人間不信少女
鏡アリス
第1話 少女
その少女は賢しかった。賢しいゆえに、、、愚かだった。
少女は幼くして人間の内面、世界の理を理解していた。
人間とはどれだけ醜いイキモノなのか、どれだけこの世界は腐っているのか。
そして愛とは平等にまかれるエサではないと。
こんな世界… イマスグ、キエチャエ と。
彼女がここまで知った由縁とは、なんぞや。
何を理由に幼い彼女は、ここまで知ったのか。
否、知らなければならなかったのか。
母「わあ、すごいわね、諒。塾でも90点。これなら○○中学校にもあっさり合格出来るわね。」
少女の名は、遊馬といった。少女は当時幼稚園の年長。少女には自慢の兄がいた。
諒という少女の兄。今年県内の名門中学校に受験をすることが決まった、賢く優しい大好きなお兄ちゃん。
思えば少女、、、遊馬がここまで知ったきっかけはそれかもしれない。
兄が出来すぎることによる自身への劣等感が生まれたのは1年生のころだった。
何故、自分はできないのか。大好きなお兄ちゃんと一緒の道は歩めないのか、と。
しかし、兄は自殺をしてしまった。
あまりにあっけなく。
「遊馬、先に死んじゃってごめんな。でも疲れちゃったんだ。お母さん、お父さんからのプレッシャーに耐えられなかったんだ。こんなダメな兄貴でも好きって言ってくれてありがとな。」
そう、遺書には書いてあった。
え?
お兄ちゃんの苦しみに気付けなかった?私が?
遊馬「ははは。 嘘。嘘だ。」
涙が込み上げてきた。止まらない。
私が気付かなかった。お兄ちゃん。ごめんね、ごめんね
母と父は何も言わなかった。言わなかったと言うより…
無関心、だった。
何も感じていない。興味がない。そんな眼だった。
それを見て遊馬は思った。
嗚呼。すべては偽善なのだと。
嫌だ。愛されたい。嫌だよ。お兄ちゃん。なんで置いていったの。
少女は想う。
用が無くなったら捨てられる。
腐っている。こんな世界。
人間なんて所詮そんなものなのだと。
悟ったのだ。
これが少女の知らなければならない状況に追い込まれた理由である。
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