第27話 再び分配
「さて、ギイチ君。そしてユーリ君。ここに大量のジェムがある」
「またやるの、その茶番」
適当に入った
「報酬の山分けだぜ? もーちょいテンション上げてこーぜ、ギイチ君よ」
「お前はいつもテンション高いだろ」
「それにしても沢山集めましたねえ……」
俺とタスク、そしてユーリが囲む石版の上には五十個ほどのビー玉のような石――ジェムが置かれている。前回同様、そのほとんどが緑のジェムであるが、青のジェムが四つある。
「本題の青ジェムだが……ユーリちゃん、本当に俺達だけで使っちゃっていいの? 売ったらお小遣いじゃすまないくらいの高値になると思うけど」
「はい、大丈夫です。お金は別に必要じゃないですし、私にはその青ジェム使えないみたいですから。あっでも、ヨシカズ君のお家にお世話になってるからお金渡した方がいいのかな……」
ここ最近三人で潜りに潜った裏面の、その報酬であるジェム――主に青ジェムだけど、その分配に際してユーリは取り分を辞退した。ユーリが辞退したのは、何故かは分からないがユーリが既に
「まあ、ユーリがいいって言うなら俺達で使わせてもらおう。ユーリ、ウチのことなら気にしなくてもいいよ」
「そうだな、また強化されちゃうのかー、ヤバイな俺達」
「それで青ジェムは――」
「『
ジェムの分配に移ろうと視線を石版上に向けると、タスクが回り込むように補足してきた。早く青ジェムを使いたくて仕方ないんだろう。
「精神はともかく、また好適かあ」
再び手に入ってしまった好適の青ジェムに悩む。青ジェムが出るのはいいんだが、最も効果が分かりづらいものであるし、使える数に限りがある以上、使おうとも思えない。
その青ジェムの横にはとんでもない数の緑ジェムがある。三人で潜るようになってから、難易度の高い裏面にも挑めるようになったのだが、報酬を見る限り大差がないように思える。赤ジェムなんて出る気配もない。よく一発で手に入れたもんだな、俺。
「一応聞くけど、タスクはどれがいい?」
「『
「俺も『
分配に際し、一応意識を合わせとこうと思ったのだが、タスクの回答は予想通りだ。何にしても力がないとどうにもならない。膂力のジェムは人気だ。
「ギイチは前に一個使ってんだから、今度は俺でいーじゃん」
「馬鹿言えよ、お前。この前のは公正な勝負で俺が勝っただろ。俺だって膂力が欲しいわ」
「何でだよ、バランスいい方がいいだろ」
「俺は極端な
「あの……二人とも、喧嘩は……」
タスクと言い合っているとユーリが困った顔でそれを止めてきた。タスクとはいつもこんな言い合いをしているので別に喧嘩じゃないんだけど、勘違いさせてしまったか。
「ごめんごめん、別に喧嘩じゃないよ」
「ユーリちゃんも言ってやってよ、この
「の、のうきん? 何ですか、それ」
「ユーリ、タスクは無視していいよ。まあここはジャンケンにしようぜ」
話がややこしくなるので、手っ取り早くジャンケンで決めることにした。はじめっからこうすればよかったんだ。
「まさか……この俺が負けるとは――」
「それはもういいって」
「じゃあ俺は『
タスクとの勝負はまたも一合で決着がつき、俺は『膂力』のジェムを、タスクは『耐久』のジェムを使うことにした。
「そんで、『
「あんま精神に振ってもなあ……」
「まだ二つ目だし大丈夫っしょ!」
「うーん、じゃあ精神も使っとくか」
タスクはまだ赤ジェムを使っておらず能力を持っていないため、精神のジェムは俺が使うことにした。
――強化:膂力(2)、精神(2)
――補助:装填(チャージ)(5)
――武具:メイス(1)
石版上にジェムを使った後の俺の能力値が表示される。
「おーー、中々良くなってきたんじゃねえの?」
「
「いいなー、膂力。お前精神二個も使ってるんだから、次に膂力出たら流石に俺が使うぞ?」
「分かったよ」
ジャンケンに負けたのが相当不満なのか、ぶつぶつと文句を言うタスクが俺と入れ替わって石版に手をあてる。
――強化:耐久(2)、敏捷(1)
――武具:メイス(1)
新たに耐久のジェムを使ったタスクの能力値が石版上に表示された。こう言っちゃなんだが、能力を持っている俺の方が表示が豪華に見える。タスクも同じように思っているのか、口には出さないけど不満そうだ。
「こんなもんかあ。結構潜ったのに、先は長いなあ」
「まあ、ユーリのおかげで攻略も安定してきたし」
「そうだなあ。あと、
タスクは一つの青ジェムを手に載せて俺に見せてくる。使わないことにした『
「使わないから、とりあえず持っとくか」
「うーん、二個目だしなあ。それに緑ジェムもひどい数になってきたし――あ、そうだ!」
タスクが急に大声を出すので、会話に入ってなかったユーリがビクッと小さく跳ねる。
「急になんだよ」
「ギイチ、
満面の笑みのタスクがそう言う。
何を言っているのか俺には分かるが、意味が分かってないユーリは眉間にしわを寄せていた。
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