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 かろんかろん。

「こんばんは」

「マリオ君、いらっしゃいませ」

「やっとお店に来ることが出来ましたよ~。マスター、カシオレお願いします。あ、この席いいですか?」

「もちろんですよ」

「ありがとうございます。マスター、この前はありがとうございました」

「いえいえ、とても素敵なものを観させていただきました。こちらこそお礼を言わせて下さい」

「わっ、とんでもない! そんなお礼なんて」

「いえ、本当に面白くて楽しくて、考えさせられて。マリオ君、本当に恰好良かった」

「ふ、ふふふ、そんな照れます」

「本当の事ですよ。お話が面白かったのもありますが、演出も演技もとても素晴らしかったです。見終わった後、興奮が全然冷めなくて、友人に電話を掛けてしまいました。凄く良い舞台を見たんだけどーっと」

「わわ、うれし、マスターにそんなこと言ってもらえるなんて。僕、ちゃんと成長出来てますでしょうか」

「私がお答えするなんて恐縮なのですが、出合った頃のマリオ君とは段違いです」

「わぁ~やったぁ、嬉しい!」

「ふふふ」

「あ、あの」

「え? 僕ですか?」

「舞台俳優さん、なんですか?」

「え、はい。一応、ですけど」

「一応?」

「一応だなんて、れっきとした舞台俳優さんですよ。私、先日観劇したんですよ」

「わぁ」

「あ、や、その、でも全然僕、まだまだで。有名でもないし、小さな劇団の俳優ってだけで」

「そんなことないですよ、素敵な劇団で、私大好きなんです」

「う、マスター」

「へぇ、やっぱりそうなんですね! すっごいイケメンさんだったから、モデルさんか俳優さんだろうなって思っていたんです」

「え、あ、う、そんな」

「謙遜しないでください。ね、マスター、彼、とってもイケメンさんですよね」

「はい、私前々からそうだと思っていました」

「ですよねー。こんなイケメン、そうそういないですよ」

「あ、う」

「そうですよね、それこそルカさんの雑誌に載っているモデルさんみたいな」

「マスター読んでくださっているんですね!」

「もちろんです」

「雑誌の、お仕事をされている方? ですか?」

「女性向けの美容雑誌ですけどね」

「? あの、失礼ですけれど、男性、ですよね?」

「はい、でもメイクが好きなんです」

「ふふ、すごく可愛い、っていうのは失礼なのかな? よくお似合ですね、綺麗です」

「あはっちょっとマスター聞きました? 綺麗ですって、こんなイケメンさんに言われたら困っちゃいますね~」

「マリオ君は正直者ですからね」

「ふふふ。マリオさんっておっしゃるんですね。それでは正直者のマリオさん」

「はい」

「マスターは恰好良くて魅力的な方だと思いますか?」

「ル、ルカさんっ?」

「はい、思います」

「即答! ですよね! 俺もそう思います。だからほら、マスターは恰好いんです」

「え・・・ふふ、それは困りました」

「「え?」」

「イケメンと美人に言われたら困ってしまいますね」

「ふふふ」

「あはっ」

「それでは嬉しかったので、これはサービスということで。他の肩には内緒ですよ?」

 コトンコトン。

「うふふ、マスター大好き」

「僕も」

「おやおや、モテモテで困りましたね」

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