魔王になる予定なので勇者と仲良くしよう

ARS

第1話 プロローグ

 俺は目を開ける。


「おはようございます。朱莉偽アカリギ 乃木ノギさん」


「…おはよう」


 突然、知らない声に挨拶されて戸惑ったが、返さないのは失礼だろうと思い、挨拶を返した。


 でも、これは…。


 周りは歪で違和感だらけの空間。

 違和感の塊で直視を避けたい。

 何も無い筈なのに何かあるこの感覚は気持ち悪い。

 色があるわけでもなく、むしろ何も無い。

 それ一つだけで人間の理解を超えた情報がそこにはある。


「すいません。

 このままだと話しにくいですよね」


 そう声が聞こえると同時に周りが真っ白に変わる。


「ああ、落ち着く…」


 俺はついつい呟いてしまう。

 にしても、俺ってやっぱり死んだんだな。

 改めて周りを見て思う。

 目の前には絶世の美女が…。

 好みどストライクだったら今すぐ襲っていたに違いない(ゲス顔)。


「そうですか、それは良かったです」


 美女はにこやかに微笑む。

 俺も笑う。


 …


 この美女の笑顔怖い。


「にしても、随分落ち着いていると言うか、楽観してますね」


「そうですか?」


 俺はにこやかに笑う。

 だって、こんな俺には異世界転生なんてこと起きる訳ないのだ、むしろ起きてたまるか!

 そして、俺をこの人は天国なり、地獄なり…。

 俺はあの世があるかもと知れて少し嬉しかった。


「残念ですけど、あなたは転生してもらいますよ」


「へ?」


 嘘だよね?

 嘘ですよね?

 何?神という生き物は上げて落とすタイプなの?

 嫌だなー、俺の場合は下げて上げるですよww。


「ですから、転生してもらいますよ」


 え?マジで?

 本気と書いてマジ?

 本当に転生?

 あら、ヤダー。

 冗談が上手いんだから。

 で、本当は?

 さっきから勝手に人の心読んでるんでしょ?

 だから、本音は?


「はぁ、すいません。

 でも、あなたはこれから異世界転生してもらいますよ」


「いやいやいやいや、ドッキリですよね?」


「いいえ」


「嘘ですよね?」


「全然」


「まさか、地獄とかへの転生?」


「ある意味そうですけど、しっかりとした異世界ですよ」


「これは微妙な否定。

 そうか、俺は悪魔になるのか」


「いいえ、魔王です」


 …今なんて?


「魔王です」


「嘘だと言ってくれぇぇぇぇーーーーーー‼︎

 もう、人生なんて嫌じゃー!」


 俺は泣き出した。

 でも、あれ?

 人外に転生するならいいような…面白そう。


「残念ながら人ですよ」


「もう、いっそ殺してくれぇぇぇぇ‼︎」


「もう死んでます」


 俺は数時間ほど泣いていた。

 もう、人生には疲れたよパ○ラッシュ…。



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 何とか生きる決意(一つつきしたら壊れる)をして改めて美女と向かい合う。


「まさか、崖から落ちそうになった御老人を助けた理由が死ぬ為だったとか、屋上から飛び降り自殺しそうな女の子を止めた理由は逆恨みして殺してくれないかなとか、盛大な暴露をされるとは思いませんでした」


「てへ♪」


 俺は泣け叫んでいる時、もう死んでるからいいやと思って、散々暴露しまくった。

 それは盛大に。

 後悔はしてないし、反省もしてない。


「残念ながらそれでも転生は帳消しにはなりません。

 むしろ、魔王ですから丁度いいです」


 チッ、バレていたか。


「勿論、バレてます」


 心の中で思っていない筈なのに、こいつできる!


