時が止まった世界

ここはとても暗く、広さはわからないが、広くも狭くもない気がする。そして何もない空間。

一歩でも歩みを進めたら沈んでいきそうな底なし沼だと感じる。なぜそう感じるのかはわからない。

例えば、目の前に沼があったらどこまで沈むかもわからないけど、沈むだろうと感じる自然な感覚を身体が、脳が、そう訴える感覚なのだ。

そこに私はいつから居るかわからないけど座り込んでいた。

気分が悪いのか酷く眠い、泥のように沈んでいきたい・・・

そう感じていたら、いつの間にか目の前に酷く荒い映像が映し出されていた。

誰が映したのか、そもそもどんな物か魔法で映したのかはわからない。

ただ私には関係ないと眠り込んだ。

ふっと気がつくと映像は続いていた。映像は砂嵐に近いけど、人物は認識できる荒さではある。そこには少女と妙な格好をした少女?女性?が映っていた。

何かを話し合っているけど、その言葉がわからない。

言葉がわからないのは、耳には届いてるけど、意識が理解するのを拒否しているからだろう。

その会話に興味がなかったので私はまた眠りについた。

しばらくしてまた映像を見ると、少女が何故か映像の一面が真っ赤になる程の赤色の何かを、映像に向かって掛け続けながら語りかけている。

私は赤色が嫌いだった。

理由はわからないけど、赤色が酷く嫌いだった。

赤、緋、朱、どのあかもなにもかもが嫌い。

不快になり逃げ出そうとした。

しかし、その赤色は暖かく、赤色を掛ける少女の口調は優しく語りかけるものだった。

不快な気持ちが薄まっていくのを感じて、私は逃げるのを諦めて眠りに落ちた。

次に気がついた時には映像に映っていた少女が隣に、沼の上に立っていた。

驚きはなかった。驚くよりも、誰が居ようが、何をしようが、興味がなかった。

興味がなくて目を逸らすと、映像には妙な格好の女性が寂しそうにしていた。

すると、隣に立っていた少女が何かを話しかけてくる。やはり言葉は理解できない。

少女は苦笑いしながら私の手を取って、ダンスを踊る様に私の手足を動かし始めた。沼の上だと言うのに・・・

私は酷く眠かったから抵抗をしなかった。

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