第4話 「破壊神まだ異世界に行けない」

チェンジいいいい!!


ヤスが騒いでいる。


「にゃ、4話目に入ったってのにうるさい」


これあれだよ

ギャンディーからかい過ぎてろくでもない加護を渡されたんだって

ドカボンのせいだー!


「にゃ、・・・いい加護だと思うぞ。

 それにあの『ぎゃん泣き』は週二ぐらいの恒例行事なわけだし」


もっとひでえよ!

あんなことされ続けて、イジメか!


「にゃ、ギャンディーは見た目こそボン・キュ・ボンの美人だが、精神年齢は15歳ぐらいなんだぞ」


15!?


「にゃ、こっちは下げては上げてを適度にやって、ガス抜きさせてんの。

 じゃないと遊びに行ったきり帰らなくなったり、逆に調子に乗って問題行動ばかり起こすし。

 今の対応に落ち着くまでそりゃあもう大変だったんだわ」


ドカボンは腕を組んでしみじみと昔の思い出にふける。


見た目20代だけど、それこそ酸いも甘いもかみ分けた精神年齢とかになるもんじゃない、神様って


「にゃ、うちを見てそんなこと言えるか?」


あー、確かに


「加護を授けられるほど神として純粋な存在、それに相応しい精神が、ギャンディーはあの15歳の頃だったんだよ」


・・・・・・先生!


ヤスヒコが手を上げる。


「にゃ、なんだねヤス君」


難しくてよくわかりません


「にゃ、君も15歳ぐらいになったらわかるよ、精神年齢が」


はい

それで才能をチェンジしたいのですが


「にゃ、話 聞いてた?

 本気で渡したものにチェンジくらったらボッコボコよ」


いやいやだって『小銭拾いの才』? ふぁ?


「うーん・・・」


唇に手を当てながらドカボンは考える。


「にゃ、例えば町の近くで、毎日500ゴールド拾い稼いだとする」


それで?


「一ヶ月後、およそ30日経ったらいくらになる?」


・・・? ・・・・・・!

なん・・・だと・・・・・・!?


「にゃ」


戦闘力、壱万五千・・・!

僕のお小遣いの50倍!?


「にゃ。

 ・・・・・・? お小遣いいくらなの」


500円・・・


がっくりと落ち込むヤス


「・・・・・・・・・」


ドカボンはそんなヤスを、まるで簡単な暗算もできないお馬鹿を見るような悲しい目で迎え、その背中にポンと手を置く。


「にゃ、『小銭拾いの才』、いい才能だろ」


ああ、どうやら僕が馬鹿だったみたいだ


「にゃ、自覚してるんだね。

 それじゃあそろそろ旅に出ようか」


・・・ああ、まずは武器を、そして・・・・・・


「にゃ、ヒノキの棒でいいか」


・・・ん?


するとヤスは顎に手を置いて考え出す。


「にゃ?」


そういえば、指輪の値段は?


「・・・・・・・・・」


遠くを睨み、確認しだすドカボン。

ゼロを5コぐらい指で数えた辺りで動きが適当になる。


・・・・・・


「にゃ、・・・千ゴールド、ぐらい?」


僕は騙されないぞ!

やっぱりイマイチな才能じゃないかあああ!


ヤスがまた騒ぎ出した。


「にゃっはっは。

 バレた?」


ドカボォォン!?


「にゃ、だって下げ上げの後っていえば、大抵いい加護もらえるんだもん。

 確認し忘れちゃった。てへ」


可愛く小首を傾げるぬいぐるみ。


くっそおお

可愛いのが余計悔しいぞおお


「それこそ『銭奏曲ぜんそうきょく』を渡すなんて言い出したときはビックリしたよ。

 それがこんなクソ加護になるとは・・・にゃっはっは」


・・・・・・


「にゃ、さすがに怒った?

 もう諦めて異世界に行こうぜ」


膝に手をついて項垂うなだれるヤスの肩をぽんぽんと叩く。


・・・ドカボンの加護は『さずけ』


「にゃ、そうだよ」


・・・でも今は、神様みんな忙しい


「にゃ、暇神なら週末は空いてるけど」


・・・週末以外忙しいなら暇神じゃなくね?

まあそんなことは置いといて


ヤスは姿勢を正し、草原の先を睨むようにして格好つける。


「にゃ」


そんなヤスを見上げる。


ドカボン、僕に考えがある

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