鴨檻先生暴行事件での暗躍#05

 給食時間、ようやく大江と滝梨が戻ってきた。4時間近く説教されて、さすがにかなり堪えただろうと思って目を合わせないようにチラッと二人の方を見る。二人とも黙ってはいるが……。チラッ。ん?思わず二度見してしまう。沈んだ顔でもなく、怒った顔でもなく、無表情でもなく……少し笑っている。そのまま見ていると若干手前にいる大江がこちらを見てきた。ヤバい!!そう思って慌てて顔を背ける。しかし間に合わなかった。

「ん?あいつどうしたんだ?ニクロダとか言う転校生」

「新黒田だろ。いくら転校生だからと言って名前間違うなし」

 そう言って滝梨が笑う。

「さっきあいつがこっち見てたような気がしたんだよね。だからそっち向いたら慌てて顔背けてさ」

「それ絶対クロっしょ」

「で?ニイクロダ、どうしたんだ?」

 大江からいきなり呼ばれてびっくりする。こういうのはどう対処したらいいのだろうか。正直なことを言ったら何されるか分からない。無視するのも先が危ない。考えが煮詰まって由香の方を見る。すると何も言わずに小指で大江たちがいる方向の壁を指差している。その壁には時間割などが貼り付けられている。と、いうことは……。

「あ、えっと明日何があるかな、って思って時間割を」

 平然を装って言う。

「ふ〜ん……。あ、そうだ!!」

 大江がそう言って何かを書きだす。そしてシャーペンを置いたかと思うとこちらへ歩いてきた。

「……誰にも見せるなよ。見せたことが分かったら病院行きだと思え」

 そう言って先ほどの紙を渡してくる。そこには……『ホームルームが終わったら武道場と体育館の間に来い。来なかった場合も病院行きだ』と書かれていた。

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