VSS ~ ボイジャー・ショートストーリー ~

糀ちいか

第0話 初暦【はつごよみ】テスト投稿

地下の暗闇から

電車が滑り込んでくるときのあれは

空白むことを知らず

唐突に明ける夜の

あの朝日に似て希望である。


どこまでも続いているように思える

この暗闇を

いかにしてやりすごすべきか......


止まない雨はない......?

明けない朝はない......?


本当かよ?!


本当だとしても

俺が知りたいのはそんなことじゃない


『いつになったら止むのか』


『いつになったら明けるのか』なんだ。


そんな話を始めた途端に

誰もが口をつぐんじまう


使えねぇやつばっか。


本当はこんなことが言いたいんじゃない

本当はこんな風に生きたいんじゃない


ただ、今現在、

そうとしか心が感じられないだけなんだ......


助けてほしい......

誰か

たすけて......


ボイジャータロットが

教えてくれたヒント

『Eight of Worlds/ Change(変化)』


おい、おまえさん

何をぐずぐず言っているんだ


ひとつの考えに捕らわれすぎてないか?


固定観念から脱皮できずに

苦しいんだろ? わかるよ。よくわかる。


でもな、何事も『ちょっとずつ』なんだよ。


どんなに望んでも劇的に変わることなんて

そうそうない。それに、もしも

劇的に変わったとしたら、それは

劇的にその逆に振れる危険性を

はらんでいるんだ。


要するに一気に持ち上げられて

一気に叩きつけられるんだよ。


そんな人生をお望みかい?


だろ?


なら、まずは

今がどうなっているのかを

しっかりと見極める必要がある。


そして、自分自身の状態と

周囲の状況に合わせて

うまく方向転換することも大切なんだ。


時は流れる。止まることはない。

常に変化をし続けているんだ。

要はその変化に気づけるかどうかが

勝負どころ。


おまえさんは

自由に姿を変えて生きられるような

柔軟な心を持っているはずだよ。


軽やかに、バランスを取りながら

変化していくことを

自ら楽しんでいったらいい。


不必要なものは手放して


さあ、新しい始まりへ

一緒に歩き出そう。



........................。


おい、おまえ誰だよ笑っ


時々、聴こえてくる

俺の中の俺。無意識に住む老人。

いつだって俺に

偉そうに説教をしてくる。


でも、確かにな。


そうなんだよな。


頭をよぎるは、初暦。

新調した手帳のまっさらな一頁を眺める。


そうか、

俺がこの手帳に

自らの手で何事か書き込まなけりゃ

何も起こらず、何も始まらない。

暦はいつまでも白紙のままなんだ。


何を甘えていたんだろう。


俺は思わず鼻で笑った。

鼻先をくすぐった空気は

いつの間にか冷えた冬のそれだった。


とりあえず、週末の予定を書き込もう。


『商店街を散歩する』


よし!これも立派な変化。


俺の夜が明けるかどうかは

どうやら俺次第のようだ。


今さら気づいた。気づけて良かった。


Chiika🌺

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る