第4話 監禁生活1日目夜

…俺には今選択肢がある。

⚪︎三井が、焦って足を縛り直すのを忘れているため、ある程度動ける、

部屋のドアにも特に鍵があるわけではない、 → 逃げる


⚪︎前記をふまえて、 → 逃げずにここに残る。


まあ、逃げた後にどうなるか確証がないため、それを見込んで逃げないという選び方もある。

逆に、こんなことをされたわけだから、逃げないとダメな気がしたりする。

でも、三井は、特にヤンデレという調子でも、サイコパスというわけでもないから、残っていてもいい、…変態かどうかは判断に困るが、俺も同じようなもんだしな、


「ふー。」

猿轡越しなので少し空気の漏れる音がするくらいだが、なんとなく一息着いてみる。よくよく考えてみれば、あの三井がこんな思い切った行動に出るのは相当思うところがあったからなのだろうか?


それとも本当に俺が好きとか?

これでただの自意識過剰だったらもう泣くしかないんだが…。


…残るか、

もう受験も終えてフリーな時期だったし。

何より、久しぶりに会った後輩がヤバいことに(⚠︎自分も巻き込まれてる)なってるのにこのまま帰ってしまったらもっと悪い方にことが運びそうだ。


そう考えた俺は、特に何をするでもなく、部屋のソファーでぬ眠りこけるのだった。



「…先輩、確か、何も食べていなかったと思うので、夕食を持ってきました。」

そう言いながら、三井は、カップヌードルを持ってきた。

「猿轡、外しますね、」

「…三井、」

「はい、何ですか?」

「手は、外してくれないのか、」

「…はい、ごめんなさい、その代わり、夕食は、僕が食べさせます。」

そう言って、三井は、カップヌードルの中身を差し出してくる。

薬は…盛ってても、殺すほどのものを盛る度胸はないだろう。

実際、俺も腹が減っていたため、そのまま食べる。

カップヌードルは、程よく冷めていた。こんなところも、三井だと思う。

こいつは、他人をよく気遣う。時に、気遣いすぎる。本人は善意だったのだが、クラスメイトは、そう思わなかった。なんてことが多いらしく、どこまでも不憫なやつだ。…だからこそよく手をかけて可愛がった後輩でもあるかが。

(余計なことをするな、)だとか、(わざわざ首を突っ込むな、)(うざい)そんな、反抗期の屁理屈のような考えが、膨れに膨らんで、いじめに発展してしまった。中高一貫校で、俺が、高一、三井が、中二と、そんな時期だった。


「…先輩、暑くないですか。」

「ああ、大丈夫、」

「ごめんなさい、」

「…謝るな、」

「…」

「…」

「猿轡、戻します。」

三井は、さっさと、猿轡を巻いてしまった。

「えっと、この部屋からは、出られないので、ソファで、寝てください。…寝苦しいかもしれまさせん。ごめんなさい。」

そう言って、三井は部屋を出た。


…追いかけようと思えば追いかけられたが、俺はただ三井の背中を見送って、

そして寝た。

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