【番外編39】『闇』に追われて

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇


(バラヌ視点/一人称)


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 エインゼルの森林にいた人族やエルフ、獣人達はドワーフの案内で地底へと向かっていた。

『闇』は地底にも侵攻していたが、地上よりはマシだ。

 人々は僕とお父さん、それにジラに何か言いたげにしつつも、黙っていた。

 お兄ちゃんの行動に思うところがあるのだろう。


 集団の殿は、僕とお父さんとジラとカルディ、それに龍族の中で唯一僕らに付き添ってくれた人が1人。


 お兄ちゃん曰く、『闇の女王』を抜けた先にいる根源を倒せれば、今いる『闇』や『闇の獣』も消えてなくなるそうだ。

 だから、僕らはそれまで耐えればいい。


 だが。


「本当に、『闇の女王』を倒すなんてできるのかよ」


 前方を歩く人々の中から、そんな声がする。

 それは誰もが思っていて、でも口にしても仕方がないと言わなかったこと。

 たぶん、本人はそんな意識もなかったのだろうけど、その言葉で人々に不安が広がる。

 不安は不満となり、僕とお父さんに向かう。


 その声は徐々に大きくなっていく。


「そうだ! パドとかいうお前の息子が龍族を連れて行ったから、オレ達はこんな穴蔵に潜らなくちゃいけなくなったんだぞ」

「もし、龍族が全滅したらどうするんだ!?」

「責任取れ!」


 ――お兄ちゃんが失敗したら、世界の終わりだよ。

 

 僕はそう思いつつも、口には出さない。


「もし、そうなったら、俺が責任を取る」


 お父さんがそう断言した。


「責任って……どう責任を取るんだよ!?」

「俺のことを煮るでも焼くでも好きにすればいい」


 そう言いながら、お父さんは僕の前に立った。

 それでわかる。

 お父さんは僕を庇ってくれているのだ。


 そんな言い争いをする人族の醜態を見かねたのか、ドワーフの長老が一喝する。


「お前ら、いい加減にせんかっ! 我らすみかに案内されながら『穴蔵』というとは。そんなに嫌ならば今すぐ出て行け」


 ドワーフの言葉に、騒いでいた人族達は押し黙る。

 今、洞窟から追い出されたら困ることを、彼らはよく知っているのだ。


 押し黙ってその場に固まる僕らに、龍族が警告する。


「来たぞ、『闇』だ」


 え?


 ギョッと鳴って振り返ると、『闇の獣』を従えた『闇』が数体洞窟の中を下ってきていた。

 龍族が僕らの背中を押して行う。


「皆、急げ。ここは私が足止めする」

「でも……」

「我はお前達を護るようおさに命じられている」


 龍族は言って、『闇』に浄化の炎を吐いた。


「バラヌ、急ごう」


 ジラがそう言って僕の手を引く。


「俺達がここにいても邪魔になるだけだ」


 僕は頷き、洞窟を下る。


 ――お兄ちゃん、信じているからね。

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