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「こはるびより?」

 日向の下にぴょん、と飛び出た奈々子のそんな言葉は、語尾にクエスチョンマークがついていた。

「難しい言葉を知っているな」

「ままがおしえてくれたの」

「へぇ。どんな意味か知ってる?」

「うんとねー」

 えっとねー、と首を傾げていたかと思うと、ポンと手を叩いて、満面の笑みで言った。

「おひさまがにこにこしているんだよ!」

 おっと、ここで難解なのきた。

「お日様がニコニコ?」

「うん! だからあったかいだよ!」

 ほうほう。

「ママがそう言っていたのか?」

「あー」

 うん! と力強く言ったが、その顔は多分適当に答えた時の奴だ。

「さむくてもにこにこしてるから、たのしいねぇ」

 お構いなく奈々子はクルクルと回ってはワンピースを膨らませていた。天真爛漫、無邪気、純粋、そんな言葉が思い浮かぶ。例えるならそう、奈々子こそお日様みたいな。

「おひさまのおなまえは、こはるなの?」

「んー? それは違うな」

「じゃぁ びより?」

「それも違う」

 お日様は太陽って名前で、と言いかけて奈々子がまた手を打った。

「おひさまのおともだちだね!」

「え?」

「おひさまのおともだちが、こはるちゃんとびよりちゃんなんだ!」

 うーん、それも違うんだけどなぁ、とは口には出さないまま、楽しそうな奈々子を見つめた。

 幼い子の想像力は、大人の持つ想像力では想像出来ないのだなと改めて分かる。あんなに柔軟な考え方を、大人になったらどうして忘れてしまうのだろう。


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