第10話「マホウのジカン」

「違う違う!そうじゃないの!もっと、こうよ!」


ルナの魔法教室から1日経って次の日の真昼間。

俺とルナの2人は昨日の平野で、ついに魔法の特訓に励んでいた。

テトは仕事の依頼があるそうで、鍛冶の仕事部屋に籠っているため、今日は参加できないそうだ。


まだ日の出から時間の立たない穏やかな朝にルナに叩き起こされた俺は、寝ぼけたまま平野に移動して、ルナの水魔法で全身をずぶ濡れにされて目が覚めた。そしてアリーが即席で作ったタマゴとレタスのサンドイッチと冷たいミルクをルナと一緒に平らげてからはずっと魔法の特訓。

俺は昨日の魔法教室とやらで自分の属性が雷である事を知り、魔法の発動のやり方。その雷属性の魔法の特徴などをパパッと教えてもらい、雷属性魔法の基本技雷銃の特訓をしている。


「こうだって言われても分かんねーよぉ」


少し雑というか、本能的に説明しているからかイマイチ分かりにくい。


「君の器の中にある魔力に雷属性のイメージを与えるの。そして掌に意識を集中させるのよ」


「器の中の魔力...」


イメージするのは1つの器。

その中にある光り輝く魔力。

そして雷属性のイメージ。電気でいいかな?


「そうそう、いい感じよ!頑張ってアイル!」


そして掌に意識を集中。

器の中の魔力が掌に流れていくようなイメージを...。


「.....バチバチ....」


掌に微かな痺れを感じる。昨日も似た感覚を味わったな。


そして、流れた魔力にさらに雷のイメージを与えたその時。

掌に物凄い痺れを感じる。


「わぁ!アイル!とりあえず魔法の発動成功よ!」


「そ、そう、なのか?」


そういって痺れに慣れてきた右の手を見ると、手に電流が迸っていた。


「うを、すげー。これが魔法」


「そうよ、これが魔法。それは雷属性の基本の基本で体に電気を纏わせる帯電チャージね」


帯電チャージか!どうだルナ!俺だってやればできるんだぜっ!」


そう言ってルナにドヤ顔をしてやると


「何言ってるのよ。だからそれは基本も基本だって言ってるでしょ?私は全身に帯電チャージをかけられるわよ?」


そういって一瞬にしてバリバリとルナの体に電流が走る。俺のとは桁違いの魔力だ。俺でも見て分かる。


「それで雷銃サンダーボルトってのはどうするんだ?」


「そうね、雷銃サンダーボルトは雷を纏った魔力の塊を体の一部分から放出する魔法よ」


そう言ってルナは掌を掲げ中指と人差し指だけを伸ばして空に向かって魔法を発動した。


「汝、我魔力をもって応えん!雷銃サンダーボルト!!」


そう叫んだルナの指が光だし、電気を纏い、雷の光線が放出された。

ルナの雷銃サンダーボルトは空高くまで昇っていき、雲を割って空へ消えていった。


「す、すげぇ!あんなに強力のが撃てるのかよ!ルナって凄いんだな!」


「そ、そんな事ないわよ。基本魔法なんだし、このくらい誰だって使えるわよ」


少し嬉しそうな顔をしながらルナは謙虚にそう言った。

こほん。と1つ咳をしてルナは話を戻した。


「発動の仕方はさっきの私のように手の人差し指と中指以外の指の握って。そして二本の指の先端に意識を集中させて、さっき帯電チャージさせたようにしてみてよ」


「よし、分かった!」


イメージの器から流れる魔力を指先に集中させる。すると、人差し指と中指の二本だけに帯電する。


「そう、その調子よ。そして、帯電チャージしている状態で魔力を指先に溜めるの。ある程度溜めたと思ったら、そうね。あそこの木に向かって撃つのよ!」


ルナの指示通りに指先にさらにイメージを集中させる。

指先に流れる魔力。魔力が溜まっていくほど集中が途切れそうになるのを必死に堪える。

指先を南西にある少し太めの木に照準を合わせて...放つ!


「ズバァァァァァン!!!」


耳を塞ぎたくなるほど鳴り響く轟音と共に、閃光が照準の方向に向かって進んでいく。

アイルの放った雷銃サンダーボルトは軌道を外し、2つ左の木に当たった。

しかし命中した木は当たったところが少し剥げただけで、音の割には威力はあまりなかったようだ。


「あー。まぁ、初めて撃てたんだから上出来よ!」


「フォローになってないよ...」


「でもねアイル、一朝一夕に強力な魔法は撃てないわ!もっと凄いのを撃ちたいのであれば、あなたの好きな日々鍛錬を欠かさない事ね」


「やっぱりそうだよなぁ〜」


少し残念だが、ルナの言う通りだとアイルは心の中で特訓だ!と、言い聞かせているその時


「アイル!!」


村の方向から一人の男が顔を青ざめながら走ってきた。どうやら村の野菜屋のオービックらしい


「あ、オービックのおっちゃん!どうしたんだそんな顔して」


俺の前までやってきたオービックは息を切らして俺の方を荒く掴んで言った。


「村の子供達と、アリーちゃんが拐われたんだ!」


「なんだと!それは本当か!?」


「あぁ。ついさっき野菜を買いに来たアリーちゃんが俺の目の前でワーウルフに襲われて、森の中に連れて行かれてしまった!」


「アリーが...」


「それは大変です。急いで助けに行きましょう!」


「そうしたいんだが、アイル。村長がお前を呼んでいる!急いで行くんだ!」


「爺ちゃんが?分かった、すぐ行く!」


そう言って俺とルナとオービックは村の中心にあるフォクス村長の家へ向かった。



この時の俺はまだ、あんな結末になるとは思ってもいなかった。

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