プルメリア達

47*全て終わらせてくれればいいのに




 もうこのまま死んでしまってもいいと思った。



 でも、そうさせてはくれなかった。



 体内に宿るエーテルが、この生命を守った。





 光が収まると、お母さんの姿はなく、銀色のファイルだけが、この手に握られていた。


 夜空を見上げると、青白い光を放つ黒い巨人が飛行戦艦を飲み込み、大地一面に広がった黒い沼がボンの街と人を溶かしていった。



 しかし、そんなことはどうでもよかった。



 わたしたちは、お母さんの家の地下シェルターに戻ると、地下通路を歩き、途中でお母さんが用意してくれた荷物を拾い、また歩き出した。



 出口の見えないトンネルを、ひたすら進んだ。


 それは、わたしたちの人生と同じように思えた。


 途中で天井が崩落して、全て終わらせてくれればいいのに。


 でも、そうさせてはくれなかった。



 わたしたちは、進むしかなかった。






 地下通路を出ると、森の中だった。こんな時でさえ、夜空の星はその輝きを失わない。


 その輝きを眺めた後、わたしたちは眠った。





 朝になると、わたしたちは思い出したようにお母さんが渡してくれた銀のファイルを開けた。


 その中には、イシガミ博士のノートが入っていた。


 借りた本を記録していたノートだ。


 わたしたち、ゆっくりと文字を確認し、ページをめくった。



「あ、あった……」





 7月7日


『理想郷への旅・ある親子の記録』


 ガルディンベルク帝国図書館








「行こうか。ガルディンベルクに」



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