21*後日攫いに行ってやるよ



 プルメリア達は、この辺り一帯の森、山を根城とする盗賊達を逆略奪しまくった。ある程度の金は確保出来たが、大体の盗賊はその日暮らしの金品しか持っていなかった。


「盗賊てあんましお金持ってないんだねー。クサイし」


「そうですね。これでは効率が悪いです。クサイですし」


「うーん、でも今んトコこれしかお金稼ぐ方法ないんじゃなぁい? バイトする訳にもいかないしさー。クサイし」


「それなら、でっかい盗賊狙えばいいんとちゃう? あ、うちはクサイしとは言わへんよ」


「このKY女ー!」

 


 この辺一帯の森は、盗賊達が潜む無法地帯となっているようだった。プルメリア達は木の上に登って木々の枝葉に身を隠し、盗賊達の様子を伺った。チンケな盗賊を見つけると、速やかに首を斬って殺した。


 そのうちに、ある程度の規模を持つと思われる盗賊団を発見した。黒字に白いウサギのマークがその盗賊団のシンボルマークらしく、そこに所属している盗賊達は皆ウサギのマークを身体のどこかに身につけている。


「こいつら、イケるんじゃない?」


「アジトを突き止めましょう。そこに盗難品が蓄えられているかもしれません」


「がっぽりがっぽり! 」


 ダリアは両手を上げて謎のがっぽりダンスを踊りながら言った。細い木の枝の上で器用にステップを踏んでいる。


「じゃあ、あいつらの跡をつけてアジトを探りましょう」





 息を潜め、プルメリア達は盗賊がアジトに帰るのを待った。しかし、なかなか盗賊は動かない。そこにいたのは3人のウサギのマークをつけた盗賊で、頻りに周りを気にしている。


「なかなか動かないねぇ」


「かなり警戒しているわね」


「これはお宝期待出来るかもー!」


「しかし持久戦になりそうやな。眠くなってきた」


「そうですね。あの3人は見張り役でしょうか。何か、異様に警戒してるのでアジトを見つけるのも難しくなるかもしれません。見張りの交代役が来れば、その時がチャンスですね」


「そうだね」


「えー、タイクツー」


 ダリアは木の枝に脚を引っ掛けてぶら下がり、逆さまになった。スカートがめくれ、真っ赤な下着が丸見えである。


「そーだ、捕まっちゃえばいいんじゃない!?」


 パンツ丸出しのダリアが言った。


「捕まる?」


「ダリみたいな若くて可愛い女の子がいたら絶対連れてくっしょー。あはは」


「確かに、それなら手っ取り早いですね。アジトが分かればこっちのものです」


「まぁ、あたしだったらこんなパンツ丸出し女は嫌だけどね」


「ダリアのパンツを見て欲情しない男はいない!」


「丸出しはあからさまに不自然だからダメです。山で遭難した学生を演じましょう」



 ダリアの『捕まっちゃえばいいんじゃない』案を採用する事になったプルメリア達は、一旦その場を離れ、木から降り、遭難して憔悴しきった学生を演じ、盗賊達がいる方向へ歩いて行った。そして、盗賊と鉢合わせする。


「あ〜れ〜、盗賊よ〜! お助け〜!」


 ダリアが、オーバーアクションと幼稚園児も驚愕の演技力で偶然に盗賊と鉢合わせしてしまったシチュエーションを演出する。


 どう? 


 すんばらしい演技力でしょ? 


 そしてダリアを見た盗賊達はこう言うの、ぐへへぇ、美味そうな女だなぁ、アジトに連れて帰ろうぜぇ。ぐへへへへぇ。





「なんだお前ら。あっち行け」


 3人の盗賊の中で一番若い男が、手で虫を追い払うような動作をして言った。


「は?」


 思わぬ返答に窮したダリアは、大きく手を広げたまま、アホ面で静止した。しかし気を取り直し、演技に戻る。


「いいんですかぁ? 行っちゃってもぉ?」


「早く行けっつってんだろ。殺されてぇのか」


 若い盗賊は少しキレ気味でそっぽを向いた。


「えーんひどーい! 10円ハゲが40個くらいできてしまえー! 」


 よく分からないが、ダリアは泣き出した。


「ダメだこりゃ」


 プルメリアはダリアを裏に引っ込めると、盗賊の前に出た。両手を腰にあて、仁王立ちの姿勢である。


「ちょっと、こんだけの御馳走を前にしてほかっておくというの? バチが当たるわよ、早くアジトに連れて行きなさい!」


「エ、エルフィンの兄貴、ちょっとくらいつまみ食いしてもいいんじゃねぇですかい?」


 若い盗賊の後ろにいた年配でヒゲ面の盗賊が、鼻血を垂らしながら言った。興奮しているのか、鼻息も荒い。どうやら、ダリアの色仕掛けはこのヒゲには効いているようだ。


「馬鹿野郎、ボスから何が何でも最優先しろっていう指令が出てんだ。サボってるの見つかったらソッコーで殺されるぞ」


「へ、へい……」


 ヒゲはひどく肩を落として持ち場に戻った。


「ちょっと、あのヒゲ落ち込んじゃったじゃない。早いトコあたしたちをアジトに連れてきなさいよ!」


 エルフィンという名前らしい盗賊は困った様子で後頭部を掻いた。


「俺はお前らみたいなガキじゃなくてもっと大人なお姉さんが好みなんだよ! それによ、俺たちは今それどころじゃないんだ。別の仕事で忙しいんだ。住所を教えてくれたら後日攫いに行ってやるよ。さぁ、帰れ帰れ」


 後ろで泣いていたダリアが、今度は憤慨して盗賊に飛びかかった。


「黙って聞いてりゃこの熟女好きがー!」


「熟女!? 」


 ダリアは、エルフィンの首元の襟を両手で掴んで揺すぶった。


「このピチピチの肌が欲しくないのかー!? ほら見ろーこの水も弾くピチピチの太ももを! 世の中の男は大体ロリコンだろー!」


 ダリアは片脚を上げるとスカートを捲り上げ、露わにした白い太ももをペチペチと叩きながら言った。


「それは大きな誤解だ——」


 ダリアの手を振り解こうとしたエルフィンは、ダリアが着ている制服の袖にガンドール帝国国務庁の紋章が刺繍されているのを見つけ、目を見張った。


「お前ら、国務庁の人間か?」


「いちおうね! 所属はそこになってるけどー」



 エルフィンの顔色が変わった。





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