第20話〜願い〜
ここは、どこだろう?真っ白な所に、出口が二つ。でも、きっと死後の世界ってやつだよね。だってあの日、私は魔法の使い過ぎで死んだはずだもん。
「サクラ。」
「サクラさん!!」
後ろから呼ばれて、振り向くと、サクラさんが立ってた。あれ?なら、ここは記憶の間?
「あの、ここはどこですか?」
「狭間の世界、かな。少し話さない?」
「はい!」
狭間って、何と何の?ま、まさか、天国と地獄!?や、やだな〜。
「サクラの魔法、どうだった?」
「あ、すごい魔法だなって思いました。でも、やっぱり危険かなって・・・。」
「そりゃ、あんだけ継続したらそうなるよ!」
正直にそう言ったら怒られた。そうだよね。私も危険だって分かってたもん。
「なんであんな無茶するの!」
「そ、それは、フウくんを守りたくて・・・!」
フウくんと言ってしまうと、途端に寂しくなる。ここには、フウくんはいない。私が、望んだ通りになったんだ。なら、幸せになってほしい。
「あのね、あなたの大切な人が今、どうなってるか教えてあげようか?」
「え?」
そう言ってサクラさんは鏡を出してくる。そこに映ってたのは、ベッドに寝てる私と、その横で泣いてる、フウくんだった。
「フウくん・・・。」
「彼は、あなたの帰りを待ってるの。」
「へ?」
なんで?私、あの時確かに・・・。
「今、ここにはいないんだけど、彼の御先祖様、私のフウくんが、魔法を使ったの。回復の魔法を。」
「回復の?」
「うん。私のために作り出してくれた魔法。回復師の身体的負担を回復する魔法なの。それで、あなたは回復した。」
そうだったんだ。あれ?じゃあ、ここは・・・。
「ここは、生と死の狭間の世界。あなたは今、二つの選択肢がある。」
生か、死か。それは、言われなくてもわかった。
「あなたは、彼と生きていたいと言った。なら、行きなさい。」
でも、本当にいいのかな?私は、フウくんと生きていいのかな?
そんな時、指輪が光る。フウくんからもらった、大切指輪。サクラさんがつけてる物とは、少し違う。
「すてきな指輪ね。」
「はい。」
その指輪は、やがて私に色んなものを見せてくれた。
『大丈夫?』
『俺の名前は『フウ・ガルディアン』。多分同い年くらいだろうし、気軽に『フウ』って呼んで。敬語もいらないから。』
『『サクラ』…。なんだか、懐かしい名前。なんでだろうね?』
『俺たち気が合うのかな?』
『サクラが名前そのままなのと同じように、俺も一緒。前世の名前は『フウ・ガルディアン』。君のそばに、誰よりもそばにいた騎士だよ。』
『あの日、君が記憶のカギを俺たちに託した日、俺は君に聞いたんだ。『その時、俺たちがどんな状況であろうと、君にその状況を話して、一緒に鍵を探してもいいのか』と。君の答えはなかった。それでも、今君がそれを望むなら、俺は手を差し出すよ。この手を取るかは君の、サクラの自由だ。』
ようやく再会した日、フウくんは優しくそう言ってくれた。
『今度はちゃんと守るよ。そのために強くなる。だから、もう一度俺にチャンスをちょうだい。』
「護りきれなかった」と後悔した日、力強くそう言ってれてくれた。
『サクラ!すぐ行くから、待ってて!!』
カエデにわざと捕まった時、目を見て必死に言ってくれた。
『俺は、俺たちは何があっても、サクラの味方だからね。』
記憶を取り戻す前。不安そうに、そう言ってくれた。
『前世ではだめだったけど、今世では一緒になりたいんだ。それに、なにより『今」』の俺は、『今』のサクラが大好きなんだ。』
記憶を取り戻した後、そう言って告白してくれた。
『どこにも行かないよ。』
『大丈夫、ここにいるよ。』
不安で震えてる時、そう言って抱き締めてくれた。
『約束して。最後の戦いが始まったとしても、俺から離れないって。』
怖くても、約束してくれた、あの言葉。
『大丈夫。誰もあいつの言葉なんて信じないから。大丈夫。』
恐怖に駆られた時も、何度も大丈夫って言ってくれた。
『何があっても、二人で、ううん、みんなで帰って来よう!そのためなら俺、なんだってするから!』
力強く、そう約束してくれた。
『サクラ。』
『サクラ!』
『サクラ・・・。』
いつだって、名前を呼んでくれた。
「・・・っ!」
指輪が見せてくれた思い出が、私の事を揺さぶった。
帰りたい。そう思った。たとえ、フウくんの側にいる権利がなかったとしても、隣にいさせてほしい。
「フウくん、フウくん・・・。」
「帰ろう?」
サクラさんが、優しくそう言ってくれる。それに、何回も頷く。
「うん、うん。帰れるんだよ。」
「良かった・・・良かった・・・!」
帰れるんだ。フウくんの所に、帰れるんだ。また、名前を呼んでくれる。今度は、一緒に生きていける。
今度は、離れなくていいんだ。
「出口、あっちね。」
落ち着くのを待って、サクラさんが言ってくれた。
「はい、ありがとうございます。」
そう言って、歩き出した。フウくんの待ってる所に行くために。
「行ってらっしゃい、今度は、失敗しないでね!」
「はい!!行ってきます!」
私は、手を振りながら光の出口に向った。
「行っちゃった。」
サクラさんを見送って、私は呟いた。今度は、失敗しないでほしい。ちゃんと、フウくんと幸せになってほしい。
「頑張ってね。」
私の願いも込めてそう言う。私はこの世界に来て、沢山探したのに、フウくんに会えない。ここに来れば、一緒にいられると思ったのに・・・。
「やっと、見つけた・・・!!」
後ろからそう言われて、振り向けば息を切らしたフウくんが立ってた。やっとって、どういう事?
「サクラ、探したよ・・・。」
「フウくん・・・!」
そう言って私を抱きしめる。ああ、フウくんの温もりだ。懐かしい。
「もう、放さないから。」
「私も、もう、離れない・・・!」
「うん、一緒にいよう。」
「うん・・・!」
ああ、やっと、やっと、私の願いが叶う。
ありがとう、探してくれて。見つけてくれて、ありがとう!
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