ネクストバッターズサークル

スミンズ

私は須田菜矢芽なやめという。


 「ここをこう握って、ボールが来たらこう振り抜くんだ。」彼はそう手際良く教えてくれた。彼がそう教えてくれるのが、小学校の頃の私にとってはとても嬉しかった。少年野球という名目上、少女であった私はチームメイトは愚か、監督にさえも良いように扱われなかった。だけど彼、宮木大希だけは違った。少女の私にも、熱心にアドバイスをくれたり、試合でも代打で出たときなどは、ポンと背中を叩いて来て、にかっと笑って「頑張れよ」と言ってきてくれた。私はそんな大希を気がつけばいつも思い出すようになっていた。そしてあの活発さを思い出すたび、内気な方向へと向かう自分の心が、外へと放たれていくような気がした。そう、彼が私を陽気な人間にしてくれた。私はそして、中学にもなるとクラスでもトップのグループの仲に入れるようになっていった。だが、それはただの間違いであったと気がつかされる時が来た。


 それは高校の時の話。それはまた、大希によって知らされたことだ。

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