「いや、むしろこっちの方が驚きです。

 何も考えずに策を立ててくるなんて思ってもみませんでした」


 そりゃ、もしもの時の計画に『神様が良い行いをしたので×××』の逃れ方を考えていたし。


「はぁ、もういいです。

 話が進みません」


 もう呆れられている。

 仕方ないので話を聞くことにした。


「では、まずは世界の説明ですね。

 まぁ、これから送る世界にはこれといって名前は無いのですが、地球より遥かに大きいとだけ覚えておいて下さい。

 その世界には魔物いったものがいますし魔法もあります。

 まぁ、そこらへんは自分であとは調べてください。

 あれ?大丈夫ですか?

 さっきから静かですけど」


 どうやら、俺が黙って聞いているのが不思議らしい。


「舐めてんのか?」


「あ、よかったです」


 何がだと言いたい。

 でも、言ったら負けのような気がする。


「では、説明をしますね。

 これより、あなたになって頂く魔王は一つのシステムです。

 これは共通の敵という者を作り、世界の崩壊を少しでも緩やかにする。

 そして、あなたは世界征服、または世界統一が目標です。

 残念ながら寿命という概念がシステムには無いのでほぼ不可能とされるそれを叶えるか、殺されるかしない限り死ねません。

 勿論、自殺はできないようになっています」


「へぇ」


 前言撤回だ。


「へ?」


「面白そうじゃないか」


 統一、または征服?

 不可能に近い?

 いいじゃないか。

 これだよ、俺の求めていた本当の刺激というのは…。

 死ねない?

 それがどうした?

 だって、不可能を行うことが面白いんだろ?


「あなた、変わってますね」


「よく言われる。

 いいぜ、やってやるよ。

 やるからには征服や統一くらいはしてみせる」


 俺はそう宣言すると美女は笑う。


「よく言ってくれました。

 では、転生特典を選んでください」


 直後、画面が現れる。


 ーーーーーーーーーー

 残り特典ポイント

 危機を乗り越えた回数(一回につき100p)=2300p


 人の命を救った回数(一回につき50p)=1150p


 特異性(一点につき500p)=5000p


 誰もしない思考(一部分につき10p)=4560p


 才能(一つにつき50p)=2000p


 死んだ回数(一回につき10000p)=10000p


 転生特典(一つにつき10000p)=10000p


 同情された回数(一回につき1p)=19800p


 合計54810p

 ーーーーーーーーーー


「やめろ!その同情の目線は!

 おかげでせっかく丁度いい数値に一ポイント追加されただろ!」


 美女の同情の目線が痛い。


 54810訂正54811pが転生特典で使えるらしい。

 ていうか、これ作ったやつ絶対に俺に喧嘩売ってるだろ!


「まぁ、否定しませんけど。

 普通の人の倍の数値がこれでもあるんですよプッ」


 あっ、また増えた…。

 この同情の目線をやめて欲しいな〜。


「そういえば、勇者についての設定もこれで出来るのか?」


「いえ、設定をいじるだけだなら100pとお買い得ですよ」


「なら、勇者の近くに転生は?」


「これは1000pですね」


「俺と勇者の容姿の設定」


「えっと、あなたの場合は特典で無料。

 勇者は性別決定に5000p容姿でプラス5000pになります」


「ある程度の意思は?」


「それは無理です」


 なるほど、ならいけるな。


「んじゃ、それ全部やるから表示してくれ」


「えっ?

 本当にいいのですか?

 勇者の容姿まで…」


「何言ってんだ?

