特別企画 リツコとリツコ
司会者)本日は出産間近な大島リツコさんにお客様を連れてまいりました。
リツコ@現在)誰を連れて来たの?
司)それでは御登場願いましょう。『少し未来のお話』からおいでいただきました大島リツコさんです。
ドアが開き部屋へ入って来たのは少し未来の大島リツコ。
リツコ@少し未来)こんにちは。ああ、二〇一九年……懐かしい……。
リツコ@現在)にゃあぁぁぁぁ! 私だぁぁぁぁぁぁ!
司)ややこしいので現在のリツコさんは『現』、少し未来のリツコさんは『未』とさせていただきます。
現)よろしく、なんか変な感じだね。
未)ふふっ……そうね。
司)コホン、では改めまして、二十数年後の世界からのゲスト、大島リツコさんです。
未)こんにちは、昔の私。
現)は~ビックリした。一見変わらないけど、よ~く見たら歳を取ってるわね。
未)そりゃそうよ、二十何年経ってるんだから。
現)えっと、何歳になるんだっけ?
司)未来のリツコさんは五十代半ばです。相変わらず高嶋高校で勤務しています。
現)もしかして真旭に移転してる?
司)高嶋高校は少し未来の世界では移転していますね。
未)ええ、令和の初めごろに起こった事件が原因でね。
現)もしかすると大麻事件のせいかな?
大島サイクル世界では令和になった頃、今都町で大麻栽培組織の一斉検挙が行われています。※フィクションです
未)ええ、子供が小学生の頃だったかな?
司)まだ赤ちゃんはお腹の中です。大島夫妻は生まれてからのお楽しみとの事で性別は伏せています。
現)そう、名前は『レイ』にしようって思うんだけど。
未)名前は『レイ』よ。元気に社会人してるわ。私のゼファーに乗ってツーリングに出かけたりしてる。
司)さて、せっかくですから何か摘んだり飲んだりしながらお話しましょうか。お二人ともリクエストはありますか?
現)私は妊娠中でお酒が駄目。ノンアルコールビールと何か脂っこくないもの。
未)私は……梅酒はあるかな? 中さんの漬けた梅酒と……蒸しパンって出来る?
司)出来ますよ、取りあえず言ってくれれば何なりと……はいはい、蒸しパンは今から蒸すそうです。
未)ああ……蒸しパンは久しぶり♪
現)どうして? 中さんは「すぐ出来るから何時でも言うて」って作ってくれるけど?
未)それは……まだ知らない方が良いかな?
司)そうですね、あまり未来の事は知らない方が良いでしょう。さて、蒸しパンが出来上がる前に飲み物が来ました。
現)先に乾杯しよっか?
未)そうね……ああ……キレイな色(と言いながらグラスの梅酒を眺める)
司)では、時空を超えた出会いを祝しまして、乾杯!
現・未)「かんぱ~い♪」(同じ声だが未来のリツコの声は若干低い)
未)もうすぐ出産ね、幸せいっぱいだったなぁ……暖かなお家で甘えて、モコモコになって作業場で中さんの傍に居たり……懐かしいなぁ
現)おかげさまで。未来の中さんは元気? そろそろ引退の歳じゃないの?
未)……。
司)未来の事はあまり知らない方が良いので……。
現)子供が社会人になったって事は、子供は独立してまた二人でラブラブだよね?
未)……(司会者とアイコンタクトをして)私たちは永遠にラブラブよ。
未)ああ……美味しい。中さんのお酒か……会いたいな……。
現)私は未来の中さんに会いたいな。お互いに呼んでみる?
司)そうしたいところなんですが、タイムマシーンが一人乗りだから駄目ですね。
未)ナイスアシスト
現)何か言った? まぁいいや。
―――――未来の高嶋市について―――――
現)ところで、話せない事が在ると思うんだけど、未来の高嶋市はどう? 高校は今の段階で真旭に移転を検討し始めた所。大麻事件が有ったから今都に教育施設を置かないようにって。
未)高校はともかく官公庁が新高嶋市の市庁舎周りに集中してる。治安が悪くなって旧高嶋警察署は今都警察署に、真旭に新高嶋警察署ができたよ。晶ちゃんはいないけどね。
現)居ないの? 異動?
未)結婚して二人目が出来てからは大津に異動。交流は今でもあるよ。
現)おお~! そうか、薫ちゃんの赤ちゃんだ。
司)未来の世界では葛城さんは浅井さんと結婚して大津市在住です。
現)『新高嶋市』って言ってたよね?
未)今都・蒔野が高嶋市から離脱して『今都市』に、朽樹は独立した。真旭・安曇河・高嶋の旧三町が合併して『新高嶋市』。新高嶋市と朽樹町が協定を結んで『湖西広域連合』として大規模施設を共同で運営してるよ。
司)今都市は独立後に財政破綻しています。
現)らしい話だよね。
未)詳しくは言えないけどね、金ちゃんが商売でちょっち困ってたかな?
司)億田金融は不動産業メインの『億田不動産』として活動しています。今都市財政破たんの時に地価が落ちて出た損失を億田金融の資産で補てんしました。金融業を縮小したのはその頃です。
現)やれやれ、金ちゃんも大変だ。
未)金ちゃんには色々とお世話になったのよ。大事なお友達ね。
―――――未来の大島サイクル―――――
現)私が五十代半ばって事は中さんは七十歳手前かな? そろそろお店の後継を考えなきゃだね。子供が継ぐのかな?(と言いつつ焼き鳥を頬張る)
未)店は続いてるよ(と言って蒸しパンをちぎって食べる)
司)店は繁盛しています。
現)何だか歯切れの悪いコメントねぇ。
未)未来の事を全部言うと歴史が変わっちゃうもん。もしかしたら私が消えちゃうかも。
現)「ワオ! ドク、ヘヴィだね!」「何だとマーティ!」
未)ところで、この蒸しパンって 中さんのお手製よね? もしかして会える?
司)会うのはチョット
現)(被せる様に)いいよ、中さ~ん、こっちに来て~!
中)あいよ~(ガチャリと戸が開いた)うおっ?! お義母さん来てたんですかっ! お久しぶりです。いつ来たんですか、言ってくれたら迎えに行ったのに」
司)ちなみに未来のリツコさんは母と、中さんから見て義母とソックリです(小声)
未)中さん……元気だった頃の中さんっ! ううっ……グスッ……。
中)お……お義母……さん? いや、お義母さんじゃないっ?!
未)中さんが……中さんが入院してから私っ……私は必死でっ……必死でお店をっ……。
中の胸に顔を埋めて泣きじゃくる未来の自分。リツコは未来の世界で中が存在しない事を悟ったのだった。
特別企画 リツコとリツコ 一旦終わり。続きはまた今度。
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