第17話〜最後の魔法〜

 強い!!

 今までの戦闘中、何度も思ったけど、その中で一番強いと感じた。

「フウくん!!」

 他の援護に回ってる隙もない。とにかく今は、フウくんの支援で精一杯だった。

「どうしたんだ?そんなんじゃ俺には勝てないな〜?」

 そう言ってフウくんをおちょくる。フウくんも、焦ってるのが分かった。

「カエデ!!」

 ふと見ると、カエデが倒れてる。あのままだと危ない。でも、援護してる隙がない。援護したら、今度はフウくんが危ない。

「きゃあ!!」

 でも、今度はすぐ隣でアスカちゃんが倒れる。敵の攻撃をもろに受けたんだ。

「サクラ、援護!!」

 フウくんがベルゼブルを押し込んでくれてる。今なら行ける!そう思ってカエデとアスカちゃんを転移魔法でサクラの木の下に転移させる。そこに結界を張って護る。でも、状況は一気に不利になる。

「あら、あの二人を守れても、自分の首を絞めるだけじゃない?」

 ディーアブルが楽しそうにそう言う。たしかにそうなんだけど、あの二人が回復するまで耐えきればいい。

「主犯格、無力化成功!!」

 ワタルさんがそう言う。良かった。あの二人、上手くいったんだ。

「小癪な!」

 そう言ってディーアブルはそらさんたちを狙う。

「そうはさせない!」

 私は矢を射って邪魔をする。ディーアブルは魔法がメインだから、支援魔法に頼ってる部分があった。

「くそ!」

 そう言って、今度は私が狙われる。でも、この時にはアスカちゃんたちが帰って来てた。

「ごめん、サクラ!助かった!!」

「後は任せろ!!」

「うん!!」

 二人はそう言ってディーアブルに向かっていく。そっちは任せてフウくんの援護をしようとした時、フウくんがこっちに飛ばされて来た。

「フウくん!!」

「・・・ぐっ」

 何があったの?あの人が無力化したから、支援魔法はもう届かないはず。なのに、なんで・・・。

「残念だったね。俺はディーアみたいに単純じゃない。しっかり作り込まれたから、支援がなくても充分力を発揮できる。ようは、ここからが本領発揮ってこと。」

 そう言って、ゆっくり近づいて来る。とにかく、フウくんを回復させなきゃ。

 ズキッ。そんな痛みが胸に走る。サクラの魔法は、身体的負担が大きい。もともと、回復魔法は負担が大きいのに、その2倍くらいに膨れ上がるから、継続してたら命に関わる。

「サクラ、もう無理しないでこっちに来いよ。」

 ベルゼブルはそう言って私を見る。憐れむような目。

「さっきも言ったはず、嫌だって。」

 私はそう言って前を見る。そう、嫌なんだ。例えこの身が滅びようと、護りたいと思ったから。

「馬鹿だね。」

 ベルゼブルはそう言って笑う。怖い。でも、やるしかない。

 もう一つ、あの時使えなかった魔法を使う。これは、サクラの木がないと使えない魔法。御先祖様がベルゼブルたちを消そうと考えて作った魔法。

 上手くいく保証はない。でも、これが私の最後の魔法になる。それは確かだから。

 何もつがえていない状態で弓を引く。そして、そこに光の矢を一本作り出す。そして、周りに何本も。

「そう、君は俺と一緒に消えるんだね。」

 胸が痛む。苦しい。でも、やるしかない。

「サクラ・・・!」

 後ろでフウくんの声が聞こえる。ごめんね。後で、本部でちゃんと治療を受けてね。きっと、それで間に合うくらいには回復するはずだから。でも、それより、一緒に生きられなくて、ごめんね。絶対、幸せになってね。私は―

「フウくん、今までありがとう。幸せだったよ!」

 そう言って笑う。それが本心だった。

「サクラ!!」

 そして、矢を射る。全てベルゼブルに当たって、ベルゼブルは消えていく。

 それと同時に、私の意識は途絶えた。

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