ぼく、ついにカクヨムと結婚します!!

ちびまるフォイ

結婚こそが本当の門出です

ちゃーちゃーちゃちゃーちゃーちゃちゃちゃー♪


「汝、病める時も健やかなるときもネタ切れに苦しむときも

 自信満々に書いたくせに思いのほか評価が伸びないときも、

 自分のフォロワーが減っていくときも、妻・カクヨムを愛し抜くことを誓いますか」


「誓います」



「新婦カクヨム」

「はい」


「汝、病める時も健やかなるときも、

 書籍化した作品がアマゾンレビューでボコボコにされてるときも

 アニメ化したのに大炎上したときも、

 人気作家の第二作目が大コケして凹んだ時も愛し抜くことを誓いますか」


「誓います」


教会のステンドグラスからは美しい光が差し込む。

来場者(PV)数もまずまずだ。


「新郎。では夫婦生活についてですが……」


「え、まだあるの」


「妻の前で過剰な暴力描写や、行き過ぎた性描写を控えると誓えますか?」

「誓います」


「妻の企画するコンテストや、自主企画にも参加することを誓いますか」

「ネタがなくても参加します」


「妻の機嫌が悪いとき、あなたの小説を消しても文句言わないと誓えますか」

「泣きながら誓います」


神父はカクヨムの顔色をうかがう。


「妻、カクヨム。よろしいですか?」

「はい。もう十分です」


「では誓いの登録(キス)を――」




「ちょっと待ったーー!!!」



教会の扉が荒々しく開くかと思いきや、ステンドグラスを突き破ってきた。

割れた破片で神父死亡。夫婦は命のはかなさを知った。


「カクヨム!! 俺様を覚えてるよな!!」


「あなたは……なろう!!」


あっけにとられる新郎だったが2人はすでに顔見知りだった。


「知らねぇとは言わせねぇぜ。あの夜のこと、覚えているよなぁ?」


「ち、ちがうわ……あれはつい魔が差しただけで……」


「なんだ!? 2人ともなんの話をしている!?」


慌てる新郎に口をつぐむ妻・カクヨム。

突如やってきた「なろう」はニヤニヤしながら説明をした。


「おいおい、とんだラノベ鈍感主人公だなぁ。会話の流れでわかるだろ?」


「ま、まさか……」


「そのまさかだよ!! すでにその女は転載してたんだよ!!!」



「嘘だろ……僕というものがありながら……転載なんて……」


新郎はがっくりと膝をついた。


「ちがうの! 私が好きなのはあなただけ! 信じて!!」


「ほかのサイトで転載してるのに……信用できるわけないだろ!」


「あはははは!!! その通りだよ! そいつはとんだ尻軽ビッチなんだ!

 俺だけじゃないぜ! アルファポリスにも転載したことだってあるんだ!!」


「ちがう……ちがうの……」


妻カクヨムは顔を手で覆って顔を振る。


「新郎さんよ。まぁそういうこった。あんたとは住む世界が違うんだ。

 純愛だのハーレムだのは、俺んトコの専売特許なんですわ。

 つーわけで、こいつは俺の女なんで」


「あなた!!」


カクヨムはなろうの腕を振りほどき新郎に抱き付いた。


「私は確かに転載をしたこともあった!

 でも信じて! 私が好きなのはあなただけなの!!」


「ハハハハ! その言葉、ほかの男(サイト)にも言ってるんだろ!?」


「あなた……」


カクヨムはそっと新郎の手を取って、自分のお腹にあてる。

皮膚越しにつたわる脈動に新郎はハッとした。


「これは……」


「そう、あなたと私の書籍化作品……略して赤ちゃん」


「本当に……僕の子なのかい?」


「ええ、ここを見て。タグにカクヨムオンリーってあるでしょう?」


「ああ……! ああ、ある!! たしかにあるよ!!」


「予約投稿は明日にしているわ。明日、私とあなたの愛の結晶が生まれるの。

 だから信じて。私の心はずっとあなたよ」


「ありがとう……! 僕はどうかしていた。

 過去なんてどうでもよかったんだ。大事なのはみr」



「「「 おめでとーーー!!! 」」」


来場していた読者は、なんか良い事言いたげな新郎の言葉をさえぎって

祝福の星シャワーをたくさん送った。


「みんな……ありがとう……!」


カクヨムは暖かい利用者に祝福されながら、結婚式を無事終えた。

翌日、元気な書籍化作品が産声をあげた。


「見て、この子……文体があなたそっくりよ」


「でも目元は君のサイトのレイアウトそっくりじゃないか」


「この子の成長……楽しみね」


「ああ、いい子に育つといいな」


二人の間を優しい時間が流れた。

妻カクヨムはすっくと立ちあがる。




「さて、大事なのはこれからよ。面白くない書籍化作品なんてごまんとあるわ。

 2巻だけ出して終わらないようにちゃんと教育しなくちゃね。


 まずは、小説としての完成度を上げるために名門の小説幼稚園を受験しましょう。

 魅力的なキャラを作る基盤となるために、アニメやゲームも100本以上はこなして、

 展開や構成力の勉強をするために落語を写経しなくっちゃ。

 プロデュース力を上げるためにキャッチコピーの勉強も必須ね。ああ忙しくなるわ!!」




「この子……息してないぞ!!!」

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