六等星「終わり」
ここは魔王城の天体観測室です。
「ねえ魔王」
「どうした、娘よ」
「星の見えない黒いところには何があるの?」
「星があるよ」
「黒いのに?」
「見えないだけさ」
「へえ……じゃあさ」
娘は望遠鏡を見つつ聞きました。
「宇宙の終わりって星なの?」
「いや? 宇宙は今も膨張を続けているんだ。とっても速いスピードで」
「大きくなってるの」
「そうだ」
「その終わりはどうなってるの」
「それは誰にも解らない」
「無から有になるのがわかるのに」
「彼らは解らないって言ってるね」
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「ねえ魔王」
「どうした、娘よ」
「宇宙は今も膨張を続けているんだよね」
「そうだ」
「宇宙ってさ、どこにも星があるように思えるんだけど」
「あるな」
「膨張を続けてるってことはさ、終わりには星なんてないの?」
「あるぞ」
「どうしてあるの」
「宇宙の広がるのにつれて星々が引っ張られるから。らしいぞ」
「へー」
「諸説はあるがな」
「じゃあさ」
「なんだ」
「段々と宇宙って過疎になってるんだね」
「そうなるな」
「人間みたい」
「人間みたいだな」
「本当に、宇宙って人間に似てる」
「似てない所もいっぱいあるけどな」
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「人間はいつか死ぬ」
「種族的にも、存在的にも、だろう」
「ということは星々も……宇宙も。いつかは終わるの?」
「終わるだろう」
「何が終わりなんだろう」
「さあ」
「元々、宇宙は何もないところから生まれたんだよね」
「そうだ」
「ということは、何もなくても、何かは生まれる可能性はある」
「100%は無いからな」
「じゃあ、終わりって何だろう」
「さあな」
「じゃあ、人間は終わらないの?」
「終わるぞ」
「そっか。全員?」
「たまに終わらないやつもいる」
「そうなんだ」
娘は天体観測室の扉に手をかけました。
「じゃあ、今日の話は終わりだな」
魔王は言いました。
「そうだね。おやすみ」
「おやすみ」
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