【石像の仮面】
ちょうど1週間前に、僕の小さな町に美術館ができた。なんでこんな小さな町に?という思いもありつつ、僕は将来芸術家を目指してることもあって内心は素直に喜んでいた。
「今日は1日空いてるから、どんな展示がしているのか見に行ってみようかな」
持っていく荷物を準備しながら、僕は美術館のホームページをスマホで探す。
「◯◯美術館…っと、あった。えーっと…、色々あるんだなぁ」
そこには「〜〜展」というのがいくつもあった。複数の展示が一度にできるということは、意外と自分が思ってた以上に美術館の規模は大きいのだと知った。なおワクワクしてきた。入場料を払えばどの展示に行っても料金が追加で発生しないらしいので、時間が有り余ってる僕は全部見に行こうと決めた。…とりあえず腹ごしらえをしようと、カップ麺を用意し、水を入れた鍋に火をかけた。
「予想してたより大きいな…」
この町にこんな土地があったのかと思うくらい───というか、いつこんなでかい建物建てたんだ?と疑問に思うくらい立派な美術館だった。僕は事前に調べておいた美術館の敷地内マップを確認し、入り口へと進む。入り口へ行く途中にも、大きな噴水や、外でイベントを行う用のステージやライトなどがあった。──歩いて3分。やっと入り口に着いた。自動ドアを通ると、入場券を買う機械があった。よく見ると展示の入り口も、全部駅の改札みたいな感じで、
「ここって、全部機械が運営してるのか?」
入場券を買って、ゲートの券をかざす部分に当てると、ゲートが開く仕組みになっていた。
「なるほど。これで人件費が削減できるから安いのか」
僕は現代の技術に感心しながら、最初の展示の中へと入っていった。
「もうこんな時間か…」
最後の展示を前にして閉館時間20分前になってしまった。最後の展示を少しだけ覗いていくかそれとも諦めるか迷っていた。
「いや…でも見なかったら余分にお金かかっちゃうからな…。安いとはいえ痛手になる…よし、見に行こう」
僕は急ぎ足で、入場券をかざし、ゲートをくぐっていった。
中に入ると、薄暗いライトで照らされた一本道が続いていた。他の展示とは打って変わって少し薄気味悪かった。そして早足で進んでいくと、少しして真っ暗な部屋に入る。
「なんだここ…何も見えないじゃないか…」
来た道を引き返そうとすると、来た道を照らしていたライトがパッと消えた。
「マジか…最悪の事態だな」
スマホのライトを手がかりにしようとカバンから携帯を取ろうとした時、急にスポットライトがチカッとある一点を照らす。そこには、かつて石像の彫刻で最も美しいと言われてきたミロのヴィーナスに劣るとも勝らないほど、繊細でかつ美しい
「最後の最後でこんな美しい作品に出会えるとは…っ」
僕はその石像の
僕はいつの間にか、石像のことで頭がいっぱいになった。あの仮面の奥には何が隠されているんだろう。気になれば気になるほど、頭が洗脳されていく。そしてある日、次の日曜日に仕事が休めることになった。私は同僚の休みの日の誘いを丁重に断り、美術館へ行く準備をした。今度はあの石像一点が目的だった。日曜まであと4日。美術館に行ける日がとても待ち遠しかった。しかし、明日と迫ったある日、僕の家の郵便物に不思議な手紙が届いていた。そこには、暗号のようなものが書かれていた。
『 鍵の板 : D K D" small8 fin V" 6 B Q O R" 』
ん…?わけがわからなかった。そんなことよりも私は早く石像を見に行きたい、そう思っていた。
待ち望んだ日がやってきた。今日は日曜日だ。無駄な準備はせず、なおかつお腹の具合も最高の状態である。よし、見に行こう。
入った途端に、俺は一心不乱に石像のあるところへ行った。暗闇の中を歩き、そして待ちに望んだ石像との再会である。2度目であるとはいえ、あの感動はまだ健在であった。
「やっぱり素晴らしいな…」
しかし、今日の僕は見るだけでは終わらない。あの仮面の奥を見たいのだ。作品に触れることは禁断の行為であるが、その罪を犯してでも僕はそれが見たかったのだ。
僕は仮面を外すことにした。金色の仮面に手をかける。
かぱっ────。
予想より遥かに簡単に取れた。
そこには、誰もが心を奪われるような美しい美貌があった───のではなく、文字が書かれていた。
『 What are you doing? 』
あなたは何をしている…?僕は何をしているのだろう。
美術館に入り、展示を見て、そして今この石像の仮面を…────。
そうか、これは僕なのか。
僕は次の日、自宅で首を吊って自殺した。
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