九等星「死ぬ」

 大きな音が城に響きました。


 


 音は、大広間の方からしていました。


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 大広間についてみると、そこには魔王と、四人の人間がいました。


 四人の人間の内、一人は首から上がありませんでした。死んでいました。


 そして、魔王も、全身に深く傷を負って死んでいました。血が出ていました。


「お前は」


 人間の一人が口を開きました。


 彼は青い鎧に身を包み、長い剣を抜いたままでした。


「わたしは、人間」


 私は答えました。


「メリー。本当か調べてくれ」


「う、うん。わかったよ、勇者」


 メリーと呼ばれた女性は、長いステッキを縦に振ると、呪文を唱え始めました。


 次に、私の体が、青い光に包まれました。


「……本当みたい」


「そうか」


 剣を持った男……勇者は私の方を見て言いました。


「お前は、どうしてここにいる」


「話すと長くなる」


「じゃあいい。質問を変える」


 勇者は問いました。


「お前はそちら側だったのか、こちら側だったのか。どっちだ」


「魔王か人間かって事?」


「そうだ」


「……」


 私は考えました。


 そして答えました。


「じゃあ、魔王側」


「そうか」


 勇者は冷たい目でこちらをずっと見ています。


「お前に我々と戦う意思はあるか」


 勇者はそう問いました。


「ない」


 私はそう答えました。


「そうか。じゃあ、我々の横を通って外に出ろ」


「え、いいの? 勇者」


 勇者の言葉に、魔法使いは疑問を口にしました。


「いい、無益な戦いは控えるべきだ」


「でも……」


「いいんだ」


 勇者は魔法使いを制しました。


「ねえ」


 私は問いました。


「あなたたちは、なんで魔王を倒そうと思ったの?」


「……」


 場に、長めの沈黙が降りました。


 しばらくして、三人の人間はアイコンタクトで、言ってもよい。という確認を共有してから言いました。


「俺は両親を魔物に殺された」


「私は生まれた時から魔王を倒す事を期待されていたから」


 両刃刀を持つ。いままで無口だった青年も答えました。


「俺はこれしか道がなかったから、だな」


 生きている全員が答えました。


「そう」


 私は言いました。


「ありがとう」


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 私は三人の横を通って、大広間を出ました。


 三人はそれぞれの武器を、ずっと私に向けていました。


 外では、綺麗な歌声の鳥が鳴いていました。

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