第9話 「破壊神の見た目は可愛い獣でした」

「にゃ、こりゃしばらく起きんな」


加護を受け取った反動ですか?


「にゃ、爆発なんてこの世界じゃただのエフェクト。

 ヤスに加護を与えるってのは、本人にかなり負担だったようだ」


それが人から人への譲渡であっても、ですね


「にゃ、ヤスの器はもういっぱいいっぱいだな。

 よくて才能が後2つ3つ入るか ―――― 」


異世界へ行き器を育たせ、現地の神から加護を譲り受けるか・・・


「・・・にゃ」


ドカボンはくるりと振り返り、クレーターの上から見下ろすトウジを見上げる。


「ほほーん、『分析の加護』をうちに渡したのはこのためか。

 さっきまでみたいにびびりながらこっちを探らないのな」


あの才能を手放せば、僕もあまり現実を直視せず、あなたを見れますから


「にゃ、でもそれじゃあ神相手に知恵比べができんぞ?」


ドカボンがクレーターから登ってくる。


・・・・・・・・・


「にゃ、まあそのために『やんちゃの卵』もうちに渡したのか。

 うーん、この『分析』は面倒だな。勝手に考えが進む」


・・・しかしそれは卵

ドカボン様にそれほど影響はないと思ってましたが・・・・・・


足下のクレーターをぐるっと見渡す。


どうやらやんちゃになってくれたようで


「にゃ、攻撃系の加護ばかり授かってきたからな。

 この感覚は新鮮だ」


・・・嘘ですね


「にゃっはっは」


ドカボンが穴から上がってきた。


神が卵程度の影響をこうもたやすく受けるはずがない

ということは・・・


「にゃ、思考が先を見据えるってのは、行きすぎると気持ち悪いな。

 トウジが何をしたいのか、今なら大体わかってしまう」


・・・では、僕の計画に ――――


「のった」


・・・・・・・・・


「うちが神らしからぬ行動を取る言い訳は『やんちゃの卵』で立った。

 後は待ったがかかる前に、取り返しがつかぬ所まで進んでおくだけ」


にゃっはっはと笑う神をトウジは静かに見詰める。


「さあ、言ってみろ人間、お前の口から。

 この破壊神にして星の槍、カボドーンに何をさせたい?」


・・・あの


「にゃ?」


『分析』がないので、こう、細目にすると、


トウジは自分の目元を指差す。


…可愛い獣が、一生懸命すごんでいるようにしか見えないんですが


「うっせえ」


後で抱きしめても?


「にゃ! 話を次に進めろ!

 お前に『分析の加護』戻したろうか!」


おっと、それは困ります

その加護はあちら・・・


「・・・にゃ」


ドカボンがおもむろに空中へ手を伸ばすと ――――




―――― こんにちは、トウジです。


先ほどドカボン様が記録係の変更を決定いたしました。

なのでその間、再びわたくしが執筆を代行させてもらっています。

お目汚し申し訳ありません。


結論から言うと、計画は最終フェイズを待つばかりとなりました。

僕の役目はほぼ終わりです。

さっさと家のベットに戻り、ヤスが冒険を終えるまでプリチーな昆虫ランドの夢を見たいと思います。


さて、少しお知らせをば。次回10話についてです。

なんと僕に代わり、妹のナナセがヤスを見守っていくことになります。

世間知らずで見た目と才能だけが取り柄な妹ですが、ヤスとの冒険を通し、人格も成長していくと思いますので、なにとぞよろしくお願いします。

兄として妹を過酷な異世界に送るのは心苦しいですが、これも彼女のためです。

妹もそれを自覚し、ヤスの助けになってくれればと思います。


おや?


・・・それでは、僕の代筆はここまで。

皆様も夢で神様に呼ばれた時は、相手に呑まれないよう気をつけてください。

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