【Devastated】

 ああ、懐かしい日々よ。いつの日か帰ってくるだろうか。

あの美しかった毎日は、いつの間にか消えていたんだ。誰にも気づかれずに。




 ホタルブクロの花が、私の前に凛として咲いていた。

綺麗な赤のような、紫のような、大人らしい色をしていた。


「もう僕は、君たちに協力しない。君たちがどうなろうと僕の勝手だ」


次の日、ホタルブクロの花が枯れていた。美しい赤紫は醜い色へと変わっていた。




 僕の横には、紅葉がいくつも散り落ちていた。とても綺麗な赤色だ。


「こんなものいらない。写真も、日記も、全部全部」


横にあった紅の葉は、風に吹かれ飛んで行った。新しく降り立った先は、

枯葉や、汚い汚染物質で汚れきったどぶの中であった。



 

 僕の後ろからは、爽やかで優しいラベンダーの香りが漂っていた。

どこか懐かしい、そしてどこか虚しい、そんな香りだった。


「もう嫌だ、僕はもうなにもわからない。何もかも…」


あの日のぬくもり、思い出せるかな。そう思っていた時は、もうあの懐かしい

香りはどこかへと消えてしまった。





 「なあ、ルピナスの花よ。私は、なにがいけなかっただろうか」

答えるはずもない花に私はそれでも花に問い続けた。もちろん答えなどしない。

それでも私は答えが知りたかった。私にはもう答えを聞ける相手などこれくらいしかいないのだ。





 「最後に聞く。ルピナスの花よ…私はなにがいけなかったのだろうか」

ルピナスは手元から離れ、泡沫のように私の視界から消えていった。



 私のそばには、ワスレナグサがそっと寂しそうな、そんな顔して───。

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