四時
森野雨鷺
朝 〜プロローグ〜
四時、五分前。
僕は慌てて辺りを見渡す。
ビルの隙間から、さっきまで僕らを包んでいた青い光が、生まれたばかりの赤色に溶けていくのが見えた。
少しずつ暖かくなるベンチに喜ぶのも束の間、確認したばかりの時計にため息を一つ吐く。すると、隣に座っているハルが笑った。
「朝だね」
空を仰ぐハル。
その視線を追うと二羽の鳥が並んで空を飛んでいた。
「あれ、僕とナツ」
耳に流れ込むハルの言葉。
目の前の二羽の鳥は振り返ることなく必死にどこかへ向かっている。
あれが僕とハル。
静かに二羽を見つめていると暖かさが広まっていく背中に何か違和感を覚えた。
鈍い痛みもある。
ハルも今、僕と同じだろう。
これから大空を飛んで行く僕ら。
そのことをまるで祝福するかのように赤色の光で満たされていく世界。
身震いするような冷たい風も、青い光も、小さなロウソクに燃やされてもうなくなっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます