第14話〜そらの思い〜

 ワタルくんの怪我は、正直そこまで深くなかったから、回復の結界を使えた。でも、アスカさんたちは無理だった。あの怪我を回復しようとすると、ワタルくんに手が回らない。結局、私はワタルくんしか大事じゃないかもしれない。その事実が、私を苦しめた。

「そら・・・フウさんたちを・・・。」

「ごめん、今はワタルくんしか、出来ない・・・。」

 泣きながらそう言えば、ワタルくんは「俺は、大丈夫・・・。」と掠れた声で返ってくる。無理だよ。そんなワタルくんを放っておけない。結局私は自分の大切な人して考えられないんだ。

 そんな時、隣から桜色の光が差し込む。見るとそこには大きな桜の木が。あれ?でもこれ、日本の桜じゃない。なに、これ?

「あれ?」

 ワタルくんがそう言うから見ると、傷が全部塞がってた。すごい・・・。

「すごい、これサクラさんの魔法なのかな・・・?」

 そう言って呆然としてる。私もびっくりした。ワタルくんだけじゃなくて、アスカさんたちの傷も治ってく。しかも、あの人たちは目が眩んで、こっちを向けない。あの魔法、なんだろう?

 でも、それより。

「良かった・・・、ワタルくん・・・。」

 私は、ワタルくんの怪我が治ったことの方が嬉しかった。こんな時でも、周りを見る事が出来ないのが悔しかった。

「ありがとう、そら。」

「え?」

「護ってくれて。」

 ワタルくんはそう言って、私を優しく包み込んでくれる。

「それに、回復もしてくれたでしょ?嬉しかった。心配かけて、ごめんね。」

 そう言ってもらえて、なんだか嬉しくて、涙が出て来る。戦闘中だけど、少しならいいのかな?

「良かった・・・。」

 もう一度そう言えば、ワタルくんはまた「ごめん」と言う。ワタルくんが謝ることじゃないのに。

「もう、大丈夫だから。」

 そう言ってもらえて、心の底から安心した。とにかく、無事で良かった・・・。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る