 調教、洗脳、誘導、籠絡するにしても好みじゃない奴をするのは嫌だろ?」


 美女は呆然としていた。

 まさに、俺のしようとしてることを理解したからだろう。


「わかりました」


 そう言うと共に行くつかの画面が現れる。

 申し訳程度で服を着せられた女の子が表示されていた。


「これいらないんだが」


 ふこの部分を指して言ってみる。


「ダメです。

 好きなら、これくらい頭で想像してください。

 服は取れなくてもその部分の設定はできるので」


 それを聞いて、仕方ないと思い設定を始める。


 銀髪で背は150弱くらいで小柄にした。

 目の色はルビーにしてある。

 顔はしっかりと整っており、綺麗とも言えるが可愛いの割合もしっかりとある。

 これはかなりの美少女だ。

 胸もある方だが、これといって大きいように見えない。

 実際結構あるが、体格に合わせてあるので控えめに見えるだけだ。

 それほど筋肉がある訳でもないがない訳でもない。

 男としての理想通りの体型。

 日本人的な真っ白な肌を持ち、実に俺好みだ。


「容姿設定をここまで仕上げる人を初めて見ました」


「ふっ、趣味のためならいくらでも出来る」


「はぁ」


「次は…」


 次の画面が表示される。


 ーーーーーーーーーー

 残り100000p

 ーーーーーーーーーー


「俺よりあるな」


「まぁ、勇者なので一応は」


「へぇ、スキルとレベルだけなのか」


「はい、ステータスはみたいなのは厳密に言えばありますが、この世界ではレベルと天職、称号、スキルで全てが決まります」


「なるほど、道理でセカンド天職とかあるわけだ。

 そういえば、それらは全て後から入手は出来るのか?」


「はい、天職は特殊な条件がない限りセカンドなどの解放はできません。称号に関してはいくらでも手に入ります。

 スキルも条件を満たせば…」


「なるほどな」


 ーーーーーーーーーー

 名前

 天職 勇者LV1

 レベル1

 スキル

 勇者LV1

 称号

 勇者

 選ばれし者

 ーーーーーーーーーー


 これが今の勇者のステータス。


「勇者の天職などが複数あることがあるのか?」


「一応、無くは無いです」


 なるほどな。

 セカンド天職で100p意外と少ないな。

 サード、フォース…といっても100pずつだった。

 レベル追加というものがあるが、これは1000pだった。

 意外とお高い。

 スキルはピンキリだった。

 とりあえず、フィフスまで入れて500p

 次にスキルだ。

『全属性魔法』500p

『無制限鑑定』10p

『完全剣技』50p

『賢者』1000p

『英雄』1600p

『魔法剣』5000p

『魔力強化』10p

『身体強化』10p

『精神強化』10p

『経験値強化』10p

『知覚速度倍加』100p

『礼儀作法』100p

『甘える』100p


「こんなものかな?

 ていうか、意外とポイントが減らない。

 最後なんて何でこんなにポイントを使ってるの?」


「これは、相性ですね。

 勇者という天職の…」


「あと1000pで10000pぴったりなのに…」


「でしたら、『添い寝』とかはどうでしょう?」


 俺はすぐに『添い寝』を見つける。

 ぴったり1000pだ。

 どうやら、勇者のスキルとは相性が悪いらしい。


「これは添い寝を好きにするスキルですよ」


 俺はその言葉を聞いて即決した。

 添い寝してほしい一心に。

 あとは称号と天職で稼ぐか。


 称号と天職はどうやらスキルより必要ポイントが多いようだ。

 因みに相性の方はファーストが反映されるようでこれを後に決めても先に決めてもスキルの使うポイントは変わらない。


 天職


『賢者LV1』10000p 『追加スキル『魔法適正』』

『剣王LV1』10000p 『追加スキル『剣適正』

『聖女LV1』10000p 『追加スキル『聖女』『浄化魔法』』

『巫女LV1」10000p 『追加スキル『巫女』『浄火魔法』』


 これでいいだろう。

 最後の二つは何?って。

 勿論、俺の趣味です。

 なんか、そういったのに手を出した時の背徳感が…まぁお互いに合意の上でしかしないけど。


「そういえば、種族は変えられるのか?」


「無理ですね」


「なら、ハーフまたは覚醒遺伝」


「ハーフは出来ませんけど、覚醒ならいけます。

 種族や覚醒の仕方の設定によりますが、10000pです」


「なら、人の原型を保ったまま若いままでいられる種族は?」


「人の原型に関しては気にしなくて平気です。

 吸血鬼とかはどうでしょう?

