【番外編39】『闇』に追われて
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(バラヌ視点/一人称)
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エインゼルの森林にいた人族やエルフ、獣人達はドワーフの案内で地底へと向かっていた。
『闇』は地底にも侵攻していたが、地上よりはマシだ。
人々は僕とお父さん、それにジラに何か言いたげにしつつも、黙っていた。
お兄ちゃんの行動に思うところがあるのだろう。
集団の殿は、僕とお父さんとジラとカルディ、それに龍族の中で唯一僕らに付き添ってくれた人が1人。
お兄ちゃん曰く、『闇の女王』を抜けた先にいる根源を倒せれば、今いる『闇』や『闇の獣』も消えてなくなるそうだ。
だから、僕らはそれまで耐えればいい。
だが。
「本当に、『闇の女王』を倒すなんてできるのかよ」
前方を歩く人々の中から、そんな声がする。
それは誰もが思っていて、でも口にしても仕方がないと言わなかったこと。
たぶん、本人はそんな意識もなかったのだろうけど、その言葉で人々に不安が広がる。
不安は不満となり、僕とお父さんに向かう。
その声は徐々に大きくなっていく。
「そうだ! パドとかいうお前の息子が龍族を連れて行ったから、オレ達はこんな穴蔵に潜らなくちゃいけなくなったんだぞ」
「もし、龍族が全滅したらどうするんだ!?」
「責任取れ!」
――お兄ちゃんが失敗したら、世界の終わりだよ。
僕はそう思いつつも、口には出さない。
「もし、そうなったら、俺が責任を取る」
お父さんがそう断言した。
「責任って……どう責任を取るんだよ!?」
「俺のことを煮るでも焼くでも好きにすればいい」
そう言いながら、お父さんは僕の前に立った。
それでわかる。
お父さんは僕を庇ってくれているのだ。
そんな言い争いをする人族の醜態を見かねたのか、ドワーフの長老が一喝する。
「お前ら、いい加減にせんかっ! 我らすみかに案内されながら『穴蔵』というとは。そんなに嫌ならば今すぐ出て行け」
ドワーフの言葉に、騒いでいた人族達は押し黙る。
今、洞窟から追い出されたら困ることを、彼らはよく知っているのだ。
押し黙ってその場に固まる僕らに、龍族が警告する。
「来たぞ、『闇』だ」
え?
ギョッと鳴って振り返ると、『闇の獣』を従えた『闇』が数体洞窟の中を下ってきていた。
龍族が僕らの背中を押して行う。
「皆、急げ。ここは私が足止めする」
「でも……」
「我はお前達を護るよう
龍族は言って、『闇』に浄化の炎を吐いた。
「バラヌ、急ごう」
ジラがそう言って僕の手を引く。
「俺達がここにいても邪魔になるだけだ」
僕は頷き、洞窟を下る。
――お兄ちゃん、信じているからね。
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