モンスターサウンド!
根谷つかさ
第一話〜激突!
──バンドやろうよ!
と、幼馴染の
なにせ戸乃上は可愛い。幼い顔立ちであれどロリではなく、天真爛漫に振る舞うがスタイルが良いので、色んなところがまぁよく動いて、見ていてとても癒される。あいつが唐突に『私ね、実は天使なんだ!』と言い出したら余裕で信じる。そんな天使からの誘いならば、全力以上で答えるのが自然だろう。
学校後の夜の街はどうにも浮ついていて、あらゆるネオンが
路地裏。エロい響きだ。バンドを始めてモテモテになったら、1人とくらい連れ込みからの路地裏でイヤらしい事をしたいとまで思う。
路地裏から出ると、繁華街の隣にある道とは思えないほどに人が減る。この通りには店が無いから、丁度台風の目よろしく静かになるのだ。
事故は……いや、事件はそこで起きた。
俺より少し年下か同い年くらいの女の子(可愛い)が、信号の無い横断歩道を渡り始める。そこへ少し先から向かってくる車の運転手が、余所見をしているのが見えた。
その瞬間に意識が覚醒し、世界がスローモーションになる。
バレットタイム。
この感覚を俺はそう呼んでいるが、普通の人間よりも少し感覚が鋭くなるだけだ。
少女へ向かって駆け出す。運転手がクラクションを鳴らし始める。しかし少女はヘッドフォンをしている(可愛い)せいで気付かない。
完全には間に合いそうに無い。だから俺は、少女に飛び付いて、抱き締めて、車との間に割って入った。
そして走る衝撃。身体中に迸る異常なまでの電気信号に、少女を抱き締める感触が狂ってしまいそうだった。
守らなければ。
強く抱き締めてはいけない。抱き潰してしまうから。
手放してはいけない。この衝撃が彼女にも振られてしまうから。
そして訪れる浮遊感と、またも走る衝撃。
何が起きているのか把握も出来ず、けれど少女の感触だけはしっかりと保つ。
全てが止まって、俺もしばらく動けなくて、けれど俺の腕の中でモソモソと動く温もりに、生きている事だけは実感していた。
「お、おい、大丈夫か!!」
運転手が降りてきたのか、通行人が集ってきたのかは知らない。
少しずつ身体に力が入るようになって、のっそりと起き上がった。
「あ、あの……」
今も俺の腕の中に居る少女が、怯えながら、震えながら俺を見る。
大丈夫なのか、と、その目が問うている。
美少女のためなら、命だってかける。それが俺だ。
だから俺は微笑んで、かっこよく、こう答えるのだ。
「勿論、大丈夫だよ、子猫ちゃん」
良い演出だ。空気に酔いしれるには充分な環境と言える。ならばここは欲張るべきだ。
もう一言。もうひと押し行ける!
「君が無事なら……おれはぼふ」
全然無理だった。志半ばにして、俺の意識はそこで途絶えた。
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