朱のネオンライト

真彩

第1話

ふと、ガラス越しの赤色のネオンが目に留まった。

思わず何故かずっとみていたくなり、立ち上がった瞬間、椅子がきりりと鳴った。

「あぁ……もうそろそろ変え時かな。」

来週にでも椅子を調達しようか。そんなふうに思いながら仕事机の上のコーヒーを手に取った。

社長。

大手の商社の社長に登りつめた自分だが、死ぬほど手に入れることを望んだこの立場のはずなのに、いまいち自分は満足していないのは何故だろうか。

大手に就職し、高級マンションに住む。

一般的な上位層であるはずの自分が。

ふと赤いネオンの中に見えた答え

それは

「そうか、周りにいる人間は、俺のこの立場だけに寄っているんだろうな。」

自分が酷く惨めに思えた。

誰か、外側の俺じゃなくて

社長じゃなくて

天才じゃなくて

この、日渡 安里(ひわたり あさと)を

見てくれよ。

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