第2話 野球コーチ
今年、学校の野球部の監督となった先生は
かつて甲子園に行ったこともある
すごい人らしい
だからとても熱心に生徒の練習風景を見ている
生徒を甲子園に連れてきたいと
周囲にもこぼしてるらしい
ある日監督は生徒たちを集めた
みんなどんなことを言われるか
気が気でなかった
「お前らの練習を見ていたがお前たちには欠点がある」
この一声に生徒たちは
次に続くであろう欠点の正体
これに興味が向ききっていた
監督はその期待に答えるかのように
言葉を続けた
「お前たちは気を抜いたプレイをしてる
このままじゃすぐ甲子園に行ってしまうぞ」
生徒たちは驚いた
まったく意味がわからなかった
誰一人理解できてないまま
監督は
「これまでいろんなチームを見てきたがお前たちは最悪だ
誰一人として力を入れてる感じがしない
そんなんじゃダメだ
もっと気合入れて練習しろ
お前らこのまま気の抜けた練習してたら
すぐ甲子園に行っちまうぞ
そんなんでいいのか」
監督の言葉は段々熱くなるが
生徒はどんどん理解ができない
一通り言い切って
監督はスッキリしたのか
生徒たちに帰宅するように言って
ご機嫌で足早に部室を去っていった
帰宅する生徒たちは
監督への不信感と
一抹の不安を抱え
それぞれ帰宅していった
後日
練習中のピッチャーに監督の檄が飛んでいた
「おいおいおい
三振ばっか取ってんじゃねぇよ
ストライク三回取ることだけがいいわけじゃねぇぞ
あえてボールとか投げて
バッターを揺さぶれ
相手を手玉に取るようなピッチングをしろ」
ピッチャーの彼には監督のいう意味がわからないが
相手は監督だ
気に留めないわけにもいかない
監督の言った通り
何回かあえてストライクゾーンを外すピッチングをしていた時
投げたボールがバッターに当たってしまった
痛みを感じて屈むバッターを見て監督は
「いいぞ
気にするな
これも経験だ」
心配する生徒たちとは真逆に
誰よりも喜んでいた
「今日の後半のピッチング良かったぞ
これをものにしてけ
絶対に気抜くなよ
抜いたらお前らすぐ甲子園にいっちゃうから」
そう言って去っていく監督に
生徒たちは不安を恐怖へと進化させていった
連続してホームランを打ったバッターには
「おい
連続でホームランを打つな
何故ボールを見送らない
何故相手に塩を送らない
何故そういう駆け引きをしないんだ
反省しろ
ホームランを打ったら偉いとかいう勘違いをまず捨てろ
相手との駆け引きを楽しめ
気を抜いてるからそんなバッティングなんだ
気を抜くなそんなんじゃ甲子園に出るぞ」
生徒たちは何が正しいのかわからなくなってった
だが着々と勝ち方には気づいていった
彼らは
監督の言葉をガン無視し
予選を楽々と勝ち上がっていき
監督の言う気を抜いたプレイで見事
甲子園出場を決め優勝した
誰もが熱狂する中で
監督は誰よりも冷めた顔で
「気を抜いたプレイをするから」
とため息交じりに言い甲子園を去っていった
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