。
1つ1つが危険物極まりないため、中央教会と呼ばれる世界の中心にある教会がアーティファクトを回収して封印して管理している。
過去に個人所有のアーティファクトを強制的に回収しようとしたが、大惨事が起きた為に、回収は寄付と言う形で見返りに金銭が得られるシステムになったようだ。そのため、個人所有には咎められなくなった。
コメットが「ふむ・・・」っと、顎に手を当てて少し考えた後に頷いた。
「何個かあるにはあるが、それがどうかしたのじゃ?」
「その中でも喋ったりするアーティファクトについて知らないか?」
「喋る・・・じゃと!?なんじゃ!それは!」
コメットは一瞬驚いたが、目をキラキラさせて興味津々に聞いてきた。
どうやら知らないようだ。
コメットが驚いたのには理由がある。本来アーティファクトは兵器であり、そんな機能など搭載されている事などはない。
「妾はこう見えてアーティファクトには目がなくてのう、見た目や構造を見たり解析するのが大好きなのじゃ!しかし、喋るアーティファクトなどと言う物は見たことが無いのじゃ、それはどんな見た目で!構造で!性能は!」
コメットは興奮した様子で鼻息荒く捲し立てて、身体を前のめりに迫ってきた。
整ったかわいい顔が急に迫ってきた為、新田神二は気恥ずかしくなって思わず顔を逸らしてしまった。
しかし顔を逸らして引いた分だけコメットは迫って来た。
「近い近い近い」
反射的に新田神二は手でコメットを押しのけようと、何も見ずに勢いよく押した。
「ひゃっん!?」
押したと同時に、お子様体型から出るはずのない普段のロリババアボイスではなく、色気の混じったかわいい声が聞こえた。
「!?」
手のひらには小さな弾力が伝わってきた。
小さな弾力だけども確かな柔らかさがあり、押せば押すほど柔らかく沈んでいくが、手を離す時はもちもちの弾力がついてきて離れずに、ふわっふわっな触り心地である。
「すまん・・・」
素直に謝った。
何も見ずに押したのが良くなかった。良くなかったと言っても、新田神二が感じるものは嬉しさ3割、申し訳なさ3割、気まずさ4割のぐあいである。
「おぉぅ、妾も悪かったのじゃ」
「それにしても不意にとはいえ、妾があんな声を出せるとはまだまだいけそうじゃな!イケイケじゃな!」
どう答えようか迷っていると、遠くから声が聞こえてきた。
「いやいや、もう手遅れのロリババアだろ!だがそこがいい!」
遠くから一連のやり取りを見ていたであろう三馬鹿のリーダーが親指を立てて良い笑顔で言い放った。
すると、コレットの方から、ぼっ、っと火がつくような音がなった気がする。
「我らが魔の始祖にして、魔を統べる王よ。生きる事から逸脱した者を滅する魔力を我に貸し与え給え、我は王の槍であり、我は王を護る者なり、我は王の代わりに罰を与える者なり。」
「紅蓮よ・・・紅く、赤く、さらに黒に塗り替えて我が魔力を喰らい爆ぜよ!」
杖を構えたコメットは詠唱と同時に魔法陣を完成させていた。魔法陣に魔力が一瞬で巡り、力が収束していく。
詠唱!?こんなところでか!
「たっ、退避ー!!」
気がついた時には既に遅く、退避を言うのが精一杯であった。誰一人動くことができずに、無慈悲の一撃が繰り出される。
「プロミネンス・ゼロ」
※続きは鋭意製作中と言う名のさぼり
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