 ルビーの目のおかげでそこが特徴になります。

 更には覚醒遺伝なので弱点を無くせます。

 これで20000pですね」


「それで頼む」


「まぁ、実際勇者というシステムはあなたの設定した容姿から老けませんよ。

 あなたが死ぬまで生きます」


「そうだったのか、でも、ポイント消費になったからいいや」


 血を吸われるのもそれはそれでそそられるものが…。

 おっといけないいけない。

 あとは、称号だな。


 称号


『一途』 5000p

『禁断』5000p

『恥ずかしがり』 5000p

『天然』 5000p

『フラグ折り』 5000p

『ちょっとしたドジっ子』 5000p


「一つ質問したい」


「何ですか?」


「意思は決められないんじゃ…」


「はい、でも称号による誘導ができないとは一言も」


 なるほど…。

 とりあえず、これでいいか。


「んじゃ、俺の特典でも決めますかね」


 ーーーーーーーーーー

 残り43712p

 ーーーーーーーーーー


 自分のスキル構成などは既に考えてある。


 まずはスキル


『無制限鑑定』1p

『無制限隠蔽・偽装』1p

『無制限魔力操作』10p

『不屈・努力』10p

『魔力強化』10p

『魔力感知』10p

『完全気配感知』10p

『魔力増加』10p

『魔力拡張』10p

『身体強化・拡張』10p

『体力増加』10p

『成長促進』10p

『必要経験値半減』100p

『取得経験値倍加』100p

『成長補正』100p

『飛翔』100p

『超速魔力回復』200p

『超速再生』300p

『完全適正』1000p


 使用ポイント

 2012p


 残り41700p


 レベル追加×10で10000pの消費。


 天職欄追加×17で1700p消費。


 残り30000p


「なぁ、思ったんだけど安すぎやしないか?」


「たしかにそう思いますよね?

 実は違うんですよ。

 システム上、魔王と勇者が特殊すぎて、全ての消費ポイントが1/10ものによっては1/100なんだよね」


 …なるほど、ご都合主義のチートか。

 そう考えると、もう少しまともな称号を勇者につければよかったかな?

 まぁ、いいか。


 天職


『勇者』20000p消費

 追加で『勇者』のスキルゲット。


 残り10000p


 称号

『神々の加護』10000p

 成長補正などを掛ける。

 更にスキル、称号の取得をしやすくする。


 最後の最後まで考えて全ポイントを使い切った。

 称号の欄に一番下にあるからこの称号には中々気付かなかった。


 ーーーーーーーーーー

 名前

 天職 魔王LV1 勇者LV1 空き×16

 レベル1 レベル1

 レベル1 レベル1

 レベル1 レベル1

 レベル1 レベル1

 レベル1 レベル1

 スキル

 魔王LV1

 勇者LV1

 無制限鑑定 LVEX

 無制限隠蔽・偽装LVEX

 無制限魔力操作LVEX

 不屈・努力LVEX

 魔力強化LVEX

 魔力感知LVEX

 完全気配感知LVEX

 魔力増加LVEX

 魔力拡張LVEX

 身体強化・拡張LVEX

 体力増加LVEX

 成長促進LVEX

 必要経験値半減LVEX

 取得経験値倍加LVEX

 成長補正LVEX

 飛翔LVEX

 超速魔力回復LVEX

 超速再生LVEX

 完全適正LVEX

 称号

 魔王

 選ばれし者

 勇者

 神々の加護

 ーーーーーーーーーー


 レベル追加ってそういうことだったのか…。


「因みに数が多いほど難しいものになります」


「どういう意味だ?」


「要するにものによってそれぞれのレベルアップに必要な経験値が違うという意味です」


 なるほど、これは成り上がりを考えて作っておいてよかったな。


「では、そろそろ転生の時間です」


「なら、俺のステータスを隠蔽しなくちゃな」


 ーーーーーーーーーー

 名前

 天職 勇者LV1

 レベル1

 スキル

 完全適正LV5

 称号

 勇者

 選ばれし者

 ーーーーーーーーーー


 んじゃ、この面白そうな人生を謳歌しますか…。


「では、さっさと行って下さい」


 俺は転生した。


「いや、まだしてません」


 光に包まれて転生が始まった。


「行ってきます」


 俺はそう呟き、意識が失う。

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