第8話 「破壊神やんちゃする」

今は、8話目といったところか・・・


トウジが意味不明なことを言う。


「にゃ、正解だ。

 そしておめでとう」


ドカボンが手をぱちぱちと叩く。


ま、まさか・・・!


「にゃ、トウジの奴、『分析の加護』に目覚めやがった」


うおおおお! こっのクソ野郎お!

おめでとう馬鹿野郎!


ヤスがうるさい。


ドカボン様、ちょっといいか


律儀に手を上げて問いかける。


「にゃ、構わんぞ、神に愛されし者よ」


・・・うーん、ちょっとダサいな


「・・・にゃ」


僕の加護を、一晩、ヤスに渡したい


・・・へへ、嬉しいぜ、トウジ


この『わらしべの加護』を


そう、その加護があれば、チートスキルと呼ばれる『鑑定かんてい』を入手したも同然だ


「にゃ、『わらしべの加護』か。

 いいだろう、お前の意見を尊重する」


っかー、やっべえな、チート伝説の始まりだぜ


ドカボンはトウジと握手し光を受け取る。


それと『分析の加護』も渡しとく


「にゃ?」


続いて光がドカボンへと移る。


よーし! それだ! よく言った!

わらしべってなんだよ

子供があっかんべーしてんの?


ドカボンがヤスへと掌を向ける。


よっしゃこーい!


「破壊神ドカボンの名において、お前に『わらしべの加護』を『さずけん』」


ヤスは逃げ出した。


馬鹿め!


何ぃ!?


しかし、いつの間にか後ろへ回り込んでいたトウジの羽交い締めをくらう。


が『蛇歩きの才』は草原にて真の力を示す


お前なんでそんな才能持ってんだよ!


昆虫達と同じ視線でたわむれてたら、自然とな


「にゃ、そのまま動くなよ~」


少し遠くから狙いを定めるドカボン。


くっ! これ以上お笑い能力を増やされてたまるか!


・・・なあヤスよ


・・・!?


まじめな声で、背後からトウジが呟く。


お前、『溺れる者は藁をも掴む』って格言をしってるか?


知ってるよ、馬鹿にすんな

ちなみに、わらしべって藁のことだろ


体を揺らし、ドカボンの照準をずらさせながらしゃべる。


「にゃー、動くなってー」


集中しようとして掌の光が収束し出す。


そうだ、お前は藁になる


ふっざくんな!


異世界は大変な場所だ


だからもっといい才能がほしいんだって


そこには困る者、つまり困難に溺れ助けを請う者が多くいる

その中には、美女や可愛いも・・・


ぴくりとヤスが反応した。


・・・続けて


溺れる者=美女


・・・溺れる者イコール美女・・・・・・


藁=ヤス


・・・藁イコール俺・・・・・・


つまり?


・・・『美女は、俺をも掴む』!?


・・・・・・・・・


トウジはこくりと頷いた。

そしてヤスを解放し、ゆっくりと横にずれる。


「にゃ? 撃ってもいいか?」


ビー玉ほどの光弾こうだんを掌から向けながら、とりあえず2人を見守る。


ヤスよ、お前は格言に押し込まれるほど、枠に収まった男ではない


・・・トウジ


お前が、格言になるんだ!


・・・・・・!


お前が格言だ!


・・・!


ヤスは感じた。


今確かに、友から異世界の命運を託された、と。


・・・空が、青いな・・・・・・


神の間の青空を見上げながら、ヤスはそう呟く。

そしてゆっくりと、ドカボンに向き直った。


さあこい破壊神!

俺が、俺達がカクゲンだ!!


ヤスは仁王だつ。


「にゃ」


そしてドンと撃たれた光弾がヤスにヒット。


・・・ん?


それは当然のように大爆発した。


残ったクレーターの中央には、情けない姿で横たわるヤスの姿が。


「にゃ!? 力が入りすぎた!」


慌ててヤスの側に駆け寄ろうとするドカボン。


「ヤス~~、ごめんよ~~。

 なんかどうしても外したくなくてさー」


・・・・・・


返事がない。

ただの屍ではないことを願いたい。


・・・・・・


そんなクレーターへ降りるドカボンを、トウジは静かに見詰めていた。


・・・計画通り!


トウジの計画は、まだ第一フェイズが終了したばかりだ。

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