魔王様、そろそろかと。

花畑弥生

第1話 魔王様、そろそろかと。

ここは魔界ゼリアン。

50億を超える魔族が暮らす世界。

空は青。山は緑。海も青。

人間どもが跋扈する世界メルトンより美しいであろうこの世界を治める王が住まうこの城で、私ベルゴーンは少々苛立っていた。

なにやら遠まわしな言い方で、かつ解説じみた紹介をしたがここは魔王城。

魔族の憧れ、就職したい場所ランキング5年連続一位を獲得したここで私は苛立っていた。


「くそ、魔王様はまだ準備が終わらんのか・・・!」


今から2時間前、魔王様はこうおっしゃった。


「よーし、そろそろメルトンを我が手中におさめる。皆の者、30分後エントランスに集合。出撃には我とベルゴーン部隊、それとカリム部隊で向かう。はいじゃあ解散!食糧忘れるでないぞ!」


あれから二時間。

私は一人、エントランスにいる。

私の部隊は魔王城の庭に待たせてある。カリムの部隊もまたそうだ。


「ベルゴーン、少し様子を見に行かないか?」

「おぉカリム。さすがに二時間も音沙汰がないと不安だな。部屋に向かおう。」

「不安は嘘だろ。」

「いや、違う不安だ。」


私はカリム、四天王の一人である死王カリムと魔王城の階段を上る。


「しかしあれだな、外を見てみると我々の部隊は表情一つ変えず整列している。部下達とはいえ申し訳なくなるな。」

「まぁな・・・これ何回目だとか文句言わないあたりしっかりしてるよな。さすが魔王軍。」


魔王城の最上階、つまり魔王様の部屋に辿り着く。

相変らずこ「我の部屋」というカードは下げられたままなのか・・・


「失礼します魔王様。四天王が一人、ベルゴーンにございます。」

「・・・」

「・・・魔王様?」


返事が、ない・・・

まさか人間どもめ、奇襲か!?


「おーい魔王様!!入るぞ!!」

「まてカリム!もしかしたら敵が!」


カリムの手で雑に開け放たれる魔王様の部屋。

質素な部屋に大きなベッド。

そしてそこに爆睡する魔王様。


「・・・魔王様。」

「・・・」

「起きてください魔王様。」

「・・・」

「プリズムランス。」


この野郎私がどれほど待ったと思っているのだろうか。

呆れ果てて思わず超級魔法を放ってしまったはっはっは。


「!?!?!?痛いではないかベルゴーン!?何をする!?謀反か!」

「国を破壊できるほどの威力のはずが痛いですまされたショックはこの際触れないでおきましょう。何をされているのです。」

「いや、ちょっと横になろうかと・・・」

「は?」

「すまぬ、うとうとしてしまって。」

「カリム、すまないが先に戻っておいてくれ。少し話が長引きそうだ。」

「いやちょっと。すまぬって。ちょっとベルゴーン?剣おろしてもらえないか?ちょっ!」



ここは魔王城。

美しい世界にたたずむこの城では、日々争いが絶えない。

それでこそ魔界だと、魔王様はそう語る。

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