220話の続き

※大島サイクル220話を先にご覧ください

リツコがゼファーの下敷きになったのが夢では無くて現実だった場合です。


「リツコさん…リツコさん…行こう…」


中さんの声が聞こえる。私にもお迎えが来たみたい…

中さん…久しぶりに撫でれ…ギュッとしてから撫でれ…


ここは滋賀県高嶋市。かつて小さなバイク店が有った。その名は大島サイクル。


店主の大島が整備したバイクには魂が宿ると言われ、そのバイクに乗った者は皆笑顔になったそうな…だが、一人だけ泣く者が居る。店主の大島に先立たれた人生の伴侶であるリツコだ。だが、それも今日で最期となる。


「私は大島リツコ。バイクの下敷きになってこの世を去る……」

「やっぱりもうちょっとだけそっちに居といて…」


「え?」


眼を開けると白い景色が広がっていた。


「あの世?中さんは?」

「15年以上前に亡くなったでしょ?リツコ先生、何言ってるの?」

「大丈夫?」


心配そうに本田夫妻が私の枕元で顔を覗いている。

どうやら夢だったらしい。でも、久しぶりに中さんの声を聞いたなぁ…


「あら、お二人さん、どうしたの?」

「どうしたもこうしたも無いで!ゼファーの下敷きになってたんやで!」

「ご飯作ったから持って来たんや…痛い所は無い?」


ふむ、どうやらゼファーちゃんは私が乗るには重すぎるらしい。

私も歳を取ったものだ…。


「もう無理か…本田君、ゼファーちゃんはどうしたら良いかなぁ?」

「中古車で売るってレベルじゃないですよ!博物館ものですよ!」

「博物館に聞いてみたら?喜んで引き取ってくれるよ?」


…とまぁ、こんな感じで話が続き、リツコの愛車のゼファーは博物館へ納められることになりました…なんて考えています。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る