妹の夜更かし

しゃりおっと

本文

--23時


「もう遅いから、テレビ消して寝なきゃダメだぞ」

「……」フルフル

「面白い? ニュースなんて見てて……」

「……」


最近、ゆながなぜか夜更かしするようになった。

もうすぐ幼稚園の卒園式だし、大人ぶりたいんだろうか。


不意に、手に持った黒いドリンクを飲む。……コーラなんて家にあったっけ?


「って、それコーヒーじゃないか!?」

「……」ビクッ

「だめだろ? こんな遅くにコーヒーなんて飲んだら」

「…………ごめんなさい」ペコリ


俺は、コーヒーを取り上げる。

そりゃ、夜遅くにこんなもの飲めば寝れなくなるわな。

……あれ、でもゆなってコーヒー飲めたっけ?


「苦くなかった?」

「……にがかった」

「じゃあ、もう飲んだらだめだぞ?」

「……」フルフル


ゆなが首を横に振る……何で?


「苦かったんだよね?」

「……」コクリ

「苦いの好きだっけ?」

「……」フルフル

「じゃあ……」


「……もうすぐ、そつえんしきだから」


……なるほど。


「それで、大人になりたくて?」

「……」フルフル


あれ、違うの?


「……ひーちゃんやくーちゃんと離ればなれになりたくないもん」

「? それでなんで夜更かしを……あ」


もしかして……


「寝なかったら朝が来なくなって、そうすれば卒園式の日が来ないと思ったり?」

「……ちがうの?」


「……ぷっ!」

「……?」パチクリ


思わず噴き出した俺を、ゆなが不思議そうに見上げる。


「ごめんごめん! ……まぁ、寝ても寝なくても朝が来るのは変わらないよ」

「……そうなんだ」シュン



「だから、卒園までにもっともっと仲良くなって、それからもずっと一緒に遊べばいいと思うよ」


「…………そっか、うん」



少しは元気が出たみたい。


「それじゃ、もう遅いからねよっか?」

「うん」


とりあえず、これで夜更かしはしなくなるかな。





その後・布団にもぐって



「……ぜんぜんねむくならないよ?」

「あー……そういえば、さっきコーヒー飲んじゃったからな~」



ゆながコーヒー飲む前に止めるべきだった……。


おわり

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