第17話 天才が天才たる所以
あなたは自分と他者をいかにして比較するだろか
自分と他者との個性の差というのをどのような時に実感するだろうか
少なくても第三者からの評価では実感できないことだろう
ネットでいいと言われてるからこのお店はいい店だ
テレビで有名人がいいと言っているからこの商品いいものだ
多くの人がいいと言うからこのダイエット方はいいものだ
残念ながら必ずしもそうとは限らない
「百聞は一見に如かず」ということわざの通り
他者がいいと思うものと自分がいいと思うものが必ずしも一致するとは限らない
だから自分の五感で感じることが一番他者と自分の違いを実感する方法の一つではないか
なぜなら他者との感性・思想などの違いを明確に感じることができるからだ
そもそも天才が天才たる所以は大衆との明確な差にある
大衆と同じことをやっていても流行は作れない
大衆の外側にいる人間が流行を作りその流行に大衆が乗っていく
大衆の外側の人間が表現するものは非常に刺激的で予定調和のない作品
これらの作品を作る人々を世は天才と呼ぶのだろう
写真と絵画の違いは何を切り取るかにある
写真は目が捉える事実を切り取り
絵画は脳が捉える空間を切り取る
私は絵画が好きだ
そこには現実に基づいた空想世界がある
夢でしか見れないような曖昧なものから綿密に妄想しないとできなようなもの非現実まで
夢も妄想もいつまでも脳内に記憶としてとどめておくことはできない
それは表現出来るほどの世界ではなく不明瞭であるが故に神秘的にも見える
それくらいこれらは不安定で不確定な状態である
これを絵という形で表現して見るものを圧倒することがすごいことなのである
私は絵画を見ていると書き手の脳内を覗き見てるようで非常に心地よい気分になる
意味があろうがなかろうが見ているこちら側に何か思わせる絵というのは魅力的で自分一人で美術館にいていいのなら一日中入れることだろう
映画なんてのはそんなファンタジックなものをわかりやすく映像化したがこれは大衆的で美しさに欠ける
音もあり何なら中身が動く
わかりやすくなればなるほど本質の理解は容易くなるが受け手側の感性の多様さが少しずつ失われている気がするのだ
今回私が暑い中上野まで行って見たエッシャーの描いた絵の数々
彼の世界観は独創的でそれこそ他者にとっては不明瞭で掴みどころがないもの
彼に絵の才覚がなければそれはただ彼の頭にしかない超常的神秘空間に過ぎなかっただろう
しかし彼はそれを外に表現する術を持っていた
彼は脳内で描いた不明瞭な空間を平面的だけではなく立体的にも捉え己が世界観を目の錯覚などを利用し絵を見る側に見せつけた
それはまさに夢のような世界を表現したものだった
見ていると奥深くの黒に吸い込まれるような絵もあれば不自然な状態に騙される絵もる
不自然が普通に散りばめられており違和感と自然状態の平気な顔で共存しているのは彼の巧みな技術の証明だろう
彼は非現実の世界を的確に細部に至るまで繊細に捉え明瞭に描き見るものを圧倒した
エッシャーという絵師の技術、才覚を全身で感じて欲しい
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