虹色のシャボン玉

大樹海

虹色のシャボン玉

 昼頃、スーツを着た男性は河川敷沿いの道を溜息をこぼし、最近会った出来事を思い出しながら歩いていた。

「は〜、最近はついてないなぁ〜。仕事ではミスして怒られて今日は帰れとは言われるし、妻とは喧嘩するし、嫌なことばかりで落ち込むよぉ。。。」


 雲行きが怪しい中、下を向きながら、私はそうボヤき歩いていると顔の前を何がゆっくりと通りそれが私の頭の上まで上った時顔に水飛沫のようなものがかかった。ぱっと前を向くと沢山のシャボン玉が目の前の道に浮かび上がっていた。その瞬間に高校生時代の事を思い出した。

         *

 「は〜、勉強も彼女とも上手くいかねぇなぁ〜。このままじゃ受験も上手くいかねぇよ。」とボヤきながら昼の散歩の帰り道を歩いていた。


 私が公園に差し掛かった時公園からシャボン玉が飛んできて目の前で弾けた。ぱっと公園の方を向くとスーツを着た40代ぐらいの男性が公園のベンチに腰を掛けながらシャボン玉を吹いていた。

 その時、私は何故か不思議な衝動に駆られて話しかけたくなって話しかけてみた。

「あの、何故そこでシャボン玉を吹いているのですか?」と私が聞くと男性はこちらを見て穏やかな笑顔でこう言った「それはね、嫌な事があったからだよ。嫌な事があるとこうして光が出てシャボン玉が虹色に見える日に来て吹いてるんだよ。浮かんでいる虹色のシャボン玉を見ていると嫌な事が消えて行って明日も頑張ろうってなるんだ。」

 そうかなと疑問に思ったので「虹色のシャボン玉は綺麗ですよね。でもそれが浮かんでいるのを見ているだけで心が嫌な事が消えますか?」と聞いてみた。その男性はハハハハハと笑い「青年よ私が言っているのは浮いているシャボン玉ではなく破れたシャボン玉だ。私はねこのシャボン玉に自分の気持ちを投影してるんだ。そうして見ると破れた時に自分の中の嫌な気持ちが1つ1つ消えていくような気がしてね。おっとそろそろ帰るね。シャボン玉液がまだ少しだけだけど残ってるから良かったら吹いてみたら?じゃあ、またね。」とスタスタと歩いて行った。


 男性が行った後1度吹いてみるかと思いシャボン玉を吹いてみた。最初はやっぱりただのシャボン玉と思っていたがよく見ると昼の明るい光に照らされたシャボン玉が虹色の膜を纏っている。綺麗な虹色の膜はシャボン玉が上に昇っていくに連れて形が変形し、グチャグチャになっていく。まるで今の自分の心の中の様に。そして、シャボン玉が弾けていくに連れて心の中のグチャグチャも少しずつ消えていく様に感じ、気持ちが楽になった。


 そして、シャボン玉を吹き終わった時「そうだよな、嫌な事があったからって落ち込んだままじゃダメだよな。」と言いまた衝動に駆られた様に動き出した。

         *

「シャボン玉か懐かしいなぁ、けど今の空は曇り。シャボン玉も虹色じゃなく鈍色だな。」と言い溜息をついた時雲の隙間から光がが射し込んだ。すると飛んでいたシャボン玉達は鈍色だったのが虹色になって弾けていく。それを目の当たりにした瞬間、私は目を輝かせた。すると、後ろから「あら、何でこんな所にいるの?まぁ、察しはつくけどね。良かったら久し振りに一緒に今晩のご飯買いに行かない?」と聞き慣れた穏やかな声が聞こえて後ろを振り返ると妻の姿があった。妻を見た瞬間「ごめんね。あと、喜んで!」と穏やかな笑顔と言葉が自然と零れた。

 

 2人で歩いていると妻が浮いているシャボン玉を見て「懐かしいわねぇ〜、高校の時もこんな風に喧嘩してて、そしたら急に彼方が急に電話して来て謝ってくれて、仲直りした後に何があったのか聞いたらシャボン玉の話をしてくれたよね。あの時はつい笑っちゃったなぁ〜」と笑いながら話した。

 「そうだったな、あの時は笑い合ったな」とこちらも笑いながら雲がなく晴れ渡った空の中虹色のシャボン玉が破れた水飛沫が光に照らされて作り出された虹が帰り道を歩く2人の上にかかる。

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虹色のシャボン玉 大樹海 @dai1123

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