地を這う

野々下 勝也

第1話 地味で地味で地味で…

地味と言われ続けてきただけだった。


いつか良くなる。いつか良くしてみせる。そんな風に思っていたせいか。地味と言われ続け地の色に染まり抜け出せなくて、その中にいる自分が当たり前になってしまった。


私は地味。前髪長めでおさげで、メガネで猫背で、根暗で差が平均より下で、読書が好きで暗いところが好きで、運動音痴で方向音痴で、忘れっぽくて頭も悪い。何をするにも遅い、何かをやりだす勇気もない。木陰に生えたきのこと同じ。きっと同級生の半分以上から嫌われている。きっと太陽はもっとも正反対の位置にいる。そんな私の日常にきっと慣れすぎてきっと何にもなれないままでいる。

倉瀬 響子くらせ けょうこはそんな女のまま24の冬を迎えていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る