四時

森野雨鷺

朝 〜プロローグ〜

 四時、五分前。


 僕は慌てて辺りを見渡す。


 ビルの隙間から、さっきまで僕らを包んでいた青い光が、生まれたばかりの赤色に溶けていくのが見えた。

 少しずつ暖かくなるベンチに喜ぶのも束の間、確認したばかりの時計にため息を一つ吐く。すると、隣に座っているハルが笑った。


「朝だね」


 空を仰ぐハル。


 その視線を追うと二羽の鳥が並んで空を飛んでいた。


「あれ、僕とナツ」


 耳に流れ込むハルの言葉。

 目の前の二羽の鳥は振り返ることなく必死にどこかへ向かっている。


あれが僕とハル。


 静かに二羽を見つめていると暖かさが広まっていく背中に何か違和感を覚えた。

 鈍い痛みもある。


 ハルも今、僕と同じだろう。


 これから大空を飛んで行く僕ら。

 そのことをまるで祝福するかのように赤色の光で満たされていく世界。


身震いするような冷たい風も、青い光も、小さなロウソクに燃やされてもうなくなっていた